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宮田久美子 著

暮らしの中の色彩学入門
――色と人間の感性


A5判並製176頁+カラー8頁

定価:本体2200円+税

発売日 14.6.15

ISBN 978-4-7885-1391-4

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◆色と遊ぶためのテキスト!

光の波長のごく一部が、人間にはさまざまな色となって知覚されます。色彩学は物理化学・生理学などの自然科学と,心理学・デザイン学・芸術学などの人文科学が関わる学際的な学問ですが、それだけに奥深い魅力をもっています。本書は、色について考える際に不可欠な光学的,心理学的な基礎知識を平易に解説したうえで、色が喚起する感情、色彩の調和と配色、生活環境と色彩、衣服と色彩など、暮らしの中での色と感性の関係について学ぶ、新しい色彩学入門です。心理学、デザイン、服飾、建築等々、色彩に関係する幅広い読者にお勧めください。著者は常磐短期大学教授、武蔵野美術大学非常勤講師。

暮らしの中の色彩学入門 目次

暮らしの中の色彩学入門 まえがき

ためし読み
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暮らしの中の色彩学入門 目次

まえがき

第1章 色とはどのようなものか
1-1 色とは
1-2 光とは
1-3 眼の構造とはたらき
1-4 色覚について
【参考文献】

第2章 色はどのように表すか
2-1 色名による色の表し方
2-1-1 慣用色名
2-1-2 系統色名
2-2 表色系による色の表し方
2-2-1 マンセル表色系
2-2-2 オストワルト表色系
2-2-3 ナチュラルカラーシステム(NCS)
2-2-4 PCCS(日本色研配色体系)
2-2-5 XYZ表色系
【参考文献】

第3章 色の見え方はどう変わるか
3-1 混 色
3-2 主観色
3-3 色の残像
3-4 暗順応・明順応
3-5 色の同化効果
3-6 色対比
3-7 視認性
3-8 色の面積効果
3-9 色と距離感
3-10 色と大きさ感
【参考文献】

第4章 色彩からどのような感情をもつか
4-1 色名から連想される語―具象語・抽象語
4-2 象徴語からの連想色
4-3 ことばからの連想色
4-4 単色の感情効果
4-5 配色の感情効果
【参考文献】

第5章 配色の考え方と色彩調和論の流れ
5-1 配色の考え方と主な配色技法
5-2 欧米の色彩調和論の流れ
5-3 日本の色彩調和論の流れ
【参考文献】

第6章 生活・環境と色彩
6-1 国旗の色と意味について
6-2 カラーユニバーサルデザインとは
6-3 建物室内と外部の色、スマーフ村
6-4 ファッション雑誌掲載にみる服の色、日常着の色
6-4-1 ファッション雑誌掲載にみる服の色
6-4-2 日常着の色
【参考文献】

第7章 日本文化史から衣服にあらわれた色をみる
7-1 古墳時代(古墳壁画より)
7-2 飛鳥・奈良時代
7-2-1 繧繝彩色
7-2-2 冠位十二階
7-2-3 高松塚古墳壁画
7-3 平安時代
7-3-1 代表的な色
7-3-2 位 色
7-3-3 かさねの色目
7-4 鎌倉時代
7-5 室町時代
7-6 安土桃山時代
7-7 江戸時代
7-7-1 代表的な色
7-7-2 四十八茶百鼠
7-8 現代(明治時代以降)
【参考文献】

資  料
資料1 慣用色名
資料2 色にまつわる諺と成句
資料3 歳時記

索  引
装幀=吉名 昌(はんぺんデザイン)


暮らしの中の色彩学入門 まえがき

色彩学は大きく分けて、物理化学、生理学などの自然科学的視点と、心理学、デザイン学、芸術学などの人文・社会科学的視点からの捉え方がある。このことからもわかるように色彩の研究は学際的で、そのすべてを扱おうとすると膨大な量になるが、一人の執筆者が扱える内容は極々限られている。さらには色彩関係の専門書、啓蒙書、テキストは、すでに大型書店店頭に多数並んでいる。そのような状況の中で、あえて本書を書こうと思い立ったのは、色と人間の感性のかかわりという視点から、色についてまとめてみたいと思ったからである。

まず、本書の構成上の特徴であるが、色について考える上で、ある程度の基本知識は不可欠である。そこで本書では、まず色の光学的、心理学的な基礎を平易に解説し、大学・短期大学生向けのテキスト・入門書、あるいは一般の方々向けの教養書として読んでいただけるよう配慮した。しかし本書の章立ては、次のように類書にない独自なものとなっている。

