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川島大輔 著

自死で大切な人を失ったあなたへの ナラティヴ・ワークブック
――


B5判並製160頁

定価:本体1800円+税

発売日 14.7.1

ISBN 978-4-7885-1392-1




◆自死遺族への支援から生まれた本
 自死によってかけがえのない人を失うという経験は、遺された人に大きな影響を及ぼします。死別後に経験するさまざまな感情や思いによって一変してしまった世界に直面します。身近な人を自死で亡くしたことがトラウマ的な経験となって、なかなか抜け出せないことも少なくありません。さらに家族に対する社会的な偏見の影響も見過ごせません。本書は、自死を取り巻くこうした心理的・社会的状況を踏まえ、大切な人を自死で失った方が、その人らしいやり方とペースで故人や自分自身を見つめなおし、語りなおすことによって、再び自分自身の人生を調節できる感覚を発達させるためのワークブックです。著者は中京大学心理学部准教授、長年自殺予防に携わり、死生学を研究しています。

目次

あとがき

ためし読み
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自死で大切な人を失ったあなたへのナラティヴ・ワークブック 目次

はじめに

第1部 ワーク編

序章 グリーフという旅に出る前に
1.私のプロフィール、安全な場所の確認
2.マップの確認─木のイメージ

一章 なんとかやっている自分を称える─世界の学びなおし(1)
1.苦痛耐性スキル─苦手な人や場所、時への対処方略
2.スマイルリスト

二章 喪失を外在化する─自己の学びなおし(1)
1.グリーフマップ
2.喪失のスケッチ
3.喪失の影響地図づくり─今を見つめて、これからの未来をつくる

三章 儀 式─故人との関係の学びなおし(1)
1.儀式を企画する
2.故人の生きた歴史を探訪する

四章 故人との関係性を紡ぎなおす─故人との関係の学びなおし(2)
1.故人のプロフィール
2.亡くなった、大切な人に手紙を書く
3.故人との関係イメージを絵に描く
4.故人の伝記をつくる─周囲とともにつくる故人の物語

五章 新たなストーリーを生きるためのコミュニティを創造する
    ─世界の学びなおし(2)
1.私を支えるチームメンバーシップの確認
  ─あなたを応援する人々を確認しよう!
2.自助・支援グループに参加してみる
3.社会に働きかける仕事に取り組む

六章 自分の人生を語りなおす─自己の学びなおし(2)
1.私の喪失物語
2.ライフライン
3.自伝の作成

終章 旅の途上で
1.旅の途上で─写真で締めくくる、ひとまずの旅の終わり
2.次の旅に向けて

第2部 解説編

1.グリーフとは何か
(1)本書におけるグリーフの意味づけ
(2)グリーフのプロセスは段階か、局面か、課題か、
   それとも学びなおしか
(3)グリーフプロセスについて
(4)死別後に起こりうる心理的・身体的反応について
2.本書の理論的・学術的背景について
3.本書の構成について
4.本書の読者は誰か
5.ワークについての解説

ワークブック使用のためのQ&A
あとがき
引用文献
装幀=荒川伸生


自死で大切な人を失ったあなたへのナラティヴ・ワークブック あとがき

 人はなぜ生まれ、死ぬのでしょうか。そして遺された私たちは、その後の世界をどのように生きていけば良いのでしょうか。

 物心ついた頃から、私の頭を離れないこの永遠の問いは、今では私の研究関心の中核を占めています。この問いに関心を寄せる理由の一つには、これまでの死別体験が深く関わっているように思います。

 亡くなった人に触れたときの手の感覚や、葬儀での辛く重苦しい光景、ふとした時に襲ってくる「ああ、もういないんだ」という強烈な感覚は、大切な人を失った経験のある人であれば誰でも持っているものかもしれません。

 しかしそうした個人的経験以上に、これまで複数の自死遺族の方々から伺ってきた、在りし日の故人の姿や遺されたものとしての苦悶や思いは、複数の声となって私の心に留まり続けています。それは遺された人の声であると同時に、不在の他者、つまり死者の声でもあります。そして、それらの声は私に「それを聴いて、あなたは一体どうするのか」と問いかけてきているように思うのです。もっと言えば、応答を求める死者の声が私に聞こえるのです。本書は、こうした声への一つの応答を、私なりにあらわそうとしたものです。

 本書の構想を思いついたのは、これまでの調査研究や自死遺族の方々との交流の中から、遺された人本人にとって直接届くものが少ないのではないか、と疑問を抱いたことにはじまります。私はこれまで自死遺族に関わる専門家向けのガイドライン作成や、専門家向けの研修会、サポートグループの活動評価などに関わってきましたが、それらはみな自死遺族に「関わる人」に向けられたものでした。もちろん、これらの研究が大切であることは間違いありませんが、それと同時に、遺された方本人に届く何かが必要ではないかと思い至ったのです。また同時に、自死はもとより、死別を経験した人が取り組むワークブックが日本ではほとんどないことにも気がつきました。こうした経緯から、そして上述の応答として、本書を作成しました。

 本書の作成にあたっては多くの方から様々なアドバイスや示唆をいただきました。はじめに独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の川野健治先生とメンフィス大学のロバート・A・ニーマイアー先生には、ワークブックの構想段階から有意義なアドバイスと情報を提供していただきました。ジョン・J・ジョーダン先生、ウィリアム・フィーゲルマン先生からは温かい励ましの言葉をいただきました。ダイアナ・サンズ先生とはワークブックのコンテンツや研究実践の交流を通して、貴重な示唆をいただきました。畿央大学(当時)の故良原誠崇先生には、ワークブックの構想や理論的背景、コンテンツの案について議論させていただき、多くの示唆をいただきました。

 またルーテル学院大学の石井千賀子先生、グリーフ・カウンセリング・センターの鈴木剛子先生、新潟県立大学の勝又陽太郎先生、滋賀県立大学の松嶋秀明先生、東京大学の橋本望先生には、ワークブックへの示唆に富んだコメントをいただきました。記してお礼申し上げます。

 さらにNPO 法人 全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子氏、南部節子氏、秋田整氏からは、本ワークブックに対する忌憚のないご意見を頂戴しました。そしてここにはお名前を挙げることができない複数の自死遺族の方々の貴重な語りは、本書をまとめる上で欠くことのできないものでした。この場を借りて、心よりお礼申し上げます。

 また本書を作成するにあたり、JSDP科研費23730689の助成をいただきました。新曜社の塩浦 氏には、本書の趣旨をご理解いただき、出版の機会と丁寧なサポートをいただきました。

 グリーフは終わることのない旅です。このワークブックとともに歩んできたグリーフのプロセスは、ここでひとまずの区切りを迎えます。しかしそれは次の旅の出発に他なりません。

 ワークに再び取り組むことで、次の旅に出る方もいるでしょう。また別の形で自分自身のグリーフに向き合う方もいるでしょう。数年後に、ふとこのワークを思い出して取り組む方もいるでしょう。

 この旅の道程が、あなたが次の旅に向かうための糧となれば、望外の喜びです。