はじまりの漱石

『文学論』と初期創作の生成

著者 服部 徹也
ジャンル 文学・エッセイ
哲学・思想
出版年月日 2019/09/06
ISBN 9784788516434
判型・ページ数 A5・400ページ
定価 5,060円(本体4,600円+税)
在庫 在庫あり

難解で知られる漱石『文学論』だが、講義を聴いた学生たちのノートから考察すると、公刊されたものはかなり不完全であることがわかる。そこから『文学論』の実像に迫り、『草枕』などの初期創作との影響関係を探る。『文学論』初めての本格的研究書。


小森陽一推薦
「東京帝国大学英文学科講師夏目金之助の試行錯誤の軌跡を、受講した学生たちのノートから、講義の現場に戻って辿り直す画期的な著作。
これまでの、「理論家夏目金之助」と「小説家夏目漱石」という二項対立の布置に、「講師夏目金之助」という第三項を導入することで、漱石夏目金之助の知的営みを、世界文学の関係性の中で著者は位置づけ直すことに成功した。
〈理論と実践の統一〉という、漱石夏目金之助の中で出来上っていたこれまでの枠組を壊し、小泉八雲=ラフカディオ・ハーンをはじめとする同時代の先行文学者と、教室で教えた多くの教え子たち、そして海を渡った中国の文学者たちとのかかわりにいたるまで、本書の第三項の射程は挑発的である。」

はじまりの漱石 * 目次

はじめに
   一 漱石 対 金之助 
   二 『文学論』の生成 
   三 講師夏目金之助 
   四 本書の構成 

第一部 東京帝国大学文科大学英文学科という環境

 第一章 新帰朝者夏目金之助――ロンドン留学と前任者小泉八雲の影
   一 近代文学研究の草創期 
   二 ロンドンの夏目金之助 
   三 小泉八雲と夏目金之助 
   四 スペンサー主義者小泉八雲 
 第二章 帝大生と「文学論」講義――受講ノートと時間割
   一 大学生と講義の〈間〉にあるもの 
   二 大学ノートと授業風景 
   三 漱石講義の帝大生受講ノート 
   四 中川芳太郎受講ノートの整理と分析 
   五 金子健二・木下利玄の時間割 
 第三章 「形式論」講義にみる文学理論の構想――「自己本位」の原点
   一 刊本から講義へ遡る意義 
   二 受講ノートとの比較 
   三 「外国語研究の困難について(序論)」 
   四 「自己本位」の原点 
   五 「Style」と「文体」 

第二部 「文学論」講義と初期創作

 第四章 シェイクスピア講義と幽霊の可視性をめぐる観劇慣習――「マクベスの幽霊に就て」から『倫敦塔』へ
   一 漱石が観たシェイクスピア 
   二 帝大生の観た沙翁 
   三 「マクベスの幽霊に就て」の論理 
   四 「文学論」講義と『マクベス』講義の並行 
   五 「文学論」講義における「人工的対置法」の二段構造 
   六 悲劇=喜劇論から観客論へ 
   七 観客と読者のあいだに 
   八 『倫敦塔』における劇場空間の隠喩 
 第五章 《描写論》の臨界点――視覚性の問題と『草枕』
   一 「文学論ノート」における「幻惑」論 
   二 講義における視覚性の問題 
   三 『文学論』加筆部における《描写論》 
   四 《描写論》の臨界点 
   五 残像のコラージュ 
   六 「理論」の代補 
   七 『草枕』の理論化 
 第六章 「間隔的幻惑」の論理――哲理的間隔論と『野分』
   一 『アイヴァンホー』読解と「間隔的幻惑」 
   二 『文学論』における「忘却」の意識理論 
   三 『文学論』の余白と『野分』――哲理的間隔論 
   四 『野分』の思想・技巧――感化への意志と幻惑の装置 
 第七章 「集合的F」と「識域下の胚胎」――『二百十日』への一視点
   一 『二百十日』の位置 
   二 革命・豹変と「識域下の胚胎」 
   三 〈集合的(F+f)〉 
   四 器械的模倣 
   五 群集心理学における伝染の法則 
   六 「集合的F」に加筆されなかったこと 

第三部 『文学論』成立後の諸相

 第八章 漱石没後の『文学論』の受容とその裾野
   一 なぜ漱石没後受容が重要か 
   二 『文学論』の裏方、中川芳太郎 
   三 〈「不都合なる活版屋」騒動〉 
   四 アカデミズムと入門書 
   五 〈通俗科学〉の時代 
 第九章 張我軍訳『文学論』とその時代――縮刷本・『漱石全集』の異同を視座に
   一 中国における受容 
   二 張我軍の翻訳活動と時代状況 
   三 その「原文」とは何のことか? 
   四 本文の成立過程 
   五 複数化する本文 
   六 原著の異同と訳文との照合 
 第一〇章 「文学の科学」への欲望――成仿吾の漱石『文学論』受容における〈微分〉
   一 成仿吾の『文学論』受容と変容 
   二 〈微分〉と図示のレトリック 
   三 成仿吾と大正教養主義 
   四 漱石/漱石受容における「文学の科学」への欲望 
   五 移動が理論をつくる 

おわりに 
あとがき 
事項索引 
人名索引 

      装幀――服部徹也    新曜社デザイン室

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