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エリン・オリーヴァー・キーン 著/山元隆春・吉田新一郎 訳

理解するってどういうこと?
――「わかる」ための方法と「わかる」ことで得られる宝物


A5判並製448頁

定価:本体2200円+税

発売日 14.10.1

ISBN 978-4-7885-1409-6




◆子どもたちに理解の仕方を教える具体的方法とエピソード
 「望みさえすれば、誰でも深く理解することができ、知的な生活を送ることができる。」この本のメッセージです。単なるスローガンではありません。本当にそうであることを、実践によって実証し、そのための方法を詳細に述べた本です。子どもたちが優れた読み手、書き手になるために教師はどのようにはたらきかければよいのか、その際に重要なことは何か、効果的な方法とはどのようなものかを明快に、そして誰もが実行できるように丁寧に述べています。教えることがあまりに多く、掘り下げて教える時間なんてとてもない、と感じている教師にこそ、読んでいただきたい本です。いや、教師にとどまりません。本書は、ものごとを深く理解することの喜びに思いをはせるすべての人に宛てた、熱烈なメッセージです。

理解するってどういうこと? 目次

理解するってどういうこと? はじめに

ためし読み

◆書評
2014年11月、書標

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理解するってどういうこと? 目次

はじめに

第1章 理解について考え直す
ジャミカの物語
理解することと知的発達
自分の知的なルーツを思い出すこと、より多くのことを望むこと
厄介な現状
理解する過程を明らかにする
理解するとはどういうことか?
高いレベルの期待と高いレベルの理解をどのように捉え、そして教えていくか?
読み・書きを学ぶときにもっとも大切なことは何か?
子どもたちや同僚たちの知的で好奇心にあふれたリーダーとして、私たちは日々の生活をどんな形で送ることができるか?
本書を読む際のヒント

第2章 私たちの頭のなか、生活のなかの理解を探る
質問からモデルへ
理解の種類とその成果モデル
読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素モデル
ワークショップ・モデル
これから述べていくこと

第3章 理解に駆られて
1 よきメンター─ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
2 理解の種類─熱烈な学び
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素
    ─熱烈な学びの状況をつくること
 ワークショップ・モデル
 自立心、探究心、協調性のある教室をつくり出す
4 頭のなかでじっくり考える─熱烈な学び

第4章 アイディアをじっくり考える
1 よきメンター─エドワード・ホッパー
2 理解の種類─沈黙を使う、深く耳をすます
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素
    ─自立心、探究心、協調性のある教室をつくり出す
4 頭のなかでじっくり考える

第5章 もがくことを味わい楽しむ
1 よきメンター─レイノルズ・プライス
2 理解の種類─もがくことを味わい楽しむ
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素
    ─大切なことのために時間を使う
表面の認識方法
深い認識方法
4 頭のなかでじっくり考える

第6章 理解のルネサンス
1 よきメンター─ルネサンス期の画家たちと思想家たち
2 理解の種類─ルネサンスの思考
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素─作品とジャンルの多様性
 多様なジャンルの学習
 レベルの多様性
4 頭のなかでじっくり考える

第7章 変わり続けること以上に確実なことはない
1 よきメンター─パブロ・ネルーダ
2 理解の種類─私たちの思考を変化させること
 理解のための方法─思考を変化させ修正し、
  新たな理解を生み出すためのツール
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素─作品構造
 さまざまな作品構造
4 頭のなかでじっくり考える

第8章 すばらしい対話
1 よきメンター─マティスとピカソ
2 理解の種類─夢中で対話すること
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素
    ─話し合いを少しずつ変えていくこと
 熱烈な学びと子どもたちと話すための原則に焦点を当てながら
  行われた「質問する」のミニ・レッスン
4 頭のなかでじっくり考える

第9章 感じるために、記憶するために、理解するために
1 よきメンター─エドウィージ・ダンティカ
2 理解の種類─感情と記憶
3 読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素─理解のさまざまな成果
4 頭のなかでじっくり考える

