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中村桂子 編/JT生命誌研究館発行

ひらく
――生命誌年刊号 Vol.77-80


A5判変型並製210頁

定価:本体2300円+税

発売日 15.1.15

ISBN 978-4-7885-1419-5




◆「生きているってどういうこと?」を考える◆

生命の歴史を読み解き、「生きる」を考える生命誌の世界観。研究館の活動二十年の節目となる今号も、日常に「ひらく」知を求め、いのちの本質に迫ります。好評の編者による対談では思想家の中沢新一氏や、人類拡散の行程を旅した関野吉晴氏、日本語史の山口仲美氏が登場。科学技術文明以前に存在した豊かさに目を向けます。また、利根川進氏らが日本の生命科学の基礎を築くまでの道のりを語り、気鋭の研究者たちのリサーチも充実。新しい未来に向けて、一層求められる生命誌からのメッセージです。コデックス装、函入、DVD付。

ひらく 目次

ひらく はじめに










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ひらく 目次

はじめに

Talk 語り合いを通して

◆多彩な暮らしが織りなす世界 関野吉晴×中村桂子

◆名付ける科学と語る科学 中沢新一×中村桂子

◆歴史と関係の中で変わる言葉と生きもの 山口仲美×中村桂子


Research 研究を通して

◆脳の性差をつくるしくみを探る
   遺伝子が司る性行動 伊藤弘樹

◆水圏生態系を支えるミクロな食物連鎖
   水中のクロロフィルはどこへ? 柏山祐一郎

◆細胞膜の過剰生産が起こす細胞分裂
   原子生命体の分裂機構に迫る 川合良和

◆尾を非自己と見なすカエルの免疫系
   おたまじゃくしの尾が消えるしくみ 井筒ゆみ


Scientist library 人を通して

◆転写制御によって開かれる発生のプログラムを探して 近藤寿人

◆分子、生体、人間、そして創薬へ  成宮 周

◆生命を分子の言葉で語るために 利根川進


あとがき

生命誌ジャーナル掲載号一覧


ひらく はじめに

「生命誌の扉をひらく ? 科学に拠って科学を超える」。一九九〇年に出したこの本に生命誌研究館への想いを綴りました。実際に、岡田節人先生を館長とする活動が始まったのが一九九三年でしたので、二〇周年になりました。二〇一四年三月一日の記念の催しにあたり、まとめた活動記録を付録にしましたのでごらん下さい。幸い「生命誌の扉をひらく」に書いた思いは、館の仲間の力で着実に進みました。今、二〇年という時間の重みを噛みしめています。

 そこで、次の扉をひらくための活動を始めようと、今年の動詞は「ひらく」にしました。「生命誌」という知、「研究館」という場の本質を変えようとは思いません。けれども、この二〇年間に科学のありようも社会も大きく変わりましたので、それを踏まえて、「生命誌」をより高度に練り上げる新しい一歩を踏み出す気持です。連続性を大切にしながら新しい扉を開きたいと思います。

 研究では、ゲノム解析が進み、データの山ができています。生命科学研究の中心は医学になりましたので、最も多いのはヒトゲノムのデータですが、線虫・ホヤ・カイコなどさまざまな生きもののゲノムも解析され、今では約一万種のゲノムがわかっています。これらを比較し、遺伝子のはたらきを解明すればゲノムが「生きている」を支える全体像が見えて来るのではないか。そう期待していますが、現実はなかなか厳しいのです。ヴェールの向うで誘いをかけることを楽しむのが自然なのですね。でももう一歩本質に近づきたいものです。

 生命誌を応援して下さるお一人だったまど・みちおさんが、今年一〇四歳で逝かれました。まどさんの「百歳日記」という御著書に「世の中に『?』と『!』と両方あればほかにはもう何もいらん」という言葉があります。最も魅力的な?と!を与えてくれるのは生きものです。まだ分からないところだらけとはいえ、機械とは異なる特徴が見えてきています。ですから、機械論でなく生命論を基にした世界観をもち、人間はもちろん、さまざまなが生きものたちが思いきり生きられる社会をつくりたいものです。共通性を持ちながら多様であるという生きものの特徴を生かす社会へ向けて、興味深い研究や魅力的な人との出会いを楽しみ、本質探しを続けていきます。新しい社会へ向けての扉がひらくことを信じて。