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岡 昌之・生田倫子・妙木浩之 編著

心理療法の交差点2
  ――短期力動療法・ユング派心理療法
      ・スキーマ療法・ブリーフセラピー


四六判上製320頁

定価:本体3400円+税

発売日 16.9.10

ISBN 978-4-7885-1489-8

cover


◆待望の続編!
 異なる立場の心理療法家が、事例の見立てと介入方法をめぐって議論をたたかわせた前作 『心理療法の交差点』 から三年――今作では短期力動療法(妙木浩之)、ユング派心理療法(田中康裕)、スキーマ療法(伊藤絵美)、ブリーフセラピー(若島孔文)にご登場いただき、各アプローチの異同の核心へとさらに迫りました。なぜ心理療法は多様に存在するのでしょうか。読者は本書を通じて心理臨床の生の実践に触れつつ、初心者からベテランまで、それぞれの読後感をもつことができることでしょう。好評を博した前作の、待望の続編です。

心理療法の交差点2 目次

心理療法の交差点2 まえがき

ためし読み

前作
心理療法の交差点
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心理療法の交差点2 目次
まえがき

第T部 本書に登場する心理療法
 第一章 短期力動療法とは

 第二章 ユング派心理療法とは

 第三章 スキーマ療法とは

 第四章 ブリーフセラピーとは

第U部 事例の検討
 事例1 自傷行為を繰り返す高校生のA子さん
  ●事例の概要
  ●事例1の見立てと介入―短期力動療法
  ●事例1の見立てと介入―ユング派心理療法
  ●事例1の見立てと介入―スキーマ療法
  ●事例1の見立てと介入―ブリーフセラピー
  ●事例1をめぐって

 事例2 夫との熟年離婚を考える妻B子さん
  ●事例の概要
  ●事例2の見立てと介入―短期力動療法
  ●事例2の見立てと介入―ユング派心理療法
  ●事例2の見立てと介入―スキーマ療法
  ●事例2の見立てと介入―ブリーフセラピー
  ●事例2をめぐって

 事例3 神経症的な症状とPTSDの問題を抱えるCさん
  ●事例の概要
  ●事例3の見立てと介入―短期力動療法
  ●事例3の見立てと介入―ユング派心理療法
  ●事例3の見立てと介入―スキーマ療法
  ●事例3の見立てと介入―ブリーフセラピー
  ●事例3をめぐって

第V部 心理療法の交差点
  ●座談会

あとがき

■装幀=桂川 潤


心理療法の交差点2 まえがき

同一事例を囲む異流派による見立てと面接のヴィジョン
臨床の異種格闘技戦!
車(心理療法における諸派)が、交差点でクラッシュ予定!

 前著『心理療法の交差点』の続編である、本書『交差点2』の特徴を並べてみました。いわば心理臨床の異種格闘技戦の記録です。心理臨床の表舞台に「戦」というキーワードが持ち込まれる試みは、今まで見たことがありません。理由を考えてみると、結局のところ穏やかで上品な、争いを好まない業界であるということに尽きます。そのような雰囲気の中での本書の企画は、編者執筆者もろもろメリットはほぼない(むしろマズイ?)わけですが、どうしてもという問題意識があるのです。

 心理療法諸派の共通性と差異について、本気でディスカッションするにはどうすればよいだろうか、というのが本書の問題意識です。心理療法の諸学派を代表するようなセラピストたちは、お互いの心理療法について知識はあっても根本的な理解には至らず、理論書や技法は知っていても実際どのように現場で使っているかの実感がわかないものです。口に出すかどうかはさておいて(笑)、不思議さを感じていたりもします。

 ところで昨今の日本の心理臨床を鑑みると、「私は分析家」、「私は家族療法家」という、諸派にアイデンティティを持つ心理療法家が減り、「大学院で諸派を一通り全部習い、ケースに合わせてブレンド」という層がもはや多数派です。この流れの中で、「諸学派の統合」と簡単に口にされることに違和感を覚えるという感覚は、諸学派アイデンティティ組の共通見解と言えるような気がしています。

 それぞれの心理療法は、問題とは何か、治癒とは何か、そもそもの存在をどう捉えるか、など拠って立つ認識論が異なっています。その違いは実に根本的で深いです。安易にブレンドされるなんてありえないのです。

 ところが、学派にアイデンティティを持つはずの本書の執筆者陣であっても、実際の臨床現場で生身のクライアントを相手にする時、大きな声では言いたくありませんが、クライアントに合わせて実は自然と他派を取り入れていたりするというのが実情です(執筆者若干名が本書でカミングアウト予定)。つまり、一人ひとり異なるクライアントに合わせて常に揺れているのです。つまり諸学派の統合というならば、その主体は「各療法の理論や技法」ではなく、「各療法を専門として実践を積んできた各セラピスト」であり、心理療法とは結局、人間同士の交流であるということに尽きると思います。

 読者の皆様には、事例のディスカッションを通じて、各療法のスタンスの差異と共通性、そして事例によるセラピストの変化とその揺れ、もしくは変化の無さを感じていただければと思います。事例選択はずいぶん悩みましたが、それぞれの切り口からアプローチできそうなものを選び抜きました。本書への収載にあたっては、ご本人の同意をお取りしたうえで、プライバシーに配慮し、個人が特定されないようそれぞれマスキングしています。

 事例をめぐって、本書で戦いに挑んでいただいたのは、短期力動療法(精神分析)の妙木浩之先生、ユング派心理療法の田中康裕先生、スキーマ療法(認知行動療法)の伊藤絵美先生、ブリーフセラピー(家族療法)の若島孔文先生です。そして前著同様、岡昌之先生に、クライエント中心療法の視点から事例と先生方へのコメントをいただきました。

 本書の内容の一部は、二〇一五年の心理臨床学会秋季大会の自主シンポジウムでも扱われました。大盛況で立ち見も多く出る中で開催されましたが、出席した方には「あまりに面白い! 信じられない! 来年もぜひ!」のお声を多数いただきました。読者の皆様にもその興奮が届き、かつ援助の理解に少しでもお役立てできましたら幸いです。

 最後になりましたが、座談会の打ち込みを手伝ってくださった、狩野真理さん、齋藤かほさん、三枝華子さんにお礼申し上げます。

惚れ惚れするほどのクラッシュぶりに愛をこめて
生田倫子