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斎藤清二・山田富秋・本山方子 編

インタビューという実践
――質的心理学フォーラム選書 1


四六判並製216頁

定価:本体1800円+税

発売日 14.4.21

ISBN 978-4-7885-1377-8

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◆良いインタビューとは?◆

日常の会話とインタビューを分けるものは何でしょうか? インタビューによって、何が可能となるのでしょうか? 本書は、質的研究の実践としてのインタビューとはどのようなものか、どのような困難があるか、インタビューをする人とされる人の関係はどのようなものかをめぐって、日頃インタビューを使用している研究者たちが交わした熱く、かつきわめて実践的な対話の記録です。質的心理学フォーラム選書は、日本質的心理学会の機関誌として2009年から刊行されている『質的心理学フォーラム』での、「執筆者と読者を巻き込む議論の場」から生まれた新シリーズです。第二巻は質的心理学研究の開拓者たちが集結する『物語りと共約幻想』。4月刊行予定です。

インタビューという実践 目次

インタビューという実践 はじめに

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インタビューという実践 目次

「質的心理学フォーラム選書」シリーズへの序文
はじめに――インタビューという実践     本山方子

1章 インタビューとフィールドワーク     山田富秋
はじめに 1
1 社会学的調査におけるインタビューの困難
2 対象者の生活世界とアクティヴ・インタビュー
3 フィールドにおけるインタビューの役割
4 結論――フィールドにおける詩的理解について

2章 インタビューと臨床実践――関係性と語りをめぐって     斎藤清二
はじめに
1 インタビューとは何か
2 臨床面接とは何か
3 臨床面接の構造と「関係」
4 臨床における物語面接再考

3章 「分からないことが分かる」ということ
    ――調査協力者への共感をめぐって     石川良子
はじめに
1 当事者の視点に立った研究の挫折
2 当事者への共感が孕む問題性
3 分からないことが分かる
4 おわりに――当事者の言葉を「翻訳」するということ

4章 知の創出と洗練――科学の実践としてのインタビュー     大森純子
はじめに
1 多様なインタビューの形態
2 1章と2章の共通点――インタビューの成立要件と実践の特性
3 語り・ナラティブの手法としてのインタビュー
4 実践と研究の関係
5 事象の存在と多面性に光を当てる概念
6 事象に埋もれた暗黙知を形式知へ
7 知の創出から洗練プロセスへ
8 科学の実践手段――インタビュー

5章 対話空間を作る――インタビュー実践としてのセラピー     森岡正芳
はじめに
1 関係性――インタビュー実践の基盤
2 ディスコースとしての面接
3 対話空間の構成
4 インタビューのなかのダイナミズム
5 応答的他者として

6章 開かれた対話としてのインタビュー      岡本依子
はじめに
1 インタビュー実践の概要
2 インタビューとはどのような場か
3 インタビュアーとインタビュイーの関係性
4 インタビュイーはだれに語っているか
5 当事者性と他者性

7章 インタビューにおける語りの扱いの相違
    ――ある女性の<非科学的>な語りをもとに     宮内 洋
はじめに
1 第一のタイプ
2 第二のタイプ
3 第三のタイプ
4 「フィールドワークを伴ったアクティブインタビュー法」とは何か
5 終わりに

8章 共有点と課題     斎藤清二・山田富秋
はじめに
1 相互行為としてのインタビューをめぐって
2 インタビューにおける協同構成論を超える
3 可変的な関係性に対する感受性――結びにかえて

9章 問題の再提起とリプライ――理解・共感・関係をめぐって
   他者の経験の「身体的理解」と「共感」     齊藤由香
 はじめに
 1 身体的理解
 2 共感の生まれるところ

   インタビューにおける語りの顕在化と潜在化
   ――語り手と聴き手の関係性によって
   見えてくる/見えなくなるもの     家島明彦
 はじめに
 1 インタビューにおける「経験共有幻想」
 2 「顕在化する語り」と「潜在化する語り」

   著者から     石川良子
   編者から     山田富秋・斎藤清二

あとがき
文  献 (1)

                         装釘=臼井新太郎
                         装画=やまもとゆか


インタビューという実践 はじめに

 日常の会話と、インタビューを分けるものは何だろうか。

 インタビューこそが、何かしら目的をもってなされる相互作用であり、その内容はある種の限定を伴うものだといえるだろうか。あるいは、状況や役割が設定されて行われるものなのだろうか。あるいは、覚知的かつ省察的な発話行為によるものなのか。

 日常会話と差異化して、インタビューのみに通用する特性をあげることは難しい。言い換えれば、インタビューとは、日常会話に劣らず、話者にとってアクティブで生産的な相互作用行為である。決して静的なやりとりなのではない。

 本書では、インタビューの自明性を問い、インタビューによって何が可能となり、何がどのように産み出されているのか、調査研究と臨床の両面から考えたい。

 例えば、インタビューに参加しているのは、話し手(協力者)と聞き手(調査者)なのか。二人の話し手ではないのか。調査者もまた、その場で話し手になり得るからこそ、聞くことの能動性が発揮されるのであり、応答責任を果たしているのではないか。

 はたまた、インタビューはどのような状況に埋め込まれているのか。問題解決の途にあるのか、社会的な問題が背景にあるのか、あるいは人々の暮らしそのものにかかわることなのか。インタビューの社会的文脈に着目すれば、エスノグラフィーとの境界はどこにあるといえるのか。

 さらに、インタビューで向かい合うのは、匿名の個人ではなく、名をもち、経験を重ねてきた人間同士である。その存在のかけがえのなさによってこそ可能な「物語の共同構成」がなされる。では、特定の二者による物語が時空を超えて、共有可能なのはなぜだろうか。

 「インタビュー」は、質的研究において、種々の場面で活用されるデータ収集の方法であり、研究者はインタビューという実践に臨む実践者である。研究者自身の経験であるにもかかわらず、その実践の内実や生成について、本質的な議論がこれまで十分に行われてきたとは言いがたい。例えば、調査研究におけるインタビューと臨床における面接とは何が異なるのか。インタビューで形成される関係性をどのように考えたらよいのか。一見、単純な問いのようであるが、いざ応えようとすれば、調査者や臨床家は自らの思想をさらし、それぞれの実践の特殊性を顕わにすることになるであろう。むしろ、そうした事態にこそ、インタビュー実践の、ひいては質的研究の芳醇さが顕れるともいえる。

 本書には、自らの経験や実践に果敢に向き合った論攷が集まっている。本書が契機となり、読者のみなさまによって、さらなる議論が呼び起こされることを願っている。