戻る

鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛 著

ワードマップ 現代形而上学
――分析哲学が問う、人・因果・存在の謎


四六判並製296頁

定価:本体2400円+税

発売日 14.2.21

ISBN 978-4-7885-1366-2

◆amazon.co.jpへ
cover

◆紀伊國屋書店Books Web へ

◆7ネットショッピングへ

◆世界には、なにが、どのようにあるのか◆

存在するあらゆるものを含む全体としての〈世界〉を捉え、その基礎を問う。こうした遠大な問題関心をもつ形而上学には、曖昧で迂遠な試みと批判される時代がありました。しかし近年にいたり、分析哲学が犀利に磨きあげた論理的手法を用いることで、大問題にもまっすぐ切り込み、明確な解答を与える学問として再び注目を集めています。人の同一性とは、因果性とはなにか、自由と決定論の衝突、そして個物と普遍といった古典的問題から、人工物の存在論など最新の問題まで、広大な世界の明晰かつ平易な地図となる入門書です。

ワードマップ 現代形而上学 目次

ワードマップ 現代形而上学 おわりに

ためし読み
Loading

ワードマップ 現代形而上学 目次

目 次
序章 現代形而上学とは何か
0―1 現代哲学の一分野としての形而上学
0―2 形而上学的問題
0―3 現代形而上学の成立とその特色
0―4 現代形而上学の世界へ

第1章 人の同一性
1―1 人の同一性の問題
1―2 同一性と変化
1―3 身体説と記憶交換の思考実験
1―4 心理説と複製の問題
1―5 人の同一性は重要か

第2章 自由と決定論
2―1 行為についての二つの見方
2―2 自由と決定論の衝突
 コラム 量子力学と決定論
2―3 両立論
2―4 非両立論

第3章 様相
3―1 可能世界
 コラム 事物様相と言表様相
3―2 可能主義と現実主義
3―3 本質
3―4 対応者
 コラム 可能的対象

第4章 因果性
4―1 ヒュームの影響
4―2 規則性分析
4―3 反事実条件的分析
 コラム 因果関係の形式的性質
4―4 普遍者の一事例としての因果関係
4―5 事実因果説

第5章 普遍
5―1 普遍者の実在をめぐる論争
 コラム 理論評価のための基準
5―2 抽象名辞による指示とパラフレーズ
5―3 普遍者にまつわる問題点
5―4 唯名論と質的同一性

第6章 個物
6―1 具体的個物の存在論的還元
6―2 普遍者の束説
6―3 基体説
6―4 トロープの束説

第7章 存在依存
7―1 存在依存の基本
7―2 依存関係のいくつかの下位区分
 コラム フッサールと存在依存
7―3 存在依存の定義に関する問題点とその解決策
7―4 必然性と本質
7―5 存在依存と付随性

第8章 人工物の存在論
8―1 人工物のあり方
8―2 伝統的カテゴリー体系の不十分さ
8―3 存在依存のきめ細かな区分
8―4 存在依存関係を用いたカテゴリーの個別化
8―5 伝統的なカテゴリー体系を超えて
 コラム インガルデンと現代

終章 形而上学のさらなる広がり
9―1 本書で主題的に扱わなかった形而上学の問題領域
9―2 形而上学と密接に関わる他の分野
おわりに
現代形而上学をさらに学ぶための文献案内
索引


ワードマップ 現代形而上学 おわりに

本書は、その名のとおり現代形而上学の入門書だ。形而上学というのは、二千年を超える哲学の伝統の中で脈々と受け継がれてきたとても由緒正しい分野の一つである。と、こんなふうに言うと過去の遺物であるかのようだが、実際のところ形而上学は、いまもなお世界中で非常に活発に研究が進められている。そしてそのことには、もちろんそれなりのわけがある。形而上学は、何と言っても面白いのだ。形而上学は、一見自明なことのうちに潜んでいるさまざまな問題をえぐり出して、私たちをはっとさせてくれる。しかもその問題は、世界のごく一般的な特徴に関わる壮大なものばかりであり、そうした問題を考えるためであれば、形而上学では想像力と論理の許すかぎり多彩な(ときにSF的な)道具立てがもちだされる。そしてもっとも大事なことは、とりわけ現代の研究ではそうであるように、形而上学の議論が、あくまで明晰かつ厳密な仕方で進められることである。私たちはそうすることで、伝統的な問いや議論を単になぞるだけでなく、自分自身で納得しながら一歩一歩進んでいくことができるのだ。

