養子縁組の社会学

〈日本人〉にとって〈血縁〉とはなにか

著者 野辺 陽子
ジャンル 社会学 > 家族・女性・ジェンダー
出版年月日 2018/02/15
ISBN 9784788515581
判型・ページ数 A5・384ページ
定価 4,950円(本体4,500円+税)
在庫 在庫あり
「日本人は血縁を重視する」という巷の議論と「重視しない」という社会学・人類学の議論とによる混乱を,制度分析と先行研究により整理し,さらに養親・子,不妊当事者などの多数の声を紹介。「血縁」をめぐる家族・親子からみる,新しい時代の家族社会学。
養子縁組の社会学――目次

はじめに―非血縁親子における〈血縁〉とは何か
古くて新しい問題
親子には血縁があるのが当たり前?―血縁に対する批判の噴出
「子どものため」の血縁?
本書の問いと対象
本書の学問的な意義
本書の構成

第一章 問いの設定―〈血縁〉の社会学的分析へ向けて
 一 家族変動と親子―非血縁親子という指標
  1 後期近代の親子関係―純粋な関係性への変化か/生物的本質への回帰か?
  2 血縁への再注目と迷走する議論

 二 迷走する議論の要因―血縁の浮上に関する社会学的説明とその限界
  1 行為=意識という枠組みの限界
  2 「主義」としての血縁の限界
  3 パッケージ化された概念の限界

 三 分析対象としての〈血縁〉―説明項から被説明項へ
  1 文化人類学の視点の導入
  2 実践される〈血縁〉
  3 血縁から〈血縁〉へ

 四 〈血縁〉の政治
  1 社会的文脈
  2 〈血縁〉と他の知・言説との関連
  3 〈血縁〉を資源とする関係性と自己

 五 本書の事例と用語説明
  1 〈子どものための養子縁組〉
  2 血縁/「血縁」/〈血縁〉
  3 生みの親/育ての親、実親/養親、実子/「実子」
  4 自己と「アイデンティティ」

第二章 養子縁組研究の批判的検討と本書の分析視点
 一 養子縁組と血縁をめぐる課題
  1 水準/指標/基準の混乱
  2 行為と意識を等値する解釈図式
  3 血縁の擬制の解釈
  4 実親子関係の等閑視

 二 養子縁組と「子どものため」をめぐる課題
  1 血縁モデルから養育モデルへ?
  2 客体=支援の対象としての養親子

 三 本書の分析視点
  1 〈血縁〉の運用
  2 選好と制約
  3 親の視点と子どもの視点
  4 定位家族と生殖家族

第三章 対象と方法
 一 制度
  1 対象とする養子縁組の類型
  2 使用する文書資料

 二 当事者
  1 親世代へのインタヴュー調査の概要
  2 子世代へのインタヴュー調査の概要

第四章 特別養子縁組の立法過程における専門家言説とレトリック
 一 立法の経路依存性
  1 現行の条文
  2 立法の背景と制約条件

 二 主な論点と論争のレトリック
  1 「子どものため」と戸籍の記載
  2 「子どものため」と実親子関係の法的断絶
  3 「子どものため」と離縁
  4 「子どものため」と家庭環境

 三 考察
  1 二組の親か一組の親か
  2 同化か異化か―「実子」の意味づけ直し
  3 戸籍制度と「子どものため」の合致

第五章 特別養子縁組と隣接領域の影響関係と差異化
 一 各選択肢間の関係性―重なり合う領域
  1 養子縁組と里親制度
  2 不妊治療と養子縁組・里親制度
  3 子どものいない人生と不妊治療・特別養子縁組・里親制度

 二 各選択肢の理念と運用上の条件
  1 特別養子縁組
  2 里親制度
  3 不妊治療

 三 考察―「子どものため」/親子関係/〈血縁〉の関連のバリエーション
  1 法律にあらわれた親子観
  2 運用にあらわれた親子観
  3 各選択肢への水路

第六章 親世代の行為と意識・―養子縁組が選択/排除されるプロセス
 一 事例の概要と本章の分析視点
  1 調査の概要
  2 事例の分布
  3 分析の視点

 二 分析・―「非血縁」と「全血縁」「無血縁」の比較
  1 養子縁組を選択した事例
  2 夫婦間の不妊治療・子どものいない人生を選択した事例

 三 分析・―「非血縁」と「半血縁」の比較
  1 養子縁組・里親を選択した事例
  2 第三者の関わる不妊治療を選択した事例

 四 分析・―「非血縁」内の比較
  1 養子縁組を選択した事例
  2 里親を選択した事例

 五 考察
  1 選択肢が変化するプロセスとその要因
  2 選択の変化と意味づけ直し―遡及的解釈と動機の語彙
  3 〈血縁〉の多様性と多層性―自己と関係性の構築

