『発達障害の就労とキャリア発達』、2023年度日本コミュニティ心理学会出版賞受賞 - 2024.03.25
子ども観と教育の歴史図像学
新しい子ども学の基礎理論のために
著者 | 北本 正章 著 |
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ジャンル | 歴史・伝記 子ども・家庭・教育・学校 |
出版年月日 | 2021/12/01 |
ISBN | 9784788515000 |
判型・ページ数 | A5・560ページ |
定価 | 7,920円(本体7,200円+税) |
在庫 | 在庫あり |
子どもと若者の貧困格差が放置され、いじめ・虐待など子どもの死に至る痛ましい事件があとを絶たない。私たちの子ども理解の力が問われているのだ。本書は、アリエスの古典的研究『〈子供〉の誕生』以降の世界の研究動向を踏まえた、著者のヨーロッパ子ども観と教育の社会史研究の集大成である。子どもの誕生・成長・発達、遊びと労働、母性愛と父性愛、家族と学校など、西洋近代絵画を中心とする150点の子ども図像(イメージ)の分析を通して、「多産多死から少子化へ」「資産から負債へ」変貌する子ども観を明らかにし、21世紀の教育と福祉を包摂する新しい子ども学の課題と展望を示す。
* 教育、保育、福祉、文化史、美術史など幅広い人文科学領域をカバー。カラー図版付
* 著者は、青山学院大学名誉教授(教育史)、訳書にヴィンセント『マス・リテラシーの時代』(監訳、新曜社)ファス編『世界子ども学大事典』(監訳、原書房)ギリス『結婚観の歴史人類学』(勁草書房)ほか多数
口 絵 子どもの図像史―近代以降のヨーロッパとアメリカから
謝 辞
序 文
第一部 子ども観と教育の図像史
第1章 子ども図像の系譜を求めて―近代のヨーロッパとアメリカ絵画をてがかりに
1 イノセント・イメージの系譜
2 窓枠の子どもたち
3 動植物と子どもたち
4 路上から学校へ―イギリス女子教育史の画家ブラウンの周辺
5 図像のなかのリテラシー―「語り聞かせ」から「読み聞かせ」へ
6 子どものダンス図像から―農村画家デイロールの周辺
第2章 自然の子ども/子どもの自然―ヘレン・アリンガムの子ども表現
1 産業革命とナショナル・トラスト
2 田園風景のなかへ
3 水彩画家アリンガムの自己形成
4 子どもらしさの感性表現
第3章 ヨーロッパの伝統的子育て―習俗から科学へ
1 子育て習俗の誕生
2 スウォッドリング習俗の類型
3 スウォッドリング習俗の残存理由
4 乳母養育の類型
5 ルソーの子育て習俗批判
6 習俗から科学へ
第4章 子どもの遊びの社会史―ステラの『子ども遊戯図』をてがかりに
1 子どもの遊びの社会史へ
2 『子ども遊戯図』の背景
目 次
3 『子ども遊戯図』の構成
4 遊びの価値
5 消費文化と子どもの遊びの変質
第5章 子どもの生命観の変容―「あきらめる生命」から「守る生命」へ
1 シャボン玉遊戯図をてがかりに
2 多産多死の子ども観
3 子ども期とシャボン玉―生命の儚さ
4 子ども空間の誕生
5 観察と探求―気体の物理学・化学の時代へ
6 病原菌理論と子どもの衛生環境
7 清潔と衛生科学の時代へ
第6章 ヨーロッパ史における父親像と父性論―家父長・聖ヨセフ・成熟父性
1 地震・カミナリ・火事・オヤジ
2 古代ギリシア・ローマの家父長
3 子育てする父親―若く描かれる聖ヨセフ
4 「男の家政書」から「女の家政書」へ?
5 家庭教育の時代
6 近代教育思想と「父性」
7 「父性」の成熟とは何か
第7章 ヨーロッパ史における母親像と母性論
―マリア・ラクタンスから養育的母性まで
1 母性論争の背景
2 「授乳の聖母」「マリア・ラクタンス」
3 ルソーの母性論
4 母性の類型論から―生物学的母性・社会的母性・養育的母性
5 学習目標としての母性愛
第8章 人生の諸時期の伝統と子ども期の年齢構造―学級と学年の起源
1 年齢の識別と階層
2 小児医学と子どもの年齢区分
3 「人生の諸時期」の図像学
4 学級と学年の起源
5 年齢構造と教育関係
第二部 子ども観と教育の学説をめぐって
第9章 子ども観の非連続と連続
―アリエス・パラダイム以降五〇年の子ども観の社会史研究
1 子ども観の地平
2 アリエス・パラダイムの背景
3 アリエス・パラダイムの射程
4 非連続説
5 連続説
6 複合的歴史変動説
7 多様性と相対化
第10章 「子どもの発見」論の再検討―捨て子・野生児・自然児
1 子どもはどのように「発見」されたのか
2 「子どもの発見=発達の可能態」論の虚構
3 挑発者としての子どもの発見論
4 捨て子・野生児・自然児
5 子どもの自然性の発見
付録1 子ども観と社会動向の推移 2 児童救済と教育福祉の推移
第11章 新しい子ども学と家族戦略―子どもの価値転換の時代を見すえて
1 歴史のなかの子ども学
2 転換点としての一九八〇年
3 子ども学のカテゴリー分布
4 子ども学のカテゴリー構成
5 社会構造と子どもの価値転換―資産から負債へ
6 家族戦略―世帯の人数・経済・感情の相互連関
7 「児童研究」から「新しい子ども学」へ―課題と展望
注
あとがき
図表一覧
事項索引・人名索引
初出一覧
装幀・口絵制作 谷崎文子