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四六判並製272頁

定価:本体1500円+税

発売日 2018年5月5日

ISBN 978-4-7885-1563-5





新井 紀子 著

改訂新版 ロボットは東大に入れるか
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 ロボット/人工頭脳の飛躍的進化・深化とその最前線は、人間にどのような変革を迫るか?「天声人語」ほかで紹介され、すでにMARCH合格レベルにある人工知能「東ロボ」くんのその後のすべて。人間vsAIの現在と未来を詳しく、やさしく語りベストセラーとなるも、現在入手困難となった幻の書籍の改訂増補版を、満を持してお届けします。ベネッセ模試、代ゼミの「東大プレ」における成績の最新データから、AIの最新技術とその得意不得意も明らかに。そして、果たして私たち人間の能力とは?

改訂新版 ロボットは東大に入れるか 目次

改訂新版 ロボットは東大に入れるか あとがきにかえて

ためし読み



他の「よりみちパン!セ」シリーズ



改訂新版 ロボットは東大に入れるか 目次

まえがき

第1章 〈東ロボくん〉と人工知能の現在
センター入試は楽勝か?
コンピュータの「知性」とは?
消える職業、変わる学校

第2章 「東大」への大いなる一歩
―――東ロボくん+東ロボ手くん「マーク模試」&「東大入試プレ」に挑戦!!

ベネッセコーポレーションによる「マーク模試」結果報告と概評
はじめに 小林一木
世界史B/国語/英語(筆記)/物理/数学Ⅰ・数学A/数学Ⅱ・数学B

SAPIX YOZEMI GROUPによる東ロボ君の歩みと「東大入試プレ」
はじめに 高宮敏郎
数学(文科・理科)/世界史/世界史(東ロボ手くん)

「ロボットは東大に入れるか」
プロジェクトチームによる現状と展望

社会科:自然言語処理で、データを「知識」に変える 宮尾祐介(国立情報学研究所)
国語 :あらゆる知的能力の基盤をどう磨くか? 佐藤理史(名古屋大学)
物理 :「曖昧さ」と「常識」をどうクリアするか 稲邑哲也(国立情報学研究所)
数学 :「ふつう、こうでしょう」というプログラム 新井紀子(国立情報学研究所)
英語 :英語を通して言語を学ぶ 東中竜一郎(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)


第3章
〈東ロボくん〉の将来/私たちの未来


東ロボくんの「かたち」
ロボットの人権
機械の深化と人間の進化
私たちが「人間であること」―――あとがきにかえて


謝辞
装幀=祖父江 慎 + 根本 匠(cozfish)


 私たちが「人間である」こと―― あとがきにかえて(一部抜粋)

 この本の旧版が刊行された2014年、「東ロボくん」は最初の「浪人」生活を送っていました。2013年の模試でとりあえずいくつかの大学には合格可能性80%以上を出したもの、代々木ゼミナールの坂口幸世先生から「(世界史と日本史で偏差値50代後半を出したものの)いくつかの科目で偏差値40%があります。こういうばらつきがある人は、国公立はちょっと難しいですね」とコメントされていました。それから3年。多くの「家庭教師」の先生方の支えがあって、とうとう東ロボくんは全国にある大学のちょうど7割に合格可能性80%以上の判定をいただけるまでに成長しました。でも、残念ながら東大には入れませんでした。今回、その成長と挫折について、ベネッセコーポレーション、SAPIX YOZEMI GROUPの先生方が具体的な問題を挙げて詳しく講評してくださいました。また、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトチームのみなさん、つまり東ロボくんの家庭教師の先生方も解説を加えてくれています。そこが本改訂新版の最大の読みどころかな、と思っています。


 また記述式の「東大プレ」の世界史の講評に、「東ロボ手くんはボールペンでしか記述できない」から、ボールペンでの回答の記入を許されたというくだりが出てきます(172頁)

 ここ、じつはとっても重要なんです。

 「東ロボ手くん」を開発してくださったデンソーさんとの最初のミーティングで「鉛筆とシャープペンシルは絶対に避けたい」と言われたのです。筆記の途中で芯が折れるかもしれないから、ということでした。

 「シャープペン折れたら、ノックして芯をだせばいいじゃない」

と思うでしょう? いえいえ、それがとっても難しい。芯が折れた、ということをいつどうやって正確に認識するのか。ある文字を買いている途中だった場合、その文字の「残り」の部分をどう処理するのか。ノックはどうするのか。何度も芯が折れて、いよいよ芯を入れ替えなければならなくなったときどうなるか。全部ロボとってはまだまだ難題なんです。

 何億円もかければ、シャープペンシルを使うロボットアームはできるかもしれない。でも、それだはすみません「解答用紙をひっくり返す」とか「ミシン目のところで切り離す」とか、ひとつひとつ開発しなければならないのです。消しゴムが転がって落ちたらどうしたらいいか、なんて考えたら気が遠くなります。
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 さて、東ロボくんが毎年9月にすべての科目で模試を受験し、翌々月の11月に発表会をする、というかたちでの「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトは2016年を最後に、いったん凍結しました。東ロボ君の家庭教師だった先生方は、それぞれの専門でAIのさらなる進化と進化に向けてそれぞれの歩みを始めました。

 私の「それから」を少しお話ししましょう。

 東ロボ君と共に生きた5年間はとても充実していました。東ロボ君の成長のために精一杯頑張りました。でも、私自身は元々機会に愛情を持てるタイプではありません。なにしろ、我が家には電子レンジがありません。意味を理解しないくせに、したり顔で「食品を取り出してください」なんて命令してくる家電が大嫌いなのです。

 この5年間、ずっと心配していたのはむしろ子どもたちのことでした。東ロボ君のようなAIが社会に導入されるであろう、2025年以降の社会を生きぬかなければならない子どもたち。AIとこどもとおどちらか、といわれたら、もちろん子どもの側に立ちたい。そう思っていました。5年間の挑戦で、東ロボ君には「意味」がわからないこと、文脈や状況把握ができないことが十分わかりました。どれほど統計データを放り込んでも、(将棋や囲碁のようにルールや判断基準(勝ち負け)が明確なもの以外は)人間に勝ち目があることもわかりました。それなのに、なぜ8割もの受験生が東ロボくんに負けてしまったのか、それこどが大問題なのです。
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 「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトを通して、私はみなさんにぜひ中学生のときに「リーディングスキルテスト」を受けてもらって、「どこまで読めているか・どこでつまづいているか」を自覚する手助けをしたいと思うようになったのです。そしてその結果を受け止めてもらい、自分の本当の可能性を伸ばす「読解力」を、あせらず、じっくりと身につけてほしいと心から願っています。
2018年4月
                               
新井紀子