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重野 純・高橋 晃・安藤清志 監修/春原由紀 著

キーワード心理学6 臨床
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A5判並製176頁

定価:本体2100円+税

発売日 16.2.25

ISBN 978-4-7885-1462-1

cover


◆人間関係を築く臨床心理の基礎知識
 ついに昨年、公認心理師法案が可決され、臨床心理の国家資格が実現することになりました。昨今も、児童虐待や高齢者への虐待がしばしば事件となって報道され、また、育児ノイローゼに悩む親や、学校や社会になじめず、不登校やひきこもりとなる人びともあとを絶ちません。急激に変化する社会にあって、生きづらさを感じているひと、よりよい人間関係を築きたいと願っている人にとって、臨床心理の知見はたいへん役立ちます。本書は、臨床心理の基礎的な考え方、現代の代表的な問題と援助の方法を30のキーワードでわかりやすく解説しました。そして、カウンセラーはどんな実践をしているのか、そのライブな世界をイメージできるよう書かれています。

キーワード心理学6 臨床 目次

キーワード心理学6 臨床 まえがき

ためし読み

◆「キーワード心理学」シリーズ

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キーワード心理学6 臨床 目次
「キーワード心理学」シリーズ刊行にあたって

まえがき

パート・1 実践の学としての臨床心理学
1 対人援助の学としての臨床心理学ますます広がる活動領域
2 臨床心理学と精神医学その相補的な関係
3 カウンセリングと心理療法代表的な考え方
4 心理アセスメント支援の方針をたてる

パート・2 さまざまなアプローチ
5 子どもの心理臨床「問題」を誰がどのようにとらえるのか
6 プレイセラピー(遊戯療法)遊びを通しての変容
7 箱庭療法箱の中に繰り広げられる私の世界
8 家族療法家族というシステム
9 自助グループ当事者同士による支援
10 グループセラピー(集団心理療法)集団の力を活かす
11 スクールカウンセリングと教育相談教育現場との協力関係

パート・3 問題の理解と援助のために
12 境界性パーソナリティ障害生きづらさを抱える人々
13 神経症自分の行動を止めることができない
14 PTSD(外傷後ストレス障害)コントロールできない衝撃
15 解離性障害意識や感覚を切り離す防衛
16 心身症(ストレス関連疾患)心と体の強い関係
17 精神疾患臨床心理学からの支援
18 摂食障害(過食症・拒食症)「食べる」ことの問題行動
19 児童虐待必要な周囲の気づき
20 虐待の影響虐待を受けた子どもの特徴
21 家庭内暴力子から親への暴力
22 ドメスティックバイオレンス配偶者やパートナーによる暴力
23 高齢者虐待ソーシャルサポートの必要性
24 アディクション(嗜癖)・依存症抜けられない悪習慣
25 共依存問題行動を助けてしまう人の問題
26 育児ノイローゼ母親になるプロセスでの問題
27 社会的ひきこもり対人関係の悪循環
28 不登校成長途上のつまづき
29 集団適応集団と個の関係
30 反社会的行動仲間への所属感

文  献
人名索引
事項索引

装幀─大塚千佳子
カバーイラスト─いとう 瞳


キーワード心理学6 臨床 まえがき

  何を勉強して、何になろうか、そんな進路の悩みはだれもが経験することでしょう。何の悩みもなく「お花屋さん」「サッカー選手」などと言っていたころとは違って、自分についてかなり客観的に見られるようになっていても、具体的にどのような方向に進み、学んだことを社会でどのように生かすことができるかということはわかりにくいものです。

 私もそうでした。高校生の頃、進学はしたいけれど、どんな方向に自分は関心があるのだろうと思い悩んだものです。そんな時、友達に「おもしろいよ」と勧められて読んだのが、心理学や精神分析の本でした。この本の企画を伺ったとき、その時の自分の気持ちを思い出して、臨床心理学を学ぼうかどうしようかと迷っている方の役に立てたらいいなあと思ったものでした。

 この本は、監修者の方々が、臨床心理についてキーワードになるだろうという項目をあらかじめ立ててくださり、それを受けて筆者が説明するという形を取っています。そして大きく3つに分けられる構成です。最初は心理臨床の基礎的な考え方(理論)、次に様々な心理臨床の方法(技法)、最後に心理臨床の対象(実践)になります。心理臨床は、理論と技法と実践がかみ合って進んでいく科学といえるでしょう。

 臨床心理学の概念のなかには、難しいものがあり、実際に臨床現場で経験を積む中で「あっ、そういうことか」と理解できたりします。ですから、この本では臨床心理の世界についてイメージしていただくことができればと、なるべく、心理士たちがどのような役割をもって実践の場に向き合っているのかに焦点を当てました。

 臨床心理の世界はライブの世界です。クライエントの方々とカウンセラーとが、真剣に向き合う中で、発せられた一言が、相手との関係の中に生きたり、逆に関係が危機に陥ったりという、人と人との関係を基盤とする生きた世界です。その中で、カウンセラーやセラピストは関係責任をきちんと果たしていかなくてはなりません。そこに心理臨床の難しさと、醍醐味があるともいえるでしょう。

 また、臨床心理学の中には、たくさんの立場、理論があり、心理士はそれぞれ依って立つ理論を大事にしているといっていいでしょう。筆者の依って立つ立場は、「関係論」という、お茶の水女子大学で筆者が学んだ松村康平先生の創始した理論・技法・実践体系です。今や「関係」とか「関係性」といっても何の問題もなく受け入れられますが、筆者が学んだ四十年以上前は、学会でも「関係? What?」といった状況でした。しかし、現在ではさまざまな現象を関係的にとらえていくことは当たり前になってきているといってよいでしょう。そこに成立する関係において問題とされる事柄を理解していくことが大切だと思います。

 社会の急激な変化の中にあって、生きづらさを感じる方々にだけでなく、よりよい人間関係を築きたいと願っている方々に向けて、臨床心理の知見の果たす役割は大きいものと思います。

 専門家になるという方向性だけでなく、だれもが臨床心理に関心を寄せ、ご自分の生活を充実させていくことができたらと思います。

 本書の校正をしているときに、国会で、公認心理師法案が可決されたというニュースが飛び込んできました。臨床心理の専門家を国家資格にという動きは、半世紀以上にわたって私たちの願いでした。紆余曲折がありながらも、一応の方向性が実現したことを素直に喜びたいと思います。そして、今後、まだまだ課題は山積していますが、臨床心理の資格を持つ者たちが謙虚に学び続け、社会の中で人々に役立つ活動を繰り広げていくことを心から願っています。

 2016年1月
春原由紀