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A5判並製224頁

定価:本体1900円+税

発売日 2019年3月5日

ISBN 978-4-7885-1604-5





フレド・ニューマン、フィリス・ゴールドバーグ 著
茂呂雄二・郡司菜津美・城間祥子・有元典文 訳

みんなの発達!
──ニューマン博士の成長と発達のガイドブック



 諍い、別れ、耐えられない痛み、いじめ……傷ついた人々の心に癒しをもたらすのは、診断や治療や薬ではない。どんなに辛いときでも、そこから成長し発達するための、とても実践的な身体的、知的、感情的なエクササイズのすすめ。

みんなの発達! 目次

みんなの発達! 2010年版へのイントロダクション

ためし読み




みんなの発達! 目次

日本の読者へ  ロイス・ホルツマン
序文  パッチ・アダムス
2010年版へのイントロダクション  ロイス・ホルツマン
はじめに(1994年版の序文)  フレド・ニューマン

 1 ゲットの文化とギブの心
 2 行動をストップ!
 3 解決という問題
 4 男と女のこと
 5 聞くこと
 6 家族の価値
 7 子どものこと
 8 罪悪感、恥、「私のもの性(my-ness)」
 9 セックスと友情
 10 過去をやり直す
   ─ソーシャルセラピーの成功例のいくつかとその教訓
 11 「依存症」対 発達
 12 結局、誰の痛み?
 13 小さな変化
 14 自分は誰?
 15 別れからの脱出
 16 個別の問題は忘れて
 17 君に乾杯
 18 ラベルに用心! この治療は発達に害があるかもしれません
 19 不安、パニック、心配
 20 ストレス─狂信的要因
 21 休暇という仕事
 22 引っ込み思案、そして、何も話すことがないときに何を話すか
 23 見知らぬ人と話そう
 24 決めなくちゃならないことがいっぱい
 25 いじめっ子を責めないで
 26 生き死にの問題
 27 言葉というもの!
 28 エクササイズなくして発達なし、それが私たちの理論

装幀=臼井新太郎
装画=右近 茜


みんなの発達! 2010年版へのイントロダクション

 『みんなの発達!』の初版が出版された1994年は、DSM-IV(『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版)が出版された年でもあります。これほど対照的な2冊は他にないと思います。『みんなの発達!』は哲学者で街場のセラピスト、フレド・ニューマンが、社会学者の友人であるフィリス・ゴールドバーグと一緒に書いた本です。この本は数百人の普通の人びと、つまりニューマンのソーシャルセラピー実践に参加したクライエントたちの声で満たされています。この本のテーマは、人びと、人びとの感情、痛み、夢、関係、セラピーで交わされた会話、そしてその人びとの成長のための活動です。一方DSM-IVは、アメリカ精神医学会によって出版された本で、200人以上の精神科医と心理学者(実は、そのうちのほぼ半数が、製薬会社と金銭的つながりを持っています)が書いたものです。このマニュアルの扱うテーマは、297種類に分類された精神疾患であり、クライエントの症状と行動を診断するための典型例が記されています。DSM-IVが出版されたときちょっとした反対運動がありましたが、その大部分は執筆者と製薬会社の関係を指摘するものでした。対照的に、2013年出版予定の新版(DSM-5)の編集作業は、前の改訂よりもいっそう精神疾患を拡大するものであることをめぐって論争の嵐となっています。

 フレド・ニューマンは、DSMのあらゆる版が馬鹿げたものだと考えています。科学的に馬鹿げているのです。科学を敬愛しており、また科学について博学なニューマンの意見には一理あると思います。もし診断が必須ならば(必須であるという事態もまた吟味が必要ですが)、私たちの知り合いでも何でもない、いわゆる専門家の診断ではなくて、自分自身、あるいは仲間同士ですればいい、とニューマンは主張します。数多くのセラピスト、社会科学者、哲学者が、メンタルヘルスと病気への医療モデルや擬似科学的診断アプローチについての思慮深い、時に手厳しい批判を学術書やジャーナルに書いていますが、ニューマンはそのような数多くの執筆者の一人です。しかしながら、ニューマンは批判だけをしているわけではありません。むしろ支援することに関心があるのです。『みんなの発達!』は、普通の人びとのために書かれた自己救済の本です。これはとくに実践的な本で、ニューマンのソーシャルセラピーの日常生活での使い勝手を、ごく普通の太郎さんや花子さんに届けるための本です。まさに実践的であるからこそ、これはニューマンのもっとも深い思索であり、根本的批判でもありえるのです。ニューマンと私の好きな言葉で言えば、実践的で批判的なのです。

 1994年当時、研究者の間には、実践的-批判的なものを受け入れる余地はありませんでした。理論的批判と代替案に基づく実践との間には深い分断がありました。ニューマンと私の主張は、人間の生を自然科学の枠組みに押し込めようとして生じた解決不能の問題に関して交わされた、知的対話の中から生み出された新しい声であり、新しい心理学の創造を提唱するものでした。ニューマンの洗練された哲学と、私の生涯発達を視野に入れた人間発達に関する知識によって、私たちは一人ずつよりもはるかに大きなものを手に入れたのでした。しかし、私たちの実践、とくにニューマンのソーシャルセラピー実践こそが、もっとも強い実践指向の理論的批判として私たちを際立たせることになったのです。このことを声高らかに明確に主張するため、ニューマンに実践的なガイドブックを書いてもらったのです。それが『みんなの発達!』です。

