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四六判並製208頁

定価:本体1600円+税

発売日 18年1月15日

ISBN 978-4-7885-1552-9




川端亮・稲場圭信 著

アメリカ創価学会における異体同心
──二段階の現地化



布教過程と組織の変化
既刊『アメリカ創価学会〈SGI-USA〉の55年』の続巻です。グローバリズムと民族主義が激しく対立し、さまざまな領域で価値の亀裂が露呈している混迷の時代、世界192ヵ国・地域に展開するSGIの活動と行方は、宗教の今日的意味を考える上で大きな示唆を与えてくれます。日本と異なるアメリカ合衆国の社会的背景のなかで、SGI─USAのメンバーは、なぜ・どのように・何を願って、信仰を続けているのか、組織は現地に沿って、どのように推移したか、布教において聖典はいかに翻訳されていったか──詳細な現地調査とインタビューにもとづく、読みものとしても興味深い報告です。


アメリカ創価学会における異体同心 目次

アメリカ創価学会における異体同心 はじめに

ためし読み



◆関連書
アメリカ創価学会〈SGI‐USA〉の55年 目次


アメリカ創価学会における異体同心 目次
はじめに

序 章 SGI−USAの歴史
  1 戦争花嫁と日系二世
  2 ヒッピーからハッピーに
  3 コンベンション
  4 フェイズ2
  5 文化の違い
  6 十七日間のロサンゼルス滞在
  7 21世紀の発展へ

第1章 アメリカ合衆国における日蓮仏法
  1 多民族社会における異体同心
  2 21世紀の女人成仏

第2章 SGI−USAへの入信と回心過程
  1 折伏を受けやすい状態
  2 入会時の状況
  3 宗教的探求者と人生の危機
  4 信仰の魅力と継続性
  5 御利益から大乗利他への転換

第3章 組織のアメリカ化
  1 1960年代からの組織の発展
  2 フェイズ2と組織構成の変化
  3 タテ線からヨコ線〈Geo-Reo:ジオリオ〉へ

第4章  二段階のアメリカ化─翻訳の重要性再考
  1 英語化とフェイズ2
  2 翻訳の四つのレベル
  3 「日本語が透けて見える英語」から「自然な英語」へ
  4 二段階の英語化の意義

第5章 アメリカにおける師弟不二
  1 教えの継承
  2 師弟不二の翻訳
  3 SGI−USAメンバーが語る師弟不二
  4 奉仕するリーダーシップ

あとがき
年表

参考文献一覧
索引

装幀=新曜社デザイン室


アメリカ創価学会における異体同心 はじめに
 創価学会は、わが国でもっとも有名で、最大の新宗教教団である。その会員数は827万世帯と公表されている(創価学会広報室 2017:21)。

 創価学会は、日本国内で抜きん出て規模が大きいのみならず、創価学会インタナショナル(Soka Gakkai International:SGI)として海外でも活動を行っていることは、一般にはそれほど知られていないだろう。その規模は、現在、世界192ヵ国・地域にわたり、およそ220万人の会員を擁するまでになっている(創価学会広報室 2017:26)。国連加盟国数が193ヵ国であることからも、SGIの広がりが、ほとんど全世界に及ぶと言ってよいことがわかるだろう。

 日本の他の宗教教団も、新宗教に限らず、神道も仏教も、日本人が海外に移民を始めた明治時代以降、海外布教を行ってきた。しかし、一部を除いては、海外で移民した日本人以外に信徒を獲得することが少なかった。つまり、現地の人々にはほとんど広まらなかった。

 アメリカ合衆国においても、1885年にハワイへの官約移民(ハワイ政府と日本政府の間の条約に基づく移民)が始まり、その後、日本人の移住先が西海岸へ展開する中で、神道、浄土真宗、浄土宗などがアメリカ合衆国で布教を始めた。しかしながら、現地のアメリカ人にこれらの神道や仏教、新宗教が浸透する事例はあまり多くはなく、それは20世紀に入っても続き、第二次世界大戦後もアメリカ人が日本の宗教を信仰するケースは多くなかった。

