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四六判並製352頁

定価:本体2700円+税

発売日 2019年4月1日

ISBN 978-4-7885-1622-9





島宗 理 著

ワードマップ
応用行動分析学
──ヒューマンサービスを改善する行動科学



 応用行動分析学は、広くヒューマンサービスに関わる現場の問題を解決することができる学問である。その成り立ちや、基本的な方法論・考え方などをキーワード仕立てとし、幅広い読者に興味を持っていただけるような実践例を交えてわかりやすく解説。


目次

まえがき(一部)

ためし読み




応用行動分析学 目次

まえがき

第Ⅰ部 応用行動分析学の誕生と発展
1 応用行動分析学のはじまり
    実験室から街へ出た若き心理学者たち 

2 応用行動分析学のそれからと今
    社会問題を解決する行動科学としての発展 

3 科学的な根拠に基づいた実践
    ヒューマンサービスにおけるEBP 

4 応用行動分析学の進め方
    問題を解決しながら科学する 

5 応用行動分析学の七大原則
    エビデンスに基づいたヒューマンサービス実践の礎

第Ⅱ部 応用行動分析学の研究法
6 行動の測度
    誰のどのような行動をどうやって測定するのか 

7 インターバル記録法とタイムサンプリング法
    数えにくい行動を客観的に数量化する 

8 行動観察の信頼性
    質的研究を客観的に行うために 

9 記録用紙
    データの信頼性を確認するアナログ的工夫 

10 シングルケースデザイン法
    事例研究で因果関係を同定する

11 目視分析
    ローデータを最大限に活用する 

12 AB法
    侮れない基本のき 

13 ABA法(反転法)
    シンプルにわかりやすく効果検証 

14 多層ベースライン法
    時差で再現、複数の参加者にも対応可 

15 条件交替法
    将来有望、意外な伏兵 

16 基準変化法
    スモールステップ法との相性抜群

17 シングルケースデザイン法の評価基準
    エビデンスを伝えるための数量化と標準化 

第Ⅲ部 行動の諸法則
18 行動随伴性と機能分析
    人はなぜそのように行動するのか 

19 行動の定義
    死人にできないことすべて 

20 刺激の定義
    反応に影響することすべて 

21 先行事象としての刺激作用
    行動を引き起こす、行動を抑える 

22 後続事象としての刺激作用
    行動を増やす、行動を減らす 

23 オペラント条件づけ
    行動を自発している原因はここにあり 

24 レスポンデント条件づけ
    行動が誘発されている原因はここにあり 

25 確立操作
    三項随伴性から四項随伴性へ 

26 生得性確立操作
    系統発生的な動機づけ要因 

27 習得性確立操作
    個体発生的な動機づけ要因 

28 強化スケジュール
    温故知新。ゲームやウェブで大活躍 

29 選択行動と対応法則
    ノーベル賞で出ています 176

30 遅延割引とセルフコントロール
    「自制心」か、我慢する技能か 

31 言語行動論
    ことばも行動 

32 言語行動の機能的分類と多重制御
    ことばはみかけによらず 

33 刺激等価性と関係フレーム理論
    関係に制御される行動 

34 ルール支配行動
    人を人たらしめている行動 

35 行動変容の諸技法
    職人的な技を誰にでもできる技術へ 

第Ⅳ部 科学的根拠に基づいた実践プログラム
36 「不安だから行動しない」から「不安でも行動する」へ
マイナス思考も受け入れて行動(act)にコミット 

37 チンパンジー、宇宙へ
    NASAで活躍した行動分析家 

38 命を救うネズミたち
    実験室から戦場へ 

39 殺処分ゼロを目指して
    人と動物との幸せな暮らしを支援する 

40 学校に風を吹かせる
    ポジティブな行動支援をスクールワイドで 

41 ストップ!万引き
    行動は観察しなくても変えられる 

42 しごきも根性も、もういらない
    行動的コーチングで技をみがく 

43 ママケアで乳がんを早期発見する
    医療における行動変容プログラム 

44 職場の安全を確保する
    安全行動マネジメントで事故を減らす 

あとがき

事項索引

引用文献

引用URL一覧

  
  
■装幀=加藤光太郎


まえがき(一部)

 教育や福祉、医療や看護など、人に関わる仕事を総称して、「対人援助職」や「ヒューマンサービス」と呼ぶことがある。元々は社会的に弱い立場にある人を支援する、どちらかといえば公的な職業や職務を示す概念だったが、今では公/民の区別なく、対象も拡大されて使われている。

 本書ではヒューマンサービスを人の行動変容を担う仕事や役割と定義する。学校の教員も、スポーツクラブのインストラクターも、企業研修の講師も、人に何かを教えて、できないことをできるようにすることが務めであるからその仕事はヒューマンサービスである。心理カウンセリングや育児相談によってクライアントや親の不安を減らしたり、患者が医師から処方された薬を正しく服薬したり、リハビリに励むように支援することが仕事ならこれらもヒューマンサービスである。工事現場で事故を防ぐために作業員や歩行者に指示をするのもヒューマンサービスだし、新装開店したデパートにやってくる客を増やす仕事もヒューマンサービスである。

 ヒューマンサービスの対象は目の前にいる人の行動である。ものづくりの仕事には物の性質に関する知識や加工のための技術が必要なように、ヒューマンサービスの仕事には行動に関する知識や行動変容のための技術が必須となる。だが、残念なことに、こうした専門性を系統立てて習得する機会は限られている。その結果、ヒューマンサービスを担う多くの人が、難しい課題に手探りの状態で、試行錯誤しながら取り組んでいるのが現状だ。

 物と人との大きな違いは振る舞いの誤差にある。条件さえ整えれば、鉄は鉄、水は水らしく、ほぼ予測どおりに反応してくれる。個体差は小さい。ところが、人は条件をできるだけ揃えても、例えば田中さんと鈴木さんが同じように振る舞うとは限らない。個人差が大きく、予測が難しく、仕事の成否が偶然に影響されやすくなる。

 このため、ヒューマンサービスの現場では、たまたまうまくいったことによる思い込みも生まれやすく、あるいは、「結局は人それぞれ」と、継続的な業務改善をあきらめてしまいやすくもなる。

 応用行動分析学はこのような課題を乗り越えるために役に立つ長所を・・・