 出版から16年経って、心理学と心理療法における、批判的で知的な論争と代替案となる実践の区別は曖昧になってきました。ニューマンのソーシャルセラピーのような新しい批判的実践が展開して、他のやり方も育ちつつあります。それによって、学問的な会話の内容も質も、大きく発展しました。論争は今も続いていますが、批判と実践は一体化しつつあります。

 あなたがこのような学問的な会話に参加していない場合には、なぜこのような歴史や論争を気に留める必要があるのか、疑問をもたれるでしょう。そうですね、あなたのセラピスト、あなたの子どものスクールカウンセラー、あなたの叔父さんの依存症のカウンセラー、あるいはお母さん担当のソーシャルワーカーは、どこでトレーニングを受けたか考えてみてください。このような専門家たちは、どのようなことを教わってきたのでしょう? 何種類くらいのアプローチを経験したのでしょう? 人間の成長と学習について、感情と思考に関して、どのような理解を持って仕事をしているのでしょう? あなたとあなたの家族が感情面で成長できると考えているでしょうか、あるいはカウンセラーにできる最善のことは、もっともまずい部分を転換させることだと考えているのでしょうか? あなたが(感情生活も含めて)人生を創造するのを助けられるのでしょうか、それとも、あなたのいわゆる精神障害の症状を扱うだけなのでしょうか? 批判的実践と理論的批判が混ざりあえば混ざりあうほど、未来のカウンセラーとセラピストが受けるトレーニングは広く包括的になり、これらの問いに対する答えもまた、より深く豊かになる可能性があるのです。

 ニューマンは、セラピーを医療手続きではなく、創造的な活動と理解し、実践しました。セラピストとクライエントが、共にセラピーとセラピーの機能を作るのです。ニューマンは、どんなにひどい痛みを抱え、「問題を提示し」、精神医療診断をされていようとも、自らの発達の創造者として人びとに接しました。ニューマンは、決して問題を固定させようとはしませんでした。むしろ、成長している、自らの人生を創造している人びとを支援したのです。常に選択があります。今のあり方を否定するのではなく、愛する行為としての選択です。助けを求めなさい。ギブを心がけましょう。恥を分かち合いましょう。ののしりあいになりそうだったら、最初からもう一度話し合いましょう。いつものあなたのやり方とはまったく違うやり方でやってみましょう。あなたはやはり「あなた」ですが、それは積極的に成ろうとする、もう一人のあなたなのです。何に成るって? あなたに成るのです。

 ニューマンのソーシャルセラピーは、人びとの発達に焦点を当てるところがユニークですが、ソーシャルセラピーだけが人間主義的で創造的というわけではありません。これは、助けが必要なのにセラピーに頼らず「堪え抜く」か「病気と見なされる」しか選択肢のなかった、数多くの大人たち、子どもたち、そして家族にとっての良い知らせです。ソーシャルセラピーや、現在行われている多数の代替セラピーにたずさわっている人びとは、その活動からいって批判心理学者であり、アカデミックな研究者と同じくらいに批判的なのです。患者たちの声とセラピストの声は、セミナー室や診療所で、徐々にですが確実に聞こえ始めています。それが明日のセラピストやカウンセラーを訓練するのです。

 これは、再刊する『みんなの発達!』の復活したステージの中にも聞こえています。ライフスタイルの変化に応じて、全体にわたって文章を少し変えてはいますが、内容は旧版と変わりませんし、それだけでなく、さらに適切なものになっています。『みんなの発達!』の新しい読者として、皆さんは数万人からなるグローバルなグループに加わることになるのです。普通の本と違って、本書には宣伝費も批評家の書評もありませんが、私たちはウイルスのような蔓延型のマーケッティングで本書を広めてきたのです。アメリカ中で、ソーシャルセラピストからクライエントへ、心理学の教員から学生たちへ、ユースワーカーから都市の若者へ、教員養成機関職員から学校の管理職へ、ビジネスコンサルタントから会社重役へと、本書を伝えていったのです。アメリカ以外の仲間たちは、本書の一部を選んでコピーして、友人や家族に手渡したのです。外国語に翻訳され(私の知る限りでは、中国語、ポルトガル語、ロシア語、セルビア語、スペイン語になっています)、大学の授業で利用されています。Zdravo da Ste(セルビア語でこんにちは)という、セルビアで活動する数百名からなる発達支援コミュニティは、本書をすべて翻訳して出版し、セルビア中の一般市民と専門家向けに普及促進キャンペーンもしました。

 私は成人してからのほとんどと言っていい時間をフレド・ニューマンと一緒に、いろいろな社会変革プロジェクトの仕事をしてきました。しかし、心理学を心理学自身の病気から解放するという仕事ほど、大変でもやりがいのある仕事はありませんでした。「助けを得るのに病気である必要はないよ」とニューマンは言います。これが『みんなの発達!』の実践的で批判的なメッセージです。本書は、これ以上のものはない批判的心理学です。

 「草の根」批判的心理学運動にようこそ!

ロイス・ホルツマン
ニューヨーク市、2010年8月