『発達障害の就労とキャリア発達』、2023年度日本コミュニティ心理学会出版賞受賞 - 2024.03.25
社会の解読力〈歴史編〉
現在せざるものへの経路
* 過去の史資料を集めるだけでは、歴史の社会学として許されない。素材をもとに、私たちの眼前にひとつの物語として「歴史」を呼び起こすとき、社会学が立ちあがるのだ。
凡例
第1章 文書館の政治学――〈啓蒙の装置〉から〈記憶の装置〉へ 葛山泰央
1 文書館への問い
2 〈文書の秩序〉と〈郵便的交通〉
3 「国王封印状」の濫発と王権の動揺
4 「国民の文書館」の登場と〈文書の共和政〉
5 〈虚構の身体〉と文書館の警察的機能
6 文書館とその限界領域
第2章 トラウマの言説史――近代日本は「心の傷」をいかに理解してきたか 佐藤雅浩
1 はじめに
2 マスメディアは戦時の精神疾患をいかに報じたか
3 震災とトラウマ
4 平時の事故とトラウマ
5 おわりに
第3章 南ティロルにおけるファシズム/レジスタンスの記憶
――解放記念日と凱旋門の顕彰を手がかりとして 秦泉寺友紀
1 境界地域としての南ティロル
2 南ティロルにおける「解放記念日」
3 南ティロルにおける戦間期
4 凱旋門の顕彰
第4章 戦争体験と「経験」――語り部のライフヒストリー研究のために 清水亮
1 戦争体験者が語り部に〝なる〟――語りの「場」の歴史性の解読
2 戦後の生活史における対照的な価値付与
3 地域で語り部になる
4 「経験」の可能性
第5章 日本社会論の現在と戦争研究の社会学的可能性 野上元
1 はじめに――戦争と向き合う社会学
2 方法――社会記述の方法としての戦争
3 日本社会論のなかの戦争と軍事
4 課題の確認と再出発――社会学的に「戦争」を考えるために
第6章 丸山真男の歴史社会学
――遥かなる過去から東アジアの近代を見るとき 李永晶
1 「歴史社会」への丸山のまなざし
2 「精神構造」から「執拗低音」までの歴史認識
3 戦後の民主主義がどうして成功したか?
4 「近代の超克」と東アジアの歩み
第7章 昭和五十年代を探して 高野光平
1 「昭和三十年代」はなぜ使われるのか
2 「昭和五十年代」はなぜ使われないのか
3 戦後史はどのように書かれているか
4 昭和五十年代史をどう書くか
5 おわりに
第8章 戦前日本における家族社会学前史
――『社会学研究室の一〇〇年』を手がかりとして 米村千代
1 はじめに
2 戸田貞三と東京大学社会学研究室
3 家族社会学における戸田貞三
4 制度論と集団論
5 もう一つの研究史へ
第9章 コミュニティを統治する――ハウジングの社会調査史 祐成保志
1 はじめに――社会調査とハウジングの遭遇
2 計画的コミュニティにおける実験――もう一つの効果研究
3 計画的コミュニティとしての日系人収容所――限界状況の社会調査
4 社会調査のミクロ社会学――調査という経験の質
5 むすび――社会調査は誰のものか
第10章 歴史社会学の作法の凄み――『流言蜚語』について 赤川学
1 佐藤社会学の出立
2 佐藤健二が池内流言資料を読み込むまで――資料の形式・形態分析
3 一九八四年論文と一九九五年論文の「差分」
4 ミステリーとしての歴史社会学
5 佐藤歴史社会学の継承に向けて
あとがき 赤川学・祐成保志
索引
装幀――新曜社デザイン室