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マーカス・バンクス 著/石黒広昭 監訳

質的研究におけるビジュアルデータの使用
――SAGE質的研究キット5


A5判並製224頁

定価:本体2400円+税

発売日 16.11.1

ISBN 978-4-7885-1498-0

cover


◆日本語で読める、ビジュアルデータを扱う手引き
 質的研究では、写真、映画、絵など、さまざまなビジュアルデータが使用されます。本書は、どのようにしてビジュアルデータを収集し、分析するか、得られた結果をどのように研究の参加者や他の視聴者に提示するか、そして倫理的問題にどう対処するかについて、研究例を引きながら懇切に解説しました。ビジュアルアプローチは、研究対象の人々の見方を知る方法であるだけでなく、彼らの眼を通して世界を見る方法でもあること、すでにある素材をデータとして使うだけでなく、素材を作ること、そして最近のコンピュータによる分析にも、周到な目配りが利いた、待望の日本語で読める手引の刊行です。

質的研究におけるビジュアルデータの使用 目次

質的研究におけるビジュアルデータの使用 本書について(ウヴェ・フリック)

ためし読み

◆「SAGE質的研究キット」シリーズ

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質的研究におけるビジュアルデータの使用 目次
編者から(ウヴェ・フリック)
 「SAGE質的研究キット」の紹介
 質的研究とは何か
 質的研究をどのように行うか
 「SAGE質的研究キット」が扱う範囲

本書について(ウヴェ・フリック)

1章 はじめに
 なぜ画像なのか(画像ではないのか)
 ビジュアルであること
 ビジュアルデータを用いた調査研究の計画と実行
 重要な用語と概念
 この本の構成
 この本に掲載されたイメージについて

2章 社会調査におけるビジュアルデータの位置─概略史
 はじめに
 社会調査における写真の初期の利用
 社会調査における映画の初期の利用
 社会調査における写真と映画のその後の利用
 その他のイメージの利用

3章 ビジュアルなものを研究するさまざまなアプローチ
 はじめに─理論と分析
 ものごとの見方と見られるもの
 カルチュラル・スタディーズからのアプローチとそのほかの視点
 形式主義の方法
 リフレクシヴィティと他の経験的アプローチ
 イメージの物質性
 対象、分析、手法

4章 ビジュアルデータを用いた手法とフィールド調査
 フィールドにおけるビジュアルデータを用いた手法
 写真誘発法やその他の既存のイメージを用いた手法
 写真誘発法
 映画誘発法
 画像を作ること
 協働的な研究
 倫 理
 許可と著作権

5章 ビジュアルデータを用いた調査のプレゼンテーション
 プレゼンテーションのいろいろな方法
 視聴者を理解する
 学術的な文脈でのビジュアルデータを用いた調査の
                  プレゼンテーション
 研究協力者に向けたビジュアルデータを用いた調査の
                  プレゼンテーション
 デジタルメディアとマルチメディアでのプレゼンテーション
 イメージや他のデータの組織化

6章 結論─イメージと社会調査
 われわれは何を学んだのか
 ビジュアルデータを用いる手法の有用性について

訳者あとがき


用語解説
文 献
人名索引
事項索引

装幀=新曜社デザイン室


質的研究におけるビジュアルデータの使用 本書について(ウヴェ・フリック)

  ビジュアルデータは、視覚人類学などの領域で時に使われていたが、その後、質的調査の中で一般的に使われることが多くなってきている。「SAGE質的研究キット」の他の巻は、その議論のほとんどが発話された言葉や、実践の観察に集中しているため、ビジュアルデータに焦点を当てた本書は、この「キット」に新しい視点*を与えるものとなる。それぞれ異なるかたちのフィールド調査を扱ってはいるが、本書はエスノグラフィー*について書かれたアングロシーノ(Angrosino, 2007)と密接に関わっており、ディスコース分析について書かれたラプリー(Rapley, 2007)とも同様に関連がある。ラプリーの本と本書が扱うのは、分析素材として実際に存在しており、主に選択されて文書記録化されるものであり、多くは研究目的のために作られた素材ではない。こうした素材は、主として分析の過程でデータ*になる。それゆえ、両者とも、データの産出と分析に対して、素材が持つ特定の質を考慮に入れた統合的なアプローチを備えている。しかしながら、この本もデータ分析のためにコンピュータを使うことに関心があり、質的データを分析する上でギブズ(Gibbs, 2007)が示唆していることが、この文脈においても役立つだろう。ビジュアルデータは、よく言語的データを用いる手法と組み合わされて使われるため(たとえば、写真誘発法)、インタビューについてのクヴァール(Kvale, 2007)や、フォーカスグループについてのバーバー(Barbour, 2007)も、本書を補足するものとなるだろう。

 この本の焦点は、質的調査においてビジュアルデータを使用することに対して、歴史的、理論的、実践的にアプローチすることにある。本書にはそのアプローチを例示する多くの事例研究が含まれている。本書は、また、ビジュアルデータを用いる研究における特別な倫理的問題や、ビジュアルデータを用いた手法で得られた結果をどのように学術研究を行う人たちやその他の視聴者、そして研究に参加してくれた人たち自身にプレゼンテーションしたらよいのかという問題についても取り上げている。

 本書の中心にあるのは、どのようにしてビジュアルデータを用いた研究を進めていくのかを明らかにすることである。それはこの種のデータを収集し、分析するために、研究者がその意図をはっきりとさせるところから始まる。この点で、研究に参加する人々との協働研究に言及しているところは、他の質的調査手法にとっても非常に興味深い。ビジュアルアプローチの利用を、フィールドで生活するメンバーの視点をとる方法としてだけでなく、研究協力者(たとえば、子どもたち)の眼を通して世界を見る方法として論じているところも、同じく関心を引くだろう。最終的に、この本の中では、調査のために材料(この場合は、ビジュアルな素材)を作ることと、すでにある素材をデータとして使うことの間にある緊張関係について取り上げており、その検討の仕方は、他の種類のデータや素材を扱う研究にとっても、大いに実りあるものとなりうる。また、こうした特別なタイプの調査を計画すること、そしてこうした研究の質を特別なやり方で評価することについても考察を加えており、それらについては「SAGE質的研究キット」の1巻と8巻(Flick, 2007a, 2007b)が補っているが、それと同時に、本書は新たな特別な示唆を与えることで、それらを補足するものとなっている。