第七章 親世代の行為と意識・―親子関係の構築
 一 事例の概要と本章の分析視点
  1 調査の概要
  2 事例の分布
  3 分析の視点

 二 分析・―親子関係の構築
  1 親の葛藤・―親子関係の初期
  2 親の葛藤・―告知の場面

 三 分析・―子どもの「アイデンティティ」形成への関わり
  1 生みの親と交流がない事例
  2 生みの親と交流がある事例

 四 分析・―他者への告知のマネジメント
  1 他者への告知―時間的経過と選択的開示
  2 子どもが行なう告知の方向付けと子どもの意向

 五 考察
  1 「子どものため」の専門家言説とそこに埋め込まれた〈血縁〉
  2 生みの親に対するアンビバレンスとマネジメント
  3 同化戦略・異化戦略と社会状況

第八章 子世代の行為と意識・―親子関係と「アイデンティティ」の構築
 一 事例の概要と本章の分析視点
  1 調査の概要
  2 事例の分布
  3 分析の視点

 二 分析・―親子関係の構築
  1 告知が青年期になされた事例
  2 告知が学齢期になされた事例

 三 分析・―「アイデンティティ」の構築
  1 共通点―生みの親に対する関心
  2 差異点―二つの規範への態度
  3 共通点―人間関係への配慮

 四 分析・―生みの親を呼称する新たなカテゴリーの創出
  1 共通点―生みの親は「家族」「親」ではない
  2 差異点―生みの親は「他人」か「DNAレヴェルの仲間」か

 五 分析・―他者への告知のマネジメント

 六 考察
  1 血縁の内面化/相対化/マネジメント
  2 親子関係と「アイデンティティ」の関連
  3 「アイデンティティ」を通じた専門家言説の流入と新たな「病理化」?

第九章 子世代の行為と意識・―〈血縁〉の世代間再生産
 一 事例の概要と本章の分析視点
  1 調査の概要
  2 事例の分布
  3 分析の視点

 二 分析・―定位家族に関する経験の再解釈
  1 生殖家族を形成した事例
  2 生殖家族を形成していない事例

 三 分析・―生殖家族に関する展望
  1 子どもを育てている事例
  2 子どもを育てていない事例

 四 考察
  1 〈血縁〉の再生産のメカニズム
  2 役割移行による意識の転換

第十章 考察―養子縁組における「子どものため」/親子関係/〈血縁〉の関連
 一 法律における〈血縁〉と親子関係
  1 既存の家族観・親子観の維持と新しい類型の創出
  2 「実子」の意味の読み替え―差異か平等か
  3 親子関係と「アイデンティティ」の分離と血縁の人格化

 二 運用における〈血縁〉と親子関係
  1 批判的検証なき専門家言説の流入と流通
  2 規範化するオルタナティヴ
  3 差異化と正当化の循環

 三 親世代の行為と意識
  1 子どもがほしい≠親になりたい≠血縁へのこだわり
  2 ケアのための〈血縁〉
  3 「子どものため」による葛藤

 四 子世代の行為と意識
  1 社会規範の内面化と相対化
  2 「アイデンティティ」言説による強迫
  3 新たなカテゴリーの創出と純粋な関係の反転

第十一章 結論―本書の理論的示唆
 一 一元的変化から多元的変化へ
  1 諸領域における〈血縁〉の偏在、規範の組み換え、新しい意味の誕生
  2 当事者による〈血縁〉の運用―役割、ライフコース、場面

 二 〈血縁〉の家族社会学へ
  1 ケア
  2 「アイデンティティ」

 三 本書の意義―本書が構築した分析枠組みの応用可能性
  1 二分法を超えて
  2「子どものため」と血縁の交錯

 四 今後の課題と展望


あとがき
引用文献
事項索引
人名索引
   装幀―小野寺健介(odder or mate)
   カバー写真/高橋直樹

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