訳者あとがき

資料A 理解するための方法とは
資料B 大切なことは何か?
     ─幼稚園から高校3年生までの読み・書き内容
資料C 理解することを教えるときに効果的な方法
資料D リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップを
      成功させる条件
資料E 小学校学習指導要領国語科「読むこと」と
      リーディング・ワークショップとの比較
資料F 小学校学習指導要領国語科「書くこと」と
      ライティング・ワークショップとの比較
資料G 読書感想文に代わる方法─子どもたちが読むときに考えたことを
      記録し、共有する多様な方法
資料H 優れた学び手が使いこなしている思考法
資料I 話し言葉を教える/学ぶときの最善の方法
資料J 話し言葉を教える/学ぶときのチェックリスト

文 献
索 引


理解するってどういうこと? はじめに

  書く代わりにやるべきことなら、私にはいくらでも見つけられます。たとえば、たまった洗濯物、浴室のペンキの塗り替え、返信しなければならないメール書き、間近に迫っている講演やワークショップの準備をすることなどです。でも、ひとたび机に向かって座ると─今しているように、BGMをかけ、12月の日差しが雪に映えて、私の小さな書斎に射し込んでいるとき─私の心の声がキーボードをたたく指を通して語る身体感覚は、本当に心地よいものです。書くアイディアが出てくるのに、それほどの時間はかかりません。腰を下ろしたらすぐに、指が動き始めます。ただ、座ればよいのです・・・。

 私の辛抱強い友人で、編集者で、メンターでもあるトム・ニューカークは、ニュー・ハンプシャー大学の国語学教授で、教師のための重要な何冊もの著作(そのなかには『男の子らしさの誤解』2002も含まれています)の著者ですが、貧乏くじを引いて、この本の構想から出版まで、指南役をすることになりました。トムは、私がスーザン・ズィマーマンと『思考のモザイク』を書いたときも、私たちと一緒に仕事をしてくれました。私は彼の判断を信頼していますし、彼の仕事を尊敬しています。そして彼の著作の大ファンなので、また一緒にできるんだとワクワクしました。でも、彼はどういうことに巻き込まれたのか、わかっていなかったと思います。

 トムがデンバーに来て、地域の教師たちと一緒に仕事をしたある日の午後、私は彼に街を案内しました。その道すがら、私は『思考のモザイク』がとても成功したことにどんなにびっくりしたか、話したのです。ふた桁(つまり、10冊以上!)も売れてくれたらいいと願っていたこと、そして、必要なら父に頼んで5冊か6冊は買ってもらえるかなと考えていたことを話しました。やがて二冊目の本を書くにあたって私が感じている困難に話題が移ったときのやりとりは、決して、絶対に、忘れられないでしょう。「いい?ちょっとジョン・エルウェイ(アメリカン・フットボールのスーパースター)みたいに感じるのよ。彼はスーパーボウルで勝った後、引退するかどうか決めなければならなかったでしょう?頂点にいるときにやめるべきじゃない?『思考のモザイク』は確かに成功したわ。でもたぶんあれは、素人のまぐれ当たりだったのよ。」  二冊目の本を書き始めるにあたってとても悩んでいる理由を説明する、またとない喩え話をしたと思ったのですが、彼はただはじけるような大笑いをするだけでした。車の中、私の隣のシートで身をよじるようにして、はぁはぁ喘ぎながら笑い、その間に何か言葉をさがしているようでした。

 「ジョン・エルウェイ?ジョン・エルウェイだって?」彼が窒息でもしやしないか、何かの発作ではないかと、心配になりました。「自分とジョン・エルウェイを比べるなんて、ちょっとずうずうしくないかい?」こう言うと、トムはいっそう甲高い声で笑いました。「きみは自分がジョン・エルウェイだと思っているのかい?今までに聞いたこともないおもしろい話だよ。深刻に考えすぎだよ、エリン。ジョン・エルウェイときたかぁ。うわっはっは。」トムは自分のお気に入りのスポーツを真剣に捉えています。「きみは一冊本を書くことについて話しているんであって、スーパーボウルに勝つことについて話しているわけじゃないんだぞ!」後は、響き渡る笑い声。

