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土屋廣幸 著

性格はどのようにして決まるのか
――遺伝子、環境、エピジェネティックス


四六判並製208頁

定価:本体2100円+税

発売日 15.5.15

ISBN 978-4-7885-1436-2




◆古くて新しい問題へのいちばん新しい回答
 ヒトの性格は50%が遺伝的に、残り50%が環境によって決まると考えられてきました。さらに最近の研究によって、性格はすでに赤ちゃんの時期から一人ひとり異なることが明らかになってきました。たとえば産科病院では毎日何人もの赤ちゃんが生まれますが、おぎゃあおぎゃあと盛んに泣いている赤ちゃんがいる一方で、その隣りでスヤスヤ眠っている赤ちゃんもいます。この違いは一体、何なのでしょう? 本書は、こういうギモンからはじめて、赤ちゃんの性格についての発達心理学の研究と、最近明らかになってきた性格を決める脳の部位や遺伝子、環境の働きについての知見を見てゆきます。本書を繙きながら、ヒトの性格が一人ひとり、こうも違う不思議に思いを馳せてはいかがでしょう

性格はどのようにして決まるのか 目次

性格はどのようにして決まるのか はじめに

ためし読み

◆書評
2015年9月20日、日本経済新聞

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性格はどのようにして決まるのか 目次
推薦の言葉 積山 薫

はじめに

第1章 個性の誕生
     この章のまとめ

第2章 遺伝子は性格の50%を決める?
     この章のまとめ

第3章 赤ちゃんの気質―発達心理学からのアプローチ
     (1)成人の性格特性
     (2)チェスとトーマスの研究
     (3)カスピの研究
     (4)ケーガンの研究
     (5)ロスバートの研究
     この章のまとめ

第4章 表現型から遺伝子型、脳回路、そしてエピジェネティックスへ
     (1)クロニンジャーのモデル
     (2)ハリリのモデル
     (3)セロトニン調節遺伝子群
     (4)ストレス反応と視床下部‐下垂体‐副腎系
     (5)ストレス反応とエピジェネティックな調節T
        ――糖質コルチコイドレセプター遺伝子のメチル化
     (6)ストレス反応とエピジェネティックな調節U
        ――セロトニントランスポーター遺伝子のメチル化
     (7)ストレス反応とエピジェネティックな調節V
        ――脳由来神経栄養因子遺伝子のエピジェネティックな調節
     (8)嗅覚のエピジェネティックス
     (9)加齢に伴うエピジェネティックな変化
        ――一卵性双生児における研究
     (10)セロトニン神経伝達系のエピジェネティックな調節とうつ症状
        ――一卵性双生児における研究
     (11)入浴時によく泣く子の遺伝学的背景は?
     この章のまとめ
     第4章の解説と用語の説明

第5章 候補遺伝子アプローチと全ゲノム関連解析法のあいだ
     (1)身長は80〜90%遺伝で決まる。
        しかし、身長を決める遺伝子は数千個以上ある
     (2)1遺伝子異常でおきる疾患は、
        1遺伝子異常だけで説明できるのか?
     (3)シャーニーのネオジェノミックス(ポストジェノミックス)
     この章のまとめ

第6章 動物の個性・性格
     (1)トリの場合
     (2)ギンギツネの場合
     (3)マウスの場合
     この章のまとめ

第7章 性格をめぐるさまざまな話題
     (1)運動は脳の可塑性を高める
     (2)食事内容は脳と行動に影響する
     (3)教育の役割
     (4)性格を決める遺伝子、そこからはるかにつながるもの
     この章のまとめ

この本のまとめ

人名索引 (1)
事項索引 (2)
文  献 (6)


性格はどのようにして決まるのか はじめに

 ヒトの性格はこれまで、50%が遺伝的に、残り50%が環境によって決まると考えられてきました。さらに最近の研究によって、性格は赤ちゃんの時期から一人ひとり異なることが次第に明らかになってきました。そこでヒトの性格がどう決まるのかという話を、赤ちゃんの時期から始めることにします。

 大きな産科病院では毎日、何人もの赤ちゃんが生まれます。そういう病院で赤ちゃんを観察していると、おぎゃあおぎゃあと盛んに泣いている赤ちゃんがいますし、隣に大声で泣いているおともだちがいるのに、平気でスヤスヤ眠っている赤ちゃんもいます。お母さんたちのお話を聞くと、うちの子は泣いてばっかりでどうしたらいいかわからなくて困りますと言われる場合がありますし、逆に、うちの子はちっとも泣かないので心配ですと言われる場合もあります。どちらも問題ないのでしょうか? また、この違いは一体、何なのでしょうか?

 この本では、まず、赤ちゃんの泣き方の違いの観察をもとに、赤ちゃんたちの性格・個性についての発達心理学的研究、そして最近明らかになってきた性格を決める脳の部位や遺伝子について述べます。それから、赤ちゃんの性格を決める環境の働きについて考えます。心理学研究と脳の構造や遺伝子の多様性、さらに環境との相互作用に関する研究は最近始まったばかりですが、大きな進歩を遂げようとしている領域です。ヒトでの研究や動物実験で明らかになった事実、性格や行動に影響する運動・食事・教育の問題も論じます。そして、性格や行動を考えることは、ひいては人間とは何かという問いにまでつながるのではないかという話題まで紹介します。

 やや詳しく書いたので、途中で面倒くさいと思われた部分は流し読みでけっこうです。詳しく書いたのは、発達心理学や行動科学、遺伝学や脳科学から見た、性格や気質に関する現在の理解を明らかにしたかったからです。さらにこの本で得られた知識を参考にして、最新の研究成果にふれることができるようにと考えました。各章の終わりには必要に応じて、「この章のまとめ」、「注」をつけるとともに、「文献」も巻末にリストしました。

 この本を書くきっかけを与えてくれた、私の出会った、たくさんの赤ちゃんたちとお母さんたちに感謝したいと思います。赤ちゃんたちとお母さんたちに接することがなかったら、ヒトの性格はどうやって決まるかについて深く考える機会はなかっただろうと思っています。