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安田裕子 編、滑田明暢 編、福田茉莉 編、サトウタツヤ編

TEA 実践編
――複線径路等至性アプローチを活用する


四六判上製272頁

定価:本体2400円+税

発売日 15.3.25

ISBN 978-4-7885-1430-0

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◆TEAの幅広い応用の可能性
 TEAは複線径路・等至性アプローチの略称です(「TEM」を冠した本が出ていますが、TEMはTEAで用いられるモデル図式を指しています)。心理学や社会学、教育学だけでなく、保育、医療、看護、福祉など、人間の発達や教育、ケアの研究と現場において、質的方法への関心が高まっています。人間を実験室的な科学の方法によってでなく、時間的な変化と文化社会的文脈のなかで捉えることの重要性が認識され、そのための方法として開発されたのがTEAです。TEAは幅広い応用の可能性をもつ柔軟な方法として大きな注目を集めていますが、「標準」的な手続きがないため、初心者には取り組みにくい面があります。

『実践編』では、TEAを実際にどのように研究に活かしたらよいのか、その勘所を解説し、保育、教育、看護・介護、心理臨床、経営、障害教育等、多様な分野の活用例を紹介して、その実際をとらえられるようにしました。TEAを研究に活かしたい学生・研究者にとって、座右の書となるでしょう。

TEA 実践編 目次

TEA 実践編 まえがき

ためし読み

TEA 理論編

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TEA 実践編 目次
まえがき

第T部 研究実践とそこからの生成

1章−TEAの実践
 1―1 複線径路等至性アプローチ 方法論的複合体としてのTEA
 1―2 EFPとセカンドEFP 等至点の再設定の可能性
 1―3 分岐点 人生径路における分岐とその緊張関係
 1―4 必須通過点 径路の多様性と異時間混交性
 1―5 促進的記号と文化 発生の三層モデルで変容・維持を理解する(その1)
 1―6 行動と価値・信念 発生の三層モデルで変容・維持を理解する(その2)
 1―7 複線性と多様性を描く地図づくり TEAによる分析の流れ(その1)
 1―8 径路の可視化 TEAによる分析の流れ(その2)
 1―9 緊張状態のあぶりだし TEAによる分析の流れ(その3)

2章−TEAの、研究への適用の拡がりから
 2―1 保育実践@ 保育者の保育行為選択 いざこざ場面にどうかかわるか?
 2―2 保育実践A TEAで捉える子どもの遊びの世界 サウンド・エスノグラフィの実践
 2―3 保育実践B 子育て課題のある母親の発達と支援 母親の変容を支える
 2―4 看護・保健実践 10代で出産した母親の妊娠から出産までの径路
 2―5 大学教育実践 卒業演習における教師と学生とのかかわり
 2―6 心理臨床実践 不登校体験者のたどったプロセスの分析
 2―7 矯正教育における音楽療法実践 意味生成と変容を促進する記号としての「大切な音楽」の語り
 2―8 スポーツ実践 オリンピック選手の4年間の体験
 2―9 経営実践 専門職大学院ビジネススクールの学びによる職業的アイデンティティ変容の可視化

3章−TEAで研究をプロモート&アクティベイトする
 3―1 青年期の課題と発達臨床 ひきこもりを抱える家族におけるきょうだいの内的変容過程
 3―2 グローバリゼーションと進路選択 大学進学を希望する私費外国人留学生の進路選択プロセス
 3―3 キャリア支援と臨床 自己志向的完全主義傾向がある学生の就職支援の検討
 3―4 障害児の理解と教育 特別支援学校教師の「自閉症児の理解を深める視点」の生成過程
 3―5 視覚障害者の生活自立 高齢視覚障害者のIT機器利用
 3―6 介護家族の意思決定 経口摂取困難な高齢者への人工栄養導入をめぐる介護家族の意思決定過程

第U部 研究実践におけるTEAの可能性

4章−研究実践との往還から
 4―1 1/4/9の法則からみたTEM 事例数が教えてくれること
 4―2 トランスビューの視点 TEM図を介した語り手と聴き手の視点の融合
 4―3 家族を描く発生の三層モデル(TLMG) 錯綜したシステムの文脈への注目
 4―4 KJ法とTEM 時間をインポーズする
 4―5 GTAとTEM 2つの方法論の立ち位置とコラボレーションの可能性
 4―6 テキストマイニングとTEM 構造への着目と変容への視点
 4―7 供述分析とTEM 3次元視覚化ツールへの昇華

5章−実存にアプローチするフレームとして
 5―1 エスノグラフィ(アクションリサーチ)を実践する TEMを導入したエスノグラフィの可能性
 5―2 ジェンダーに気づく TEMを用いた社会文化的性役割の理解へ向けて
 5―3 キャリア・アイデンティティ・ワーク カウンセリング・ツールとしてのTEA
 5―4 保育カンファレンスに活用する 対話や実践知の交流を促すツールとしてのTEM