本書の執筆者たちも、こうした魅力をもった形而上学にたずさわっていることに心から喜びを感じているし、この喜びを多くの人と分かち合いたいと思っている。しかし形而上学は、なぜか日本ではまだあまりさかんでなく、初学者が読める日本語の入門書もほとんどない。だから、ときどきお勧めの本を聞かれても、すぐに英語の専門的な文献を挙げねばならなくなって、この分野から人を遠ざけることになってしまいがちだ。私たちは、このような状況を以前から歯がゆく思っていた。実際にやってみればこんなに楽しいのに、それが多くの人に知られずにいるのはもったいない。この楽しさを自分たちだけでこっそり味わっているのは何だか申し訳ない。もっと多くの人に形而上学の面白さをわかってもらい、さらに進んで学びたくなった人の手引きにもなるような、そんな本があればいいのに。―本書が生まれたのは、おおよそこんな思いからである。

現代形而上学の入門書がまだ日本に少ないこともあって、本書は、いろいろなタイプの読者にいろいろな仕方で読んでもらうことを想定している。まず想定されている読者は、大学生や大学院生だ。本書は、大学や大学院の授業用テキストとして、また独習用のテキストとしても使うことが可能なようにつくられている。(それぞれの章はおおむね独立しているので、授業で使う場合は、まず序章をみたあと時間数に合わせて残りの章をいくつか扱うことができるだろう)。また本書は、哲学の他分野や、隣接する領域の研究者にとっても役立つものとなることも目指した。とりわけ、「形而上学という伝統的な分野が最近また盛り上がっているようだが具体的にどんな議論がなされているのだろう」と気になっていた方にとって、本書は有益な情報源になるはずだ。そしてさらに、本書はより広い範囲の一般の読者にも向けられている。序章にもあるように、形而上学が扱うのは、私たちがこの世界の基礎的なあり方について深く考えてみようとするとき否応なく突き当たる(だからこそ伝統的に受け継がれてきた)問題である。そうした問題を考えることの楽しさが多くの人に伝わるよう、それぞれの章の冒頭部分では、なるべく日常的なことばを使って問題を導入するよう努めた。また、問題を考えるための基本的な道具や材料も、スペースの許す限りなるべく多く紹介するよう心がけた。

全体の章立てに関しては、現代形而上学で長らく論じられてきた標準的なトピックを中心にしつつも、近年注目を集めるようになったトピックも積極的に取り入れている。これによって、現代形而上学の現状についておおよその全体像をつかめるよう配慮したつもりである。またそれぞれの章を書く際には、初学者にもわかりやすい記述を心がけるのはもちろん、さまざまなところに散らばっている邦語文献の情報をとりまとめることにも留意した。現代形而上学に関連した日本語の文献は、一見それとわからない本の一部分として収められていたりすることもあって、いざ探そうとしてもいまいち見つけにくい状況にあったからである。もちろん、本書の中ですべてを紹介できたわけではないが、現代形而上学に関する文献を探す手引きとしても役立つものになったのではないかと思う。

最後に、本書が出版に至るまでにいろいろな形でお世話になった方々へ、感謝の言葉を述べさせていただきたい。本書の企画は、執筆者のひとりである鈴木がツイッター上で、ルーマン・フォーラム管理人の酒井泰斗さんと知り合い、酒井さんから新曜社の橋直樹さんを紹介してもらったことから始まった(もう三年近く前のことになる)。本書に誕生のきっかけを与えてくれた酒井さんに、まず心から感謝したい。また橋さんは、比較的若手の私たちに、現代形而上学を広めるまたとないチャンスを与えてくれたうえ、その後も丁寧な編集・校正作業によって支えてくれた。本書が、橋さんへの御恩に少しでも報いるものになっていることを祈る。さらに、柏端達也先生(慶應義塾大学)、斎藤慶典先生(慶應義塾大学)、成田和信先生(慶應義塾大学)からは、それぞれ本書の草稿の一部に対していくつもの啓発的なアドヴァイスをいただいた。また、池田誠、小草泰、笠木雅史、神原喬、木下頌子、金正旭、久保田さゆり、小林知恵、小山虎、高取正大、高橋優太、新川拓哉、山口尚、吉沢文武、の各氏からも、本書の内容の改善に役立つたくさんの建設的なコメントをいただいている。最終的な文責が私たちにあることは言うまでもないが、貴重なお時間を使って本書をよりよいものにすることをお手伝いいただいた以上の皆様に、心よりの感謝を申し上げたい。

二〇一三年十二月

執筆者一同