「予科練」戦友会の社会学

戦争の記憶のかたち

著者 清水 亮
ジャンル 歴史・伝記
社会学
出版年月日 2022/03/31
ISBN 9784788517615
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 3,520円(本体3,200円+税)
在庫 在庫あり

特攻など悲壮なイメージただよう少年航空兵「予科練」。戦後、学歴やレッテルに悩みつつ中年となった彼らは、ユニークな慰霊碑・記念館をつくりだす。その陰には、孤立していたはずの戦友会をとりまく婦人会・政財界・自衛隊のネットワークがあった。

* 第96回日本社会学会大会 学会奨励賞(著書の部)

* 戦争体験者集団を、エリート、メディア、地域、集合的記憶、アソシエーションの切り口から捉え直す戦争社会学のチャレンジ。

 凡例

序章 元兵士たちが遺した記憶のかたち

1 戦争体験者のつながりがつくりだしたもの
2 予科練の二人像という謎
3 戦友会は完全に孤立していたか?
4 研究目的と方法
5 本書の構成

第1章 戦争・集団・記憶――社会形態学へ向けて

1 準エリートの集団という研究対象の切り出し方
 国民的想像力と集団的想像力/全体戦争を背景とした記念碑の大衆化/エリートと大衆の狭間にある予科練/準エリートから問い直す戦争・軍隊研究
2 集団と記憶への社会学的アプローチ 
 戦友会研究とその限界/戦争の記憶をめぐる政治力学から社会関係へ/集合的記憶論の社会形態学的展開/分析における三つの着眼点

第2章 準エリートたちの軌跡――学歴と予科練

1 戦前から戦後にかけての予科練出身者のあゆみ
 入隊世代ごとの差異/社会的上昇移動のバイパスとその破綻/戦友会の全国規模化/懐古趣味から戦後社会へのアピールへ――形あるものを残そうではないか
2 学歴認定達成のインパクト
 慰霊と親睦にとどまらない運動体/インテリの仲間入り――出身校は? 予科練です/規模拡大の求心力――我々自身の事なのに協力出来なかったのが残念です
3 碑にみる「エリート」としての自己像
 碑文に刻まれた選抜と教育/ 集団の鏡としての銅像――どうだ? 東大卒にこんな芸当はできねえだろう‼/ 国民からの卓越を志向するエリーティズム――無名戦士の墓ではない

第3章 メディアを介した戦友会の統合

1 戦友会のメディア的形態
 イベントの記憶を共有する会報の視覚的想像力/双方向的なメディアとしての会報
2 末期世代の包摂
 死者の少ない大所帯――エリートなんかで、あるもんか/言葉とかたちによる包摂――二十四期生が居たればこそ
3 戦友会がつくりだす「予科練ブーム」
 戦記出版と入隊世代――何か物足らなく感じます/映画製作への介入/一九六八年の「予科練ブーム」――俺たちは「与太練」ではない 
4 会報を媒介とした集合的記憶の二重性 

第4章 地域婦人会の記憶と行動――軍隊と地域の歴史的文脈から

1 なぜ地域住民は戦友会を支援したか 
2 地域婦人会の構想と行動
 母に対する子どもとしての予科練の記憶――観音像と裸像を併立するならば/現場における組織的な行動力/リーダーの政治力――皆さん甲も乙も無いでしょうよ
3 軍都を生きた四半世紀 
 地域社会に対する航空隊のインパクト――エプロンかけてお化粧しておしゃれして/地域住民からみた予科練習生――皆なかわいがってね/空襲による予科練の大量死と慰霊
4 かたちにならなかった記憶・構想 

第5章 戦後社会の戦友会支援ネットワーク――元軍人・自衛隊から政財界まで

1 コンボイとしての元予科練教官たち 
 政治力とイデオロギー的な意味づけ/予科練出身者の人生への内在的な意味づけ――学歴は諸君らの全部ではない/コンボイたちによる承認
2 エリート軍人からの支援の弱さ
 海軍兵学校出身の主要な支援者/海軍兵学校と予科練との軋轢――水交会か何か知らないが予科練をナメてやがる
3 財界・政界・自衛隊
 財界からの巨額の寄付とエリート間の人脈/政界ならびに防衛庁・自衛隊とのつながり/駐屯地と戦友会の互恵関係――自衛隊側が「用意周到」に考えていて頭が下がる
4 コンボイの橋渡しネットワークとその可視化

終章 戦争をめぐるつながりとかたち

1 アソシエーションとしての戦友会
2 戦後社会とつながる戦友会
3 戦争を介した階級横断的なつながりの形成
4 「伝統」化する戦争の記憶のかたち

 あとがき
 巻末図版 / 関連年表 / 参考文献 / 事項索引 / 人名索引

      装幀―難波園子

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