 その中で、創価学会は、1960年に第三代会長に就任した池田大作がアメリカを訪問し、現地に地区や支部の組織を作ることで、本格的な海外布教を始めたのである。その歴史については、本書の姉妹編である秋庭裕『アメリカ創価学会〈SGI−USA〉の55年』(2017)に詳しい。本書でも同じ55年間を対象とするが、意味と組織の変容にとくに焦点をあてて、分析、考察する。

 序章でSGI−USAの歴史をコンパクトに紹介した上で、第1章では、日本と異なるアメリカ合衆国の社会的な背景を体現するSGI−USAのメンバーを取り上げて、それらの人々が、なぜ・どのように・何を願って、この信仰を続けているのかを明らかにしようと試みている。日本の創価学会員のみならず、平均的な日本人が知るところの多くない、アフリカ系アメリカ人やゲイのメンバーのインタビューを紹介し、多民族社会において「」に新たに付加される意味と創発する特性を考える。

 第2章は、第1章に加え、私たちがインタビューを行ったSGI−USAメンバー20人の聞き取り調査をまとめ、SGI−USAへの入信過程を、宗教社会学における回心論から考察している。ロフランドとスタークの入信過程論を参照しながら、SGI−USAメンバーの宗教的ライフヒストリーを整理し、イギリスの事例とも比較して、なぜ異文化由来の信仰を継続できるのか、その要因を検討している。環境的要因、個人の能動的要因、組織のメンバーとの相互作用の要因に加えて、御利益信仰から出発し利他性の涵養へ至る過程を、「意味の転換」という観点に重きをおいて考察する。

 第3章は、複雑で入り組んだ変遷を遂げたSGI−USAの組織の推移を追った。それがなぜ生じ、その変化が何を生み出したかを組織論的に考察している。日本・創価学会では、いわゆるタテ線からヨコ線への変化は、一般には選挙と政治との関連から生じたと考えられているが、政治とは関係のないSGI−USAにおいてもその変化が生じた。その理由を考察しながら、フェイズと呼ばれる停滞が生じた組織機構上の原因と、21世紀の多民族社会におけるSGI−USAの発展を組織論的に鳥瞰している。

 第4章は、布教における媒体、つまり聖典やその翻訳を重要な問題として取り上げる。従来から、海外での宗教の布教の成功要因の一つに翻訳の問題が取り上げられてきたが、SGI−USAにおいても1960年代から急速に、精力的に経典類や機関紙誌の英語化が進められる。

 それが1960年代から70年代半ばまでの爆発的な会員増に結びついたことも確かであるが、しかしながら一方で、フェイズ2による停滞も生じたのであった。そのフェイズ2の停滞から抜け出すために、さらなる洗練された英語へ翻訳しなおすこと、すなわち、「日本語が透けて見える英語」から「自然な英語」へ、ヴァージョンを上げていくことが必要であった。つまり、「二段階の翻訳」によって、教えの意味が伝わり、アメリカ創価学会の「二段階の現地化」が実現したと考えられる。

 第5章は、日本・創価学会において重要な教学的な焦点である「」が、アメリカ合衆国のコンテクストでどのように受容され、新たな意味を付与されているかについて、機関紙誌を調査し、会員のインタビューに基づいて考察を行っている。  アメリカ人になじみの薄いと考えられがちな「師弟」という関係、考え方が、アメリカ社会でどのように根付き、呼応するのか、その素地を分析・考察しながら、日本とは背景の異なるアメリカ社会における独自の背景を持つ「師弟不二」を描いている。

 いずれの章もインタビューと資料をもとに宗教社会学としての思考を巡らせて構成したものである。宗教社会学のおもしろさを読み取っていただければ幸いである。

 なお、参照する文献、資料として、以下のものは略して表記する。

 御書:堀日亨編 1952『日蓮大聖人御書全集』創価学会(第241刷、2005年)
 WT:ワールド・トリビューン(World Tribune)
 ST:聖教タイムス(Seikyo Times)

 また、本書に登場する創価学会とSGI−USA会員のうち、これまで創価学会やSGIの出版物において、多くの場合、実名で紹介されている方々については実名とした。他の方々は、仮名としている。