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安田裕子 編、滑田明暢 編、福田茉莉 編、サトウタツヤ編

TEA 理論編
――複線径路等至性アプローチの基礎を学ぶ


四六判上製240頁

定価:本体1800円+税

発売日 15.3.25

ISBN 978-4-7885-1429-4

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◆TEAの幅広い応用の可能性
 TEAは複線径路・等至性アプローチの略称です(「TEM」を冠した本が出ていますが、TEMはTEAで用いられるモデル図式を指しています)。心理学や社会学、教育学だけでなく、保育、医療、看護、福祉など、人間の発達や教育、ケアの研究と現場において、質的方法への関心が高まっています。人間を実験室的な科学の方法によってでなく、時間的な変化と文化社会的文脈のなかで捉えることの重要性が認識され、そのための方法として開発されたのがTEAです。TEAは幅広い応用の可能性をもつ柔軟な方法として大きな注目を集めていますが、「標準」的な手続きがないため、初心者には取り組みにくい面があります。

そこで本『理論編』では、その理論的背景を述べ、基本用語を分かりやすく解説して、TEAによって何ができるのか、どのように展開出来るかを示します。

TEA 理論編 目次

TEA 理論編 まえがき

ためし読み

TEA 実践編

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TEA 理論編 目次
まえがき

第T部 TEAの基本と理論的背景

1章−TEAというアプローチ
 1―1 複線径路等至性アプローチ(TEA) TEM、HSI、TLMG
 1―2 TEAにおける時間概念 時間の2つの次元
 1―3 開放システムと形態維持 形態維持と発生のプロセス
 1―4 実存性 文化心理学および質的研究におけるTEAの布置
 1―5 TEM的飽和 手順化の問題

2章−TEMの基本と展開
 2―1 等至性と複線径路 両極化した等至点とZOF(ゾーン・オブ・ファイナリティ)へ
 2―2 分岐点と必須通過点 諸力(SDとSG)のせめぎあい
 2―3 未定と未来展望 偶有性を取り込み、価値が変容する経験として
 2―4 画期をなすこと 研究者の視点と所在

第U部 TEAというメソドロジー

3章−TEMの評論、評論としてのTEM
 3―1 発達的時間 相対的な静止と変化の入れ子
 3―2 前方視 TEAと生涯発達との交差から捉えるライフの豊かさ
 3―3 ポドテクスト ヴィゴーツキー理論とTEM(TEA)
 3―4 ナラティヴ研究とTEM その発想はどこで交差し、どのように響きあうことになるのか
 3―5 研究ツールとしてのTEM TEMをいつ使うのか

4章−海外のTEM研究
 4―1 TEMの一般哲学 過去と未来の間
 4―2 TEMと対話的自己理論(DST) 夫婦間問題を理解するために
 4―3 コンポジションワークとTEM 非可逆的時間における自己についての探求
 4―4 移行、イマジネーション、そしてTEM 「鳥の目」からの分析、「亀の目」からの分析
 4―5 職業移行とTEMの適用 「専門家になること」の経験の研究
 4―6 発達的な文脈と径路 ブラジルにおける発達的移行に関するTEM研究の動向

5章−TEAの布置をリフレクションする
 5―1 システム論とTEA システム論としての独自性
 5―2 家族療法とTEA 家族療法にTEAを生かす
 5―3 応用行動分析学とTEA 人を理解する枠組みとして
 5―4 「未完の未来」を創造する媒介物 「異時間のゾーン」と活動理論(その1)
 5―5 分岐を「交差」として捉え直す 「異時間のゾーン」と活動理論(その2)
 5―6 ライフコースとTEA 経験のプロセスを可視化する

6章−TEAと接点のある研究法
 6―1 ケースフォーミュレーションを考える TEAがもたらすもの
 6―2 クオリティ・オブ・ライフに接近する 時間を捨象しない人生径路の記述と包括体系的な変容
 6―3 混合研究法とTEA 組み合せのシナジー効果

あとがき
索引
装幀=加藤光太郎


TEA 理論編 まえがき

 複線径路等至性モデル(TEM)という新しい質的研究法が提案されて10年が経過した。本書『ワードマップ TEA 理論編』と同時刊行されるその姉妹本『ワードマップ TEA 実践編』には、TEMが複線径路等至性アプローチ(TEA)として発達してきた10年間が集約されている。2冊の『ワードマップ TEA』では、国内外を含め40名を越える研究者や実務家に執筆していただいた。このことは、TEAがこの10年間に、理論的にも方法論的にも大きく進展し、また、研究の営みのなかで日々新たに概念や考え方が発展してきたことの証明でもある。その飛躍的な発展は、TEAの多様性と濃厚な議論展開を前に、出版社が分冊化を英断してしまったほどである(新曜社さま、ありがとうございます)。それは編者にとってもうれしい悲鳴であったが、若干泣きたい。

