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竹元秀樹 著

祭りと地方都市
――都市コミュニティ論の再興


A5判上製384頁

定価:本体5800円+税

発売日 14.4.20

ISBN 978-4-7885-1383-9




◆賑わいを生みだす地方の力◆

暗い話ばかりの地方をなんとかしたいと宮崎県都城(みやこのじょう)市を訪れた著者は、そこで毎夏繰り広げられる山車、神輿、踊り、お囃子、縁日などのをはじめ、祭りの賑わいに圧倒されます。六月灯、おかげ祭り、祇園様の三つの祭りの成り立ちとしくみから、外部の開発に破壊されずに残った旧い制度や資産や精神が、「遅れてきた特権」となって祭りを存続させ地方都市を活気づけていることを突き止めたのです。この分厚い事例調査から、脱産業化時代の都市コミュニティ再興と地域ガバナンスの理論化へ羽ばたいていきます。著者は法政大学講師、企業管理職から研究職に転じた異色の大型新人が書き下ろした堂々の大作です。

祭りと地方都市 目次

祭りと地方都市 あとがき

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祭りと地方都市 目次

序 章 本書の目的と方法
第1節 本書の問題認識
第2節 先行研究との対話
第3節 調査事例の選定
第4節 本書の構成

第1章 小盆地宇宙の地方都市
第1節 〝停滞型〟地方都市の外観
第2節 商業集積空間の位相
第3節 〝停滞型〟伝統消費型都市の基盤構造
第4節 城下町としての歴史的条件

第2章 地方都市型コミュニティ論からの示唆
第1節 「コミュニティ意識論」の提起
第2節 規範的方向性としての「開放的相互主義」
第3節 「遅れてきたことの特権」の仮説
第4節 二つの論理からみる地域社会の構図
第5節 二つの同一化潮流からみる位相

第3章 都市祝祭論へのアプローチ
第1節 都市祝祭研究の系譜
第2節 松平誠「都市祝祭論」の到達点
第3節 脱地縁的都市祝祭の継続性

第4章 近隣祭りの持続と変容―「六月灯」の事例分析
第1節 六月灯の特徴 
第2節 六月灯個別事例の変容過程
第3節 公民館制度と自治公民館の実相
第4節 「自治公民館」の今日的性格
第5節 現象的帰結の構造的基因

第5章 自発的な地域活動の成長要因―「おかげ祭り」の事例分析
第1節 おかげ祭りの祭事構成
第2節 おかげ祭りの運営主体
第3節 おかげ祭りの変遷
第4節 社会的な事実と社会的効果
第5節 現代地域社会における共同性の形成

第6章 伝統的都市祝祭の伝承―「祇園様」の事例分析
第1節 「祇園様」の特徴
第2節 「中町祇園祭」の実相
第3節 「上町祇園祭」の実相
第4節 鹿児島市「おぎおんさあ」(祇園祭)の変容
第5節 伝統の継承の意味

第7章 地縁的な共同性形成の論理
第1節 「脱埋め込み」と「再埋め込み」
第2節 共同性形成の規範的方向性
第3節 原的な問いに対する総括

補章 本書の提言と示唆
第1節 地域ガバナンス構築への提言
第2節 現代日本の都市社会学と都市コミュニティ論への示唆

参考文献
あとがき

 事項索引・人名索引  (vii)-(i)


         装幀 鈴木敬子(pagnigh magnigh)
         地図制作 谷崎スタジオ


祭りと地方都市 あとがき

 本書は、二〇一二年九月に法政大学より博士(政策科学)の学位を授与された論文「地域社会における地縁的な共同性形成の現代的解明」を、「二〇一三年度 法政大学大学院博士論文出版助成金対象」の採択を受けて刊行するものである。刊行にあたっては博士論文を全面的に加除訂正した。本書各章のもとになった論文は次の通りである。各論文とも加除訂正を施したので、初出通りのものはない。ここに記載のない章は博士論文において書き下ろした。なお、本書の中の関連する箇所に一部同一の記述があるが、強調のための反復であることをお断りしておく。

第2章、第3章、第7章

「地域社会における地縁的な共同性形成の現代的解明」『法政大学大学院紀要』第六四号 二〇一〇年

第4章

「地方都市における近隣祭りの持続と変容」『法政大学大学院紀要』第六七号 二〇一一年

第5章

「自発的地域活動の生起・成長要因と現代的意義」『地域社会学会年報』第二〇集 二〇〇八年

 本書の舞台となった都城市は私の故郷である。とはいっても小学校までしか暮らしていない。中学・高校は宮崎市の学校に進学し、大学は東京へ出て東京で就職し、それ以来ずっと東京・横浜で暮らし今日に至っている。したがって、自分の故郷と三五年ぶりに研究の対象として向き合うことになったわけだが、フィールドワークを進めていくうちにまず気づいたことは、いかにそれまでの地域特性の理解が表面的であったかということである。

 地域社会の出来事を研究の対象とするからには、まずはその出来事に影響を与える地域特性の正確な把握が要請される。本書における三つの事例は、すべて都城市で毎年繰り広げられる出来事である。それゆえに、第1章で都市の社会構造を明らかにする方法論の問題も含め、都城市の地域特性を空間的記述、統計的記述、歴史的記述の三側面から、できる限り分厚く記述することに注力した。とくに歴史的側面からの一貫性のある記述については、多くの資料の参照・比較を要したため苦戦を強いられたが、これらの記述により都城市の社会構造を明らかにすることについては、一応の目的は達成できたと考えている。しかし、それは市域内の内部要因(人口動態・産業構成・歴史的系譜など)の解明に限定されており、都城市の社会構造の形成に影響を与える外部要因の解明は必ずしも十分でない。