あとがき
索引
装幀=加藤光太郎


TEA 実践編 まえがき

過去を未来へつなぎ、人と人を結ぶ

 TEA(複線径路等至性アプローチ)は、時間の流れとシステムを捉えるという特徴をもった、過程と発生を捉える質的研究法として発展してきた。それは、方法論としての精緻化の展開過程における、多くのみなさまの協働的な学びと理解があってこそ、である。そうしたありようは、『ワードマップ TEA』の出版に向けて、2014年2月末に1泊2日で福島にて開催した討論会合宿での熱く実り豊かな議論にも、象徴的に示されていよう。そして新曜社塩浦ワ社長は、濃厚なボリュームある内容を【理論編】【実践編】の2冊セットで刊行するという英断を下してくださった。

 ここでは、本書『ワードマップ TEA 実践編』の構成を、簡潔に説明しておきたい。【実践編】は、「第T部 研究実践とそこからの生成」(1章から3章)と「第U部 研究実践におけるTEAの可能性」(4章と5章)により成り立っている。

 まず1章では、「TEAの実践」と題し、TEAとは何か、ということをはじめ、基本的な諸概念について、できるかぎり研究実践に即したかたちで解説されている。TEAを用いた分析のやり方のひとつとして参考にしていただければと思う。なお、TEAの特長のひとつは、諸概念を通じて、実存する人のライフ(生命・生活・人生)や場の有り様を丁寧に捉えることができる、というところにある。実際に、インタビューにせよ、観察にせよ、収集したデータを丹念に捉えようとする試みのなかで、各概念が生み出されてきた。分析を手続き化し遵守すればそれでよし、とするのではなく、手続きを確認し、概念の定義を理解し活用しながら、関心がもたれている事象がどう捉えられるのかという視点を培う姿勢を大切にして、読み進めていただければ幸いである。

 2章「TEAの、研究への適用への拡がりから」では、TEAを用いて研究をしてこられた方々の研究を紹介するかたちで構成した。TEAの、時間の流れを重視し文化的・社会的文脈を捉えるという特徴に可能性と魅力を感じてくださった方々のご専門は、複数の学問分野にまたがる。文化心理学を土台にしてはじまったTEAは、教育心理学、発達心理学、臨床心理学、スポーツ心理学など、心理学のなかでその適用に拡がりをみせている。と同時に、心理学を越えてもいる。本章で描かれている研究実践の蓄積により、保育学、社会学、看護学、そして経営学などへもつながり拡がりゆくこれまでとこれからの可能性が浮き彫りになっていることを、ここで実感していただけるだろう。

 3章「TEAで研究をプロモート&アクティベイトする」でもまた、TEAを用いて研究を行った方々の論考を紹介した。章タイトルにあるように、とりわけTEAによって研究がいかに促進され活性化されたのか、という視点を織り交ぜて執筆いただいた。2章と同様、その構成は、多様な学問領域、専門にまたがっており、研究内容と研究法の用い方という2つの観点から、拡がりのある知見が埋め込まれている。

 4章「研究実践との往還から」では、TEAによる研究を実践するうえで明らかになってきた法則や分析過程での工夫、システムを捉えるということがいかになされうるのかということ、他の分析法との併用可能性、そして、時間を捉えるという特徴を応用したツールのさらなる開発など、研究実践の蓄積によるTEAの多様な深化と拡張が描き出されている。本章が執筆されている基盤と方向性は、一方で理論的でありまた一方で実践的ある。その意味で、これからのTEAの精緻化に多面的に資するものにもなっていよう。

 5章「実存にアプローチするフレームとして」では、TEAのものの見方を適用することによって、アクションとして、実存する人や場に迫る可能性と実践が豊かに記述されている。フィールドワークをする、ジェンダーを考えるなどといった、研究を推進するうえでのメタ的なものの見方が論じられているのは、TEAの中心となるTEMを組み立てる諸概念が、思考を促すツールとして生きているがゆえであるだろう。各概念を通じて現象にアプローチしたりものの見方を鍛えたりすることがめざされているという意味において、究極的にはTEM図として径路を描かなくてはならないわけではない、とも謳われていることを、ここで言い添えておこう。またこの章では、そうした思考を促す側面を存分に生かすかたちで、教育的なワークにTEMやTEAを援用した実践活動が展開されてもいる。

 本書では、このように、TEAの実践的な可能性とその実際が、多面的・多層的に描き出されている。また、多くの方々に寄稿いただくことによって、有り難いことにこれから取り組むべき課題もみえてきた。TEAによる研究を通じて、TEA研究自体の、過去と現在と未来をつなげてくださった、理論編を含む執筆者のみなさまには、感謝するばかりである。また、執筆くださった方々以外にも、これまでTEA研究に参与くださり、研究活動の有意義な実りの場を共有くださった方は数多い。本書『ワードマップ TEA』―理論編も実践編もである―の校正に協力くださった方々もいる。誠に有難いかぎりである。可視化されにくいながらも、TEAを支えてくださる方々あってこそであると感じ入っている。この場をかりて、さまざまに関与くださるみなさまに、心より御礼申しあげたい。そして、読者のみなさまには、実践編と理論編とをあわせてご一読いただき、TEAのものの見方より、人のライフの豊潤さに接近できることを実感したり、おもしろいと思って研究活動に参与いただけるのなら、それは望外の喜びである。

  2015年2月
                                 安田裕子