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シンボル化の政治学

政治コミュニケーション研究の構成主義的展開

著者 烏谷 昌幸
ジャンル 経済学・政治学
出版年月日 2022/10/04
ISBN 9784788517844
判型・ページ数 A5・336ページ
定価 3,520円(本体3,200円+税)
在庫 在庫あり

第41回政治研究櫻田會奨励賞 受賞

共通の認識や感情はいかにして集団の中から創出され、政治的な効力を発揮するのか。シンボル論という哲学的遺産を応用し、政治コミュニケーション研究の中核的な問いを追究する。この分野を根本から基礎付け直し、新たな展開へと牽引する意欲作。

本書前半では、政治コミュニケーション研究やシンボル論の足跡を振り返る。
後半では、高速増殖炉もんじゅ、水俣病事件、戦後日本の原子力政策を題材に、シンボルが「結晶化」「浸透」「転換」する具体的事例を観察する。
本書から得られる知見は、米議会襲撃事件やQアノン現象など、幅広いテーマに適用出来るだろう。

はじめに

  第1章 シンボル化の政治学序説

第1節 言語論的転回以後の政治コミュニケーション研究
 ウィリアム・ギャムソンの構成主義的アプローチ/「シンボル化の政治学」の出発点としての構成主義/不可視の権力論/シンボルの「魔力」
第2節 政治の象徴性
 政治資源としてのシンボル/統治のシンボル形式/政治シンボル概念の定義/シンボル政治史
第3節 人類学と精神分析学
 異色の政治学者マーレー・エーデルマン/反省期の産物としてのシンボル研究/心的エネルギー
第4節 シンボル化の欲求
 ランガーの「シンボル化の欲求」説/現実を制御していく資源としてのシンボル
第5節 シンボル化の政治学への展開
 政治シンボルと社会の循環図式/シンボル化概念の種類

  第2章 メディア・フレームとメディアの権力

第1節 孤高のネオ・マルクス主義者
第2節 メディア・フレーム論の構成主義的アプローチ
第3節 メディア・イベントとしての一九六八年シカゴ事件
第4節 メディア・フレームと運動の自己定義
 フレーミング装置の分析/マス・メディアと運動の相互作用
第5節 正当と逸脱の境界線
 正当性の線引き/ニューレフトと新保守主義者の「メディアの権力」批判
第6節 公的言論空間における「常識

  第3章 川辺川ダム問題と境界

第1節 全国紙と地方紙
 川辺川ダム問題の概要/境界線の政治学
第2節 「受益者」の再定義
 「受益者」の公式の定義/「受益者」カテゴリーから退場した人々/境界線の強化/「真の」受益者の特定
第3節 境界線の相対化
 ダム建設反対運動・世論の高まり/反対運動の“時差”/人生に踏み込む
第4節 「よそ者」の視点と「地元」の視点
第5節 政治シンボルと社会の循環

  第4章 ニュース生産過程におけるシンボル

第1節 ニュース生産の社会学
第2節 「動燃特殊論」のメディア表象
 「動燃特殊論」の構成/ビデオ隠し問題
第3節 社会的意味の形成力学
 情報源としての地元自治体/プルトニウム利用政策をめぐる国際環境の変容
第4節 フレーミング装置の社会的生成

  第5章 水俣病事件と『苦海浄土』のシンボリズ

第1節 石牟礼文学の浸透力
第2節 水俣病事件初期報道
第3節 文学としての『苦海浄土』
 私小説としての『苦海浄土』/シンボルとしての「石牟礼道子」
第4節 バイブルとしての『苦海浄土』 

  第6章 シンボルとしての原子力

第1節 原子力のシンボル化
第2節 希望のシンボル
 究極の力/アメリカの核戦略と原子力平和利用キャンペーン/日本における原子力平和利用博覧会/誰にとってのシンボルか
第3節 体制転換期のシンボル構築
 もはや戦後ではない/体制転換プロセスにおける「機微な政治的資源」/正力松太郎の戦争責任
第4節 シンボルの掌握
 国家の存在証明/シンボルの意味/積極論者としての中曽根康弘/積極論者としての読売新聞/慎重論者、武谷三男の秘密主義批判/反対論の政治不信
第5節 原子力報道と政策の正当性
 田中慎次郎の「蘭学事始」/下町の正義感/政策化のプロセスにおける正当性の線引き/シンボル操作と報道/憲法と核兵器
第6節 シンボルの意味の流動性
第7節 天皇と原子力の象徴性

  終 章 集合的シンボル化の探究

 権力の近代性/シンボル化の集合的次元


おわりに
初出一覧/文献/事項索引/人名索引

装幀=吉田憲二

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