「第1章 色とはどのようなものか」、「第2章 色はどのように表すか」は、色の知識の導入部分であり、なぜ色は見えるのか、そして色を文字や言葉で表現するにはどのようにすればよいのかを扱う。次に「第3章 色の見え方はどう変わるか」は、この本の主題である、色と人間の感性とのかかわりを扱う最初の章となる。人が色を見るときの、色単独、または色相互の関係で生じるさまざまな現象を理解してほしい。「第4章 色彩からどのような感情をもつか」、「第5章 配色の考え方と色彩調和論の流れ」は、色と感性に関する本書の中心的な内容を扱っている。「第6章 生活・環境と色彩」は、生活環境という広範囲なテーマの中から、国旗の色と意味、カラーユニバーサルデザイン、建物室内と外部の色、ファッション雑誌にみる服の色、日常着の色、とごく一部の内容に限って述べた。「第7章 日本文化史から衣服にあらわれた色をみる」では、主に日本の古墳時代から明治時代までにあらわれた衣服の色について概観する。最後に巻末「資料」として、和色名と外来色名の慣用色名、色にまつわる諺と成句、日本の歳時記を載せたが、これらも読者にぜひ関心をもっていただきたい事項である。

このように、本書は色彩入門として独自の構成をもつが、内容においても基本事項を踏まえながらそれにとどまらず、従来の研究成果に加えて、可能な限り最新のトピックスも盛り込んだ。特に、本文中の第4、5章部分(色の感情効果、色彩調和)、そして第6章4節には、色の感情効果、色彩調和などについて調査研究を実施してきた著者の新規データをもとに、現時点での結果をまとめてある。しかるに、それらに関しては未だ研究途中であり、後年さらに成果を発表していけたらと願っている。

色の調査は調査条件の設定が難しく、条件が少し変わると結果が異なったりする。調査数がある程度多くないと何もいえないが、対象人数が多くなると同一条件下での実施が困難となり、データ数だけ多くても結果の信憑性が疑われることになりかねない。また、たとえば色票(色カード)を提示する調査では、色票の総数、そして選択した色の内容が結果に影響する。本書には、著者最多の色数(色票数126色)で調査した最新の内容を入れてある。

先行文献や他の専門書には研究成果の図表が多く掲載されているので、それらについては各原文献を参照していただくこととし、本書では極力再掲を避け、オリジナルなデータから導いた図表を可能な限り掲載した。しかし上述のように、色についての基本的事象は押さえてあるので、読者に考えていただく材料を提供したつもりである。

色彩に携わる人(特に研究者といわれる人)は、人間としておもしろみのない人が多いようだ、とある先人は語っていた。その範疇に入らないことを心掛け、人生を遊んでいきたいものである。ここで遊ぶとは、水戸第九代藩主徳川斉昭の直筆で、弘道館にある掛け軸、「游於藝」(芸に遊ぶ)の内容を意味する。その出典は論語の「文武にこりかたまらず、悠々と芸を究める」という意味であり、ここで藝とは、六芸すなわち、礼儀作法・音楽・弓術・馬術・習字・算数をさす。各人の成すべきこと(学業や仕事)を楽しみながら、自由な発想ができる境地と解釈できるであろうか。

自分の則を超えない範囲で書き上げた本書ではあるが、色彩のテキスト、教養書として読者のお役にたつだけでなく、本書を土台として、関心をもたれた事項についてさらに他文献にあたり色の知識を増やすとともに、色の豊かな世界に遊んでいただくことができれば幸いである。

本書には多くの参考文献を参照させていただいた。多くの先達に敬意を表するとともに、ここに深謝したい。記述は正確を期すよう努めたが、しかし著者の思い違いや説明不足の箇所などもあるかと思う。読者諸氏から本書の内容に関する疑問、質問、意見などを沢山お聞かせ願えれば幸いである。お気づきの点をぜひともご指摘いただきたく思っている。

最後に、恩師大山正先生、鈴木由紀生先生、椎名健先生のこれまでのご指導に深く感謝申し上げる。また、この本の刊行に際し、多大なご尽力を賜った新曜社塩浦社長はじめお世話になった関連諸氏に深謝したい。まさにこれらの方々のお骨折りにより本書が誕生した。

2014年春
宮田 久美子