 ときには、小さな謙遜が、びっくりする結果を生みます。実のところ、トムは本書を先に進めるために、考えつくかぎりのやり方で私と仕事をしようとしていたのです。つまり、書くのはとても骨の折れることだということをよく知っていたのです。多くの作家たちがそうであるように、私も書いている間、親しい同僚たち以外の人々にとってそのアイディアが有益なのかどうか、わかりません。本書では、ほとんどの章の最初に画家や作家たちのエピソードを使っていますが、それに読者が興味をもってくれるかどうか、教師たちが子どもを指導する際に最も重要なことに焦点を合わせるのに役立つ「主要な構成要素」の明快なモデルを描くことができるかどうか、思い悩んでいました。なぜ単刀直入に教室での応用に入らないのだろうかといらいらする読者の姿を想像して、まんじりともしない夜もありました。指導要領やテストのために教科書をカバーしなければならないため、子どもたちと限界まで理解を深める時間などないと教師たちが思ってしまうのではないかとも悩んでいました。しっかりとした理解よりもテストの点数に価値を置くように思われるこの国で、理解するとはどういうことかについて子どもたちといっしょに語り合うことに意義があるのかどうか、わかりかねていたのです。この本に本当に存在理由があるのかさえ疑問に思えるのでした。

 でも、悩むことには慣れっこです。私たちが『思考のモザイク』を書いていたときにも、同じような悩みを持っていましたし、最終的にはそうした悩みが根も葉もないということがわかりましたから。この十年ほどのあいだ、多くの教師たちが『思考のモザイク』で私たちが提示したアプローチを活用してくれただけでなく、それらを巧みに、そして創造的に応用してくれました。読み手が理解するための7つの方法(以下、「7つの方法」ないし「理解するための方法」と略)を子どもたちに教えることで、それほど多くの学習が可能になるとはまったく想像していませんでした。教師たちは一つひとつの方法に、私たちが考えていなかったような側面があることを発見し、7つの方法をどのような順番で教えたらいいかをさまざまに試し、そして特定の方法を教えるのにふさわしいタイミングを見出しました。さらに、子どもたちに方法について明確に説明する新しい言い方を考え出したり、子どもたちが考えたこと(=理解していること)を捉えて記録する方法を開発したり、7つの方法について考えたことを声に出して言うことが巧みにできるようにする方法まで見出したのです。全国のたくさんの教師たちが、学会や出版物やメーリング・リストや校内の研究会を通して、思慮に富んだ刺激的な議論に参加しました。国際読書学会の今年のプログラムを改めて見直してみると、理解するための方法に関するセッションが20以上もあるのです。7つの方法を理解し、それを実践に移すために多くの教師たちが注ぎ込んできたエネルギーと創造性と知性は、ひとつの大きなうねりを作り出してきたわけですが、私はそれを畏敬と驚嘆の念をもって見守ってきました。

 そして忘れてならないのは、子どもたちの学びについて耳にしたさまざまな物語のことです。十年近くにわたって、ほぼ毎週、何人もの教師たちが、子どもたちが読んだ本についてしっかりと考え発見したことや、本や文章を通して子どもたちが学んでいるさまざまな概念がいかにすばらしいものであるかについて、情報を提供してくれています。より深いレベルの理解を獲得するために7つの方法を活用することで、就学前の子どもたちから大学生に至るまで、以前にはまったく関心に入っていなかった細部やテーマを理解することができるようになったのです。大学入学の論文でより説得力のある文章を書いたり、他の子どもたちとの話し合いに生き生きと取り組んだり、他の子どもたちが自分の解釈を考え直すきっかけとなるような新たな視点を分かち合うために、子どもたちは7つの方法を使いこなしているのです。この国の子どもたちはもちろん、海外の子どもたちも、ときには初めて、教師の解釈や読解用の虎の巻に頼るのではなくて、自分自身で意味をつくり出す楽しさを経験したのです。そうするなかで、学び手の自立に貢献することがどれほど満足のいくものか、「読解」のためのうんざりするほどたくさんの質問を思い出して、繰り返し答えることよりも、子どもたちに自分で考えるように教えることが、どれほど実りのあることなのか、ということを子どもたちは教師たちに示しました。私は、子どもたちにそなわったはかりしれない力を学びました。子どもたちは私を涙ぐませ、笑わせ、そして衝撃をもたらしたのです。そして、燃え尽きる一歩手前にある教師たちの心に再び火をともしたのです。子どもたちは私たちに教えることの理由を思い出させてくれました。あれこれと思い悩むことなどなかったのではないかと思います。

(「はじめに」より抜粋)