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子安増生・郷式徹 編

心の理論
――第2世代の研究へ


A5判上製228頁

定価:本体2500円+税

発売日 16.3.10

ISBN 978-4-7885-1467-6

cover


◆心理学の最前線を学ぶ!
 人は、どのようにして自己自身を知り、他者の心を読み取り、社会的コミュニケーションを行うのでしょうか。このテーマは、「心の理論」の研究として、心理学のメジャーな研究分野になっています。今や、研究は初期の基礎的研究を経て第二世代に突入し、定型発達と保育・教育の研究だけでなく、自閉症などの非定型発達とその発達支援の研究、脳神経活動の研究、ロボットなど機械の知の研究など多様な分野に発展しています。本書は、このような「心の理論」の最近、最新の研究成果を、第一線の研究者が報告します。学術的に正確でありながらわかりやすく書かれており、「心の理論」について理解を深める上で必読の一冊です。

心の理論 目次

心の理論 まえがき

ためし読み

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心の理論 目次
目  次
まえがき

第1章 心の理論研究35年─第2世代の研究へ  子安増生
1 はじめに
2 国際シンポジウム「心の理論の理論」
3 心の理論研究小史
4 心の理論欠如の子どもたち
5 第2世代に向かう心の理論研究
6 ザルツブルグ大学にて
文 献

第2章 チンパンジーの心の発達  林 美里
1 はじめに
2 チンパンジーの認知研究
3 チンパンジーの物の理論
4 チンパンジーの心の理論研究
5 チンパンジーの日常生活に見る社会的知性
6 チンパンジーの心の発達
文 献

第3章 まなざしの進化と発達  橋彌和秀
1 はじめに
2 TOMと「心の理論」
3 「まなざし」というシグナルの進化
4 まなざしとTOM
5 まなざしの強化力
6 おわりに
文 献

第4章 模倣の進化と発達  明和政子
1 はじめに
2 模倣のメカニズム
3 模倣の社会的機能
4 模倣の生物学的基盤
5 まとめ
文 献

第5章 心の理論の脳神経機構  大塚結喜
1 はじめに
2 誤信念課題を用いたニューロイメージング研究
3 心の理論を支える2種類の脳神経機構
4 心の理論の脳神経機構に含まれる脳領域
5 まとめ
文 献

第6章 実行機能と心の理論  小川絢子
1 はじめに
2 実行機能とは何か
3 心の理論と実行機能の関連
4 第2世代に向けた実行機能と心の理論研究
文 献

第7章 ワーキングメモリと心の理論  前原由喜夫
1 はじめに
2 ワーキングメモリの基礎知識
3 ワーキングメモリの発達と心の理論
4 ワーキングメモリと大人の心の理論
5 心の理論のワーキングメモリ説
6 ワーキングメモリの老化と心の理論
文 献

第8章 感情と心の理論  溝川 藍
1 はじめに
2 心の理論と社会的生活
3 心の理論と社会的評価への敏感性
4 異なる他者からの批判的評価の受け止め方と心の理論
5 日本・イタリアの幼児の批判的評価の受け止め方と心の理論
6 家庭の情動環境と批判的評価の受け止め方の個人差
7 今後の展望
文 献

第9章 教示行為と心の理論  赤木和重
1 はじめに─ヒトを考える手がかりとしての教示行為
2 教示行為の進化
3 教示行為と「心の理論」
4 教える行為の理解と「心の理論」の発達
5 教示行為の発達研究の新展開
6 他者の主体性を尊重するものとしての教示行為
文 献

第10章 対人葛藤解決と心の理論  鈴木亜由美
1 はじめに
2 子どもの対人葛藤解決
3 幼児は他者の意図をどのように判断するのか
4 意図理解を育む関わりとは
文 献

第11章 社会的評価と心の理論  林 創
1 はじめに
2 道徳性の発達研究の変遷
3 道徳性と心の理論
4 心の理論をふまえた道徳性に関わる研究
5 まとめ
文 献

第12章 ロールプレイと心の理論  古見文一
1 はじめに
2 マインドリーディングの発達の影響因
3 ロールプレイとは
4 マインドリーディングにロールプレイが及ぼす効果
5 今後の課題
文 献

第13章 心の理論の非定型発達  別府 哲
1 はじめに─自閉症と心の理論欠損仮説
2 自閉スペクトラム症は心の理論が欠損しているのか?
3 直観的心理化と2種類の処理
4 心の自動的処理の形成プロセス
文 献

第14章 自己と「心の理解」の発達  木下孝司
1 はじめに
2 心の理論研究が問わずにきたもの
3 自己と「心の理解」の発達モデル
4 行為から表象へと展開される「心の理解」
5 時間的に拡張された自己の形成と「心の理解」
6 「かけがえのない」自己と臨床・実践的問題
文 献

第15章 心の理論を支える構造と物語─未来への展望  郷式 徹
1 はじめに
2 誤信念課題とは何なのか?
3 広義の心の理論─階層的なモデルの想定
4 心の理論の発達と物語
文 献

あとがき
人名索引
事項索引

装丁=新曜社デザイン室


心の理論 まえがき

 人は,どのようにして自己自身を知り,他者の心を読み取り,社会的コミュニケーションを行うのでしょうか。心理学において最も基本的とも言えるこのテーマは,この30年あまりの間に「心の理論」の研究として盛んになってきました。動物の社会的知能の研究として始まった「心の理論」の研究は,定型発達と保育・教育の研究だけでなく,自閉症などの非定型発達とその発達支援の研究,脳神経活動の研究,ロボットなど機械の知の研究など多様な分野に発展してきました。今や,「心の理論」の研究は第二世代に突入したと言え,発達心理学系の学会に行くと,「心の理論」の研究発表は必ず見られるだけでなく,メジャーな研究分野になっていると感じられます。本書は,このような「心の理論」の最近,最新の研究成果を,学術的に正確かつできるだけわかりやすく,多くの読者に伝えることを目指すものです。

 本書の企画は,2016年3月に私(子安)が京都大学を定年退職することを念頭に置いて考えてくださった関係者の発案に端を発するものです。そのため,執筆陣は,京都大学教育学部あるいは同大学院教育学研究科の子安研究室の出身者を中心に,全員が京都大学出身者となっています。しかしながら,本書はいわゆる退職記念論集のようなものではなく,「心の理論」研究の成果と今後の展望をまとめた水準の高い専門書として,長く利用される本になることをめざしたものです。
 本書の企画と出版にあたり,新曜社編集部には,今回も大変お世話になりました。思い起こせば,執筆者としての私と新曜社とのおつきあいは,恩師の梅本堯夫先生(京都大学名誉教授,故人)のご定年退職を記念した『教育心理学の展開』(1985年)に「形式的推理」という短い論考を書いたのが最初でした。その後,キーワードコレクション・シリーズの編者に迎えていただき,『発達心理学』(1992年),『発達心理学[改訂版]』(2004年),『パーソナリティ心理学』(2006年),『心理学フロンティア』(2008年),『教育心理学』(2009年),『社会心理学』(2011年),『認知心理学』(2011年)を立て続けに上梓いたしました。2011年には,本書の兄貴分とも言うべき子安増生・大平英樹(編)『ミラーニューロンと〈心の理論〉』も刊行されました。それ以外の幾つかの著作物も含め,新曜社ならびに塩浦?社長の長年のご厚誼に対して,心より厚く御礼申し上げます。

  2016年2月
子安 増生