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マイケル・アングロシーノ 著/柴山真琴 訳

質的研究のためのエスノグラフィーと観察
――SAGE質的研究キット3


A5判並製168頁

定価:本体1800円+税

発売日 16.4.15

ISBN 978-4-7885-1476-8




◆エスノグラフィーと観察の勘所を一冊に凝縮!
 エスノグラフィーは、研究者が研究対象の生活世界に入り込み、さまざまな観察技法を駆使して研究する、インタビューと並んで質的研究の柱とも言える技法です。エスノグラフィーにはさまざまな理論的立場がありますが、本書はそれぞれをわかりやすく解説すると共に、どんな立場にも共通するエスノグラフィーの有効性、強みを発揮する研究課題は何か、という視点に立って、フィールドへの参加から、さまざまな観察の技法、得られたデータを形にするための手順とノウハウまで、実例を引きながら具体的に述べています。初学者だけでなく、エスノグラフィー研究を実践している人やエスノグラフィーを教えている教師にとっても、多くのヒントや示唆を得ることができる一冊です。

質的研究のためのエスノグラフィーと観察 目次

質的研究のためのエスノグラフィーと観察 本書について(ウヴェ・フリック)

ためし読み

◆「SAGE質的研究キット」シリーズ

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質的研究のためのエスノグラフィーと観察 目次
編者から(ウヴェ・フリック)
「SAGE質的研究キット」の紹介
質的研究とは何か
質的研究をどのように行うか
「SAGE質的研究キット」が扱う範囲
本書について(ウヴェ・フリック)
はじめに

1章イントロダクション─エスノグラフィーと参与観察
 エスノグラフィーを用いた研究小史
 社会文化理論とエスノグラフィー
 エスノグラフィー─基本原理
 定 義
 方法としてのエスノグラフィー
 産物としてのエスノグラフィー
 スタイルと文脈としての参与観察

2章エスノグラフィーの有効性─エスノグラフィーの方法によって、
どのようなトピックを効果的かつ効率よく研究できるのか
 エスノグラフィーの方法─その一般的有効性
 エスノグラフィーによる研究の実例
 エスノグラフィーの方法─研究上の特有の課題
 エスノグラフィーの方法─研究の場面

3章フィールドサイトの選定
 自己目録作りから始める
 フィールドサイトを選ぶ
 ラポール

4章フィールドでのデータ収集
 「事実」と「現実」
 メモ:応用的エスノグラフィーについて
 3つの主要な技法の領域
 観 察
 インタビュー
 文書研究

5章観察について
 観察の定義
 観察研究のタイプ
 観察研究の課題
 観察研究のプロセス
 妥当性の問題
 観察者のバイアス
 公共の場所での観察
 倫理と観察研究

6章エスノグラフィー・データの分析
 パターン
 データ分析のプロセス
 メモ:エスノグラフィー・データの分析における
    コンピューターの使用について

7章エスノグラフィー・データの表現方略
 伝統的な学術的形式でのエスノグラフィー・データの表現
 文書形式でのエスノグラフィー・データの他の表現方法
 文書を超えて

8章倫理的配慮
 研究に関係する倫理的配慮のレベル
 制度的機構
 研究倫理の個人的次元
 結 論

9章21世紀のエスノグラフィー
 変化しつつある研究文脈─テクノロジー
 変化しつつある研究文脈─グローバリゼーション
 変化しつつある研究文脈─バーチャルな世界

訳者あとがき
用語解説
文 献
人名索引
事項索引

  装幀=新曜社デザイン室


質的研究のためのエスノグラフィーと観察 本書について(ウヴェ・フリック)

 エスノグラフィーと参与観察は、近年の質的研究の発展においてばかりでなく、その歴史の中でも、主要な役割を果たしてきた。フィールドにおけるさまざまな関係、フィールドとそのメンバーに対して開かれていること、研究はどこに向けたものであるのかなどに関する知識の多くが、エスノグラフィーによる研究によって得られたものである。エスノグラフィーは参与観察の方法と密接に関係しており、かつてはそれを基本としていたし、最近では参与観察に代わるものになってきたとも言えるが、常に多様なデータ収集法を含んでいた。エスノグラフィーでは、しばしば観察、参与、フォーマル・インフォーマルなインタビュー、文書資料、その他出来事の痕跡の使用が組み合わされる。しかし、エスノグラフィーや参与観察を使えば、どのような問題にも接近できるというわけではない。サンプリングを考えてみても、観察に必要なフィールドや施設―より一般的には観察サイト―の選定に比べると、研究する人々を選ぶことにはそれほど重点が置かれていない。20世紀末にかけて、エスノグラフィーの研究方法をめぐる議論は、データ収集やフィールドでの役割を見つける問題から、フィールドについて書き、フィールドから報告するという問題へとますます比重が移っていった。エスノグラフィーのデータ分析では、人々の行動、相互作用、実践のパターンを見つけることに関心が向けられるようになった。

 本書では、このようなエスノグラフィーによる研究と観察研究の鍵となる事項について、掘り下げて解説されている。本シリーズの他の巻では、インタビュー(Kvale, 2007)やフォーカスグループ(Barbour, 2007)のような言語データ、あるいは会話分析(Rapley, 2007)やイメージ分析(Banks, 2007)に焦点が当てられているが、本書ではフィールド研究の実際を取り上げる。同時に、エスノグラフィーのもっと一般的な文脈でこれらのデータ収集法(インタビューからビジュアルデータまで)を用いる方法についてのより詳細な分析が本書の補完となるだろう。データ分析(Gibbs, 2007)と質的研究における研究デザインと質(Flick, 2007a,b)についての巻には、本書で概説された内容がより詳しく説明されている。すなわち本書は、本シリーズの他の巻と一体となって、エスノグラフィーと観察をいつ使ったらよいのかを判断するのに役立ち、フィールドでのエスノグラフィーと観察の用い方やその方法論的・理論的基礎を提供しているのである。また、本書で説明のために繰り返し使用される研究例は、エスノグラフィーを1つの方法としてではなく研究方略として捉え、エスノグラフィーがどういう研究テーマやフィールドに適しているのかを理解するのに役立つものである。