 この外部要因の解明分析の目指すところは、その地方都市を支えている広域的な外部構造との関係性を明らかにすることであろう。そこでは、地方都市がおかれている状況と市域外の外部構造とを結びつける理論装置の追求がなされなければならない。本書の三つの祝祭活動は、それぞれに内在的な継続要因を保有していた。しかし、そもそも祝祭が生起・継続しやすい地域特性を都城市がもつとしたら、内在的な要因の解明だけで十分であろうか。また、他の地方都市で同様の(祝祭的)地域活動の研究をする場合に、都城市がおかれている外部構造を明らかにしておくことが、都市間比較を可能にするためには必要である。本書が先行研究としての資格を得るためには、その解明が要請されることは認識している。ただ、これは地域経済学や都市地理学の領域も要請される地域社会研究の性格を持っており、現時点で筆者にはその研究蓄積は十分でないため、今後の課題としたい。

 本書における事例分析や理論構築は、私の力だけで成しえたものではない。修士課程・博士後期課程を通じてのフィールドワークで、いろいろと教えていただいた地域の方々との合作であることは、言うまでのないことである。とくに本書で取り上げている三つの事例―「おかげ祭り」「六月灯」「祇園様」――の関係者の方々に実施したインタビューの録音データは、これまでも、そしてこれからも、私の大事な財産であることに変わりはない。この方たちから教わったことを分析し理論化を図り、それを社会に還元して、少しでも地域活動の生起・継続に寄与することが、この方々への恩返しになると考えている。まだまだ力不足との指摘を受けるかもしれないが、本書の刊行によって、少しはその責任が果たせたのではないかと思っている。

 刊行に際しては、大学院修士課程・博士後期課程を通じてご指導いただいた指導教官の中筋直哉教授、時間がないなかでご検討いただき出版を引き受けてくださった新曜社の塩浦暲社長・編集部の小田亜佐子氏、出版助成をいただいた法政大学、それから原稿の確認や写真の提供をいただいた都城市・鹿児島市の方々に大変お世話になった。とくに新曜社の小田氏には、本の出版に関して数々のアドバイスをいただいた。改めて御礼申し上げたい。

 私の研究者としてのスタートは四七歳である。大学卒業後、金融関係の民間会社に勤務し、マーケティング業務を中心に様々な職務を経験した。四〇代半ば頃から、社会貢献に直接つながることに関わりたいという思いに駆られ、地域政策を学ぶために法政大学大学院社会科学研究科政策科学専攻修士課程の門をたたいた。このときから中筋先生には、一〇歳年上の変わり者の私を、今日に至るまでの約一〇年間一貫して懇切丁寧にご指導いただいた。

 「地方都市を良くしたいという、熱い気持ちはどこへいったのですか」。

 この一喝は、私が修士課程二年生のとき、深い理解なくして統計学の手法を使い、稚拙な地方都市の分類を行ったときの中筋先生の言葉である。現地での社会調査を重視する先生の研究スタンスからすれば、全く教えに反する研究手法であった。この言葉が、いまでも私の研究を支える座右の銘となっている。

 修士課程のとき、中筋先生の知識の広さと深さに驚嘆した。その知識を少しでも多く学び取りたく、博士後期課程のときに、岩手県安代町調査、熊本県あさぎり町・人吉市調査、広島県福山市調査など先生の社会調査に数回にわたり同行させていただいた。移動時の新幹線や車のなかが、私にとっては個別指導の研究室の空間へと早変わりして、そこでの先生との会話から多くのことを学んだ。今日まで導いてくださった先生の御恩に深く感謝を申し上げたい。

 博士論文の審査にあたっては、法政大学池田寛二教授、慶應義塾大学有末賢教授、中筋先生にご指導をたまわった。的確なご指摘や修正要求に対応することが、博士論文の質的向上につながったことはもちろんのこと、本書を刊行するうえでも大変参考になった。また自分の研究がどのような立ち位置にあって、どのような可能性が開かれているのかを客観的に認識する契機を提供いただいた。貴重なご指導をたまわり、改めて御礼申し上げたい。

 そのほか、大学院・学会・研究会などで、多くの先生から、博士論文を書くにあたってあるいは研究を進めていくうえで参考となる示唆を与えていただいた。このような示唆から得られた知見の積み重ねが、本書の刊行につながっていることは言うまでもないことである。一人一人のお名前をあげることは控えさせていただくが、この場をお借りして厚く感謝を申し述べたい。

 また、苦しい研究生活を乗り越えて何とか刊行まで漕ぎつけたのも、学生時代の友人、前勤務先の同僚、研究生活の苦楽を共にした大学院のゼミの仲間など、多くの知人の助言や激励があってのことである。向こう岸の見えない暗く深い川を渡りきる勇気を何回も与えてくれた。心より御礼を述べたい。

 最後になるが、約一〇年におよぶ研究生活を続けられたのは、何といっても家族、父母、兄姉、親戚の支えがあったからである。母は、小さい頃からやりたいことに対していつも挑戦をさせてくれた。そして達成するまで励ましてくれた。その母は今もういない。二〇〇九年に他界した。本書をみせることができないことが悔やまれてしようがない。そして、妻と三人の子供に感謝したい。この家族なくして、今の自分は存在しえない。本書は、やはり最も心配をかけた妻に捧げたい。

   二〇一四年二月