 このような経緯で『ワードマップ TEA』は【理論編】と【実践編】が一体として構成されており、【理論編】では複線径路等至性アプローチ(TEA)の根幹となる理論と方法論の枠組みが説明されている。

 第T部「TEAの基本と理論的背景」では、TEA研究を先導してきた研究者がTEAの背景にある基本的な考え方や概念について、これまでの展開を凝縮させつつわかりやすく解説している。第1章では、TEAという文化心理学の新しい方法論の体系について、時間の扱い方やシステムという見方、質的研究における布置などといった観点から論じられている。そして、第2章では、TEMの基本的な概念の解説をもとに、概念ツールを介した分析のヒントが述べられている。

 続く第U部「TEAのメソドロジー」では、他の質的研究法からみたTEAや未来的展望に基づくTEAの応用可能性に関する議論が展開されている。第3章では、気鋭の理論研究者諸賢からTEMおよびTEAのもつ可能性とその限界についての論評をしていただいた。第4章では、TEAにかかわる海外研究者の新たな研究実践が、サトウタツヤ・滑田明暢による監訳のもとで紹介されている。TEAのグローバルな展開にも触れていただけるだろう。第5章では、TEAの特徴であるプロセスの把握やオープンシステムに基づく人間の理解に焦点をあて、類似する研究実践に従事する執筆者により、あらためてTEAの位置づけが明らかにされている。そして、第6章では、臨床的実践と質的研究法、ないしは、質的研究法と量的研究法のあいだを往来する研究に従事する研究者によって、これからのTEAの応用可能性について言及されている。

 【理論編】では、TEAとTEAにまつわる概念をキーワードに、研究者の多種多様な視点から―極めて個人的な視点を含めて―、TEAについて議論されている。これは、TEAがオープンな視点から、さまざまな理論や方法論、認識論、研究実践、研究者自身とのつながりのうえに発展してきたアプローチであることを如実に示しており、またTEAの発達プロセスをTEAとして捉えた先駆者たちの実践でもある。したがって、【理論編】を読むと、「いったいTEAとは何なのか」という疑問が改めて浮かぶかもしれない。しかし、それでよいのである。

 TEAを簡潔に述べるならば、個人の人生径路を可視化する研究法や人間の様態をオープンシステムに基づき記述するための分析ツールであり、個人の実存にアプローチするための文化心理学的な理論とも言える。あるいは、日本から発信する質的研究法のひとつと言うこともできる。どれもTEAについて正しく述べており、どれもが等至点となりえるだろう。しかしいずれの見方も、TEAのすべてを表してはいない。

 TEAにおける等至点は、いま―ここにいる研究者の実践とともに、ZOF(Zone of Finality:等至点の幅)であり続け、常に複数の等至点を設定することが可能である。だから、複数ある等至点のなかのひとつを設定するのは読み手である「あなた」でなくてはならない。TEAとは何かという疑問は、「TEAの等至点はどこか」というあらたな問いを発生させ、きっとあなたを新しい研究活動へと誘ってくれるだろう。本書のなかでもとりわけ心惹かれる箇所をみつけ、そこを等至点と設定してみよう。それにより、あなたの研究活動はTEAと融合し、また新たな局面を迎えるだろう。興味ある議論を追及してもよいし、自分なりにカスタマイズしてもよい。

 そして姉妹本【実践編】では、TEAを実際に使用する方々のために、どのように分析ツールとして使用すればよいのかが、興味深い研究の数々とともに紹介されている。TEAを使いたいという方はぜひ、本書【理論編】とあわせて【実践編】をご一読いただきたい。

 私たちは本書ならびにTEAが、あなたの研究活動の促進的記号として機能することを願っている。10年後には、TEAに関する新たな未来への展望が拡がり、また新たな概念や理論が、―等至点でさえも―発達しているだろう。そのときは、あなたもまたTEAの発達プロセスの一部として、ひとつの記号として、このつながりに参画していることを望んでいる。  

  2015年2月
                                 福田茉莉