動物の声,他者の声

日本戦後文学の倫理

著者 村上 克尚
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2017/09/25
ISBN 9784788515376
判型・ページ数 4-6・394ページ
定価 4,070円(本体3,700円+税)
在庫 在庫あり
人間性=主体性の回復をめざした日本戦後文学だが,そこに今次大戦の根本原因があるのだとしたら? 武田泰淳・大江健三郎・小島信夫などの作品に現われた「動物」の表象を手がかりに,戦後文学の陥穽を衝き,文学・共同体の再生を企図する,気鋭の力作。
動物の声、他者の声――目次

はじめに

序 章 なぜ動物なのか?
 1 本書の目的
 2 近年の動物に関する哲学的考察
 3 動物の表象に関する文学研究
 4 戦後という時代
 5 作家の選定
 6 本書の構成

第一部 武田泰淳――国家の戦争と動物

第一章 「審判」――「自覚」の特権性を問う
 1 『司馬遷』と『世界史の哲学』
 2 複数の声のフォーラム
 3 記録者の特権性と動物の主題
 4 「罪の自覚」というレトリック
 結論

第二章 『風媒花』――抵抗の複数性を求めて
 1 竹内好の国民文学論
 2 外部への架橋
 3 「混血」としての主体
 4 全知の語りへの抵抗
 結論

第三章 「ひかりごけ」――「限界状況」の仮構性
 1 人間としての倨傲
 2 人肉食をめぐって
 3 「ひかりごけ」の構造
 4 国家と法-外なもの
 結論

第二部 大江健三郎――動物を殺害する人間

第四章 「奇妙な仕事」――動物とファシズム
 1 先行批評の整理
 2 同時代状況から
 3 犬殺しの強制収容所
 4 アレゴリーから変身へ
 結論

第五章 「飼育」――言葉を奪われた動物
 1 動物小説としての「飼育」
 2 江藤淳の近代主義批評
 3 三島由紀夫の反近代主義批評
 4 「飼育」の新たな読みへ
 結論

第六章 「セヴンティーン」――ファシズムに抵抗する語り
 1 「セヴンティーン」の位置
 2 自意識の語りとねじれ
 3 人間・動物・獣
 4 《人間》の問い直しへ
 結論

第三部 小島信夫――家庭を攪乱する動物

第七章 「馬」――戦後家庭の失調
 1 初期小島作品の方法
 2 戦後の家庭機械
 3 馬と家庭の失調
 4 「馬」の政治性
結論

第八章 『墓碑銘』――軍事化の道程
 1 日本人になること
 2 軍隊と動物
 3 軍隊と家庭
 4 軍事化を攪乱する
 結論

第九章 『抱擁家族』――クィア・ファミリーの誘惑
 1 『成熟と喪失』の背景
 2 クィア・ファミリーの誘惑
 3 軍事化とその亀裂
 4 歓待と動物的他者
 結論

第四部 動物との共生へ

第十章 『富士』――狂気と動物
 1 動物と精神障害者
 2 「治療」というイデオロギー
 3 精神障害者のアイデンティティ闘争
 4 治療から分有へ
 結論

第十一章 『万延元年のフットボール』――傍らに寄り添う動物
 1 主体の解体の先で出会うもの
 2 鷹とネズミの構造的対立
 3 傷つきやすさと赦し
 4 沈黙の叫びを翻訳する
 結論

第十二章 『別れる理由』――馬になる小説
 1 代償行為としての姦通
 2 トロヤ戦争を解体する
 3 「馬」の再演
 結論

終 章 非対称的な倫理
 1 戦後文学と動物
 2 動物への暴力を乗り越えるために
 3 今後の展望



あとがき
事項索引
人名・作品索引
装幀─難波園子

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