質的心理学ハンドブック

創立10周年を期し,日本質的心理学会が総力をあげて編んだ必携ハンドブック。心理学だけでなく多くの人間科学と連動して学問横断的に発展している質的心理学の「ものの見方」「方法論」の特徴を明確にしつつ「実践性」を重視した,社会にひらかれた知への書。
質的心理学ハンドブック――目次

はじめに

・部 質的心理学の理論と歴史

1章 質的心理学とは何か
1節 質的心理学の核心  やまだようこ
1-1 変革としての質的研究
1-2 質的心理学の基礎にある「ものの見方」
1-3 意味づける行為とナラティヴ
【参考書】

2節 質的心理学の歴史  やまだようこ
2-1 古くて新しい質的研究
2-2 質的研究の源流と流域 ― 実体概念から関係概念へ、個体概念
   から文脈概念へ
2-3 質的心理学の古典と現在
2-4 日本質的心理学会創設にいたる志
【参考書】

3節 質的研究の認識論  渡辺恒夫
3-1 認識論的解読格子
3-2 認識論的対立の原型と質的認識論の源流
3-3 認識論的転回と質的心理学の展開
3-4 まとめ
【参考書】

4節 質的研究の倫理  能智正博
4-1 研究倫理とは何か
4-2 データ収集に先立つ倫理的配慮
4-3 研究の場の設定に関わる倫理
4-4 研究実施段階における関係の倫理
4-5 個人情報の扱いに関する倫理
4-6 まとめ ― 重層的なナラティヴとの対話に向けて
【参考書】

2章 質的心理学の理論
1節 心理と行動に関わる理論  サトウタツヤ
1-1 理論とは何か
1-2 存在論・認識論・メタ理論・方法論
1-3 自己論と社会構成・自己変容と臨床心理
1-4 社会構成主義とナラティヴ・ターン
1-5 時を扱う心理学理論と場を扱う心理学理論
1-6 記号の理論と質的心理学
1-7 まとめ ― 時代と理論
【参考書】

2節 現象学的な理論とその展開  西村ユミ
2-1 事象の内側からの探究
2-2 理性にまつわる問題系
2-3 現象学が生まれた必然性と現象学を求める必然性
2-4 フッサールの現象学、その発展
2-5 現象学の継承の方向性と質的研究
2-6 フッサール現象学の継承と発展
2-7 現象学を手がかりにすること
【参考書】

3節 言語とテクストをめぐる理論  小島康次
3-1 「記号」から「記号機能」へ
3-2 古典的記号論を超えて ― テクストと解釈の世界へ
3-3 質的研究におけるポリフォニーとしての対話
3-4 ポストモダンとしての言語 ― ナラティヴ・アプローチ
3-5 ポスト構造主義者ラカンの記号論
【参考書】

4節 社会と文脈を重視する理論  樫田美雄
4-1 「社会」と「文脈」を重視する理論としての社会
4-2 社会構築主義的諸研究の現在
4-3 フェミニズム ―「社会的に構築された女性差別」批判から
  「性体制」批判へ
4-4 障害学 ―「医学モデル」批判から周辺的諸カテゴリー批判へ
4-5 思考実験 ― 「フェミニズム」と「障害学」の交錯場面の検討
4-6 まとめ ― 社会構築主義論争史を検討すると質的研究がしやすくなる

【参考書】

・部 質的心理学の方法論

3章 フィールド研究と参与観察
1節 フィールドへの参入と参与観察  柴山真琴
1-1 エスノグラフィーとは
1-2 エスノグラフィーの来歴
1-3 エスノグラフィーの方法論的特徴
1-4 良質な観察のあり方
1-5 良質な厚い記述とは何か
1-6 エスノグラフィー研究の真価
【参考書】

2節 相互行為分析と談話分析  山田富秋
2-1 相互行為分析と会話分析
2-2 道具的知識としての方法の知識
2-3 フィールド研究としてのエスノメソドロジー
2-4 まと
【参考書】

3節 フィールドにおける発達的研究  麻生 武
3-1 質的な研究法と量的な研究法との関係
3-2 歴史的な時間軸と質的な研究
3-3 目の前で生成している現象の観察と記述
【参考書】

4節 実践志向の質的研究の成り立ち  無藤 隆
4-1 質的研究の倫理性とは
4-2 日本の質的研究の前史としての思想の流れ
4-3 1960年代におけるミクロな心理的対人相互作用的基礎を求める
   転回点
4-4 保育・教育現場への関わりにおける実践研究
4-5 質的方法論の蓄積
4-6 方法的ブリコラージュとしての実践志向の質的研究者とは
4-7 混合法の成立へ
4-8 学界のポリティクスと質的研究の今後
4-9 暫定的結論とは
【参考書】

5節 フィールドにおける学習・教育研究  藤江康彦
5-1 学習・教育の現場における質的研究とは何か
5-2 学習・教育の現場に調査者はどのような目を向けてきたか
5-3 学習・教育の現場への参与と倫理
【参考書】

4章 ナラティヴ研究とインタビュー
1節 ナラティヴとは  森岡正芳
1-1 ナラティヴの基本的視点
1-2 ナラティヴ視点を活かす
1-3 ナラティヴを基本とする研究の導入
1-4 まとめ
【参考書】

2節 インタビューの概念  川島大輔
2-1 インタビューの歴史
2-2 インタビューが迫るもの ― インタビューの概念とメタファー
2-3 インタビューの類型 ― 構造、形式、人数による区別
2-4 インタビューの具体的研究法
2-5 インタビューの概念再考 ― むすびに代えて
【参考書】

3節 インタビューの方法  徳田治子
3-1 質的研究におけるインタビュー法の展開
3-2 インタビューのデザイン
3-3 インタビューの実施
3-4 インタビュー場面での問い方と聴き方
3-5 まとめ
【参考書】

4節 ナラティヴ・テクストの分析  能智正博
4-1 ナラティヴ・テクストの分析の位置づけ
4-2 ナラティヴの内容から意味の構造へ
4-3 ナラティヴ・テクストの形式への注目
4-4 ナラティヴの生成過程を捉える
4-5 ナラティヴ・テクストの分析のこれから
【参考書】

・部 社会実践としての質的心理学

5章 実践とともにあるアクションリサーチ
1節 アクションリサーチの哲学と方法  八ッ塚一郎
1-1 レヴィン再考
1-2 「リサーチ」の哲学 ― 科学哲学者としてのレヴィン
1-3 「アクション」の構造 ― 亡命者と研究のサイクル
1-4 問いとしてのレヴィン
【参考書】

2節 コミュニティと産業・組織におけるアクションリサーチ
   永田素彦
2-1 アクションリサーチのミニマムな特性
2-2 アフター・レヴィン
2-3 合意形成のアプローチ ― ナラティヴの力を活かす
2-4 当事者による理論の活用を促すアプローチ
2-5 ベターメントの主体を作るアプローチ ― 解放としての民主化
2-6 センスメーキングを促すアプローチ
【参考書】

3節 質的研究者の実践としての倫理  好井裕明
3-1 研究という実践をめぐる倫理の基本とは
3-2 質的研究が調べる対象とは
3-3 当事者性という問題へ
3-4 否定形の倫理から肯定形の倫理へ
【参考書】

4節 障害や福祉の場におけるアクションリサーチ  田垣正晋
4-1 社会福祉分野と実践現場との関係
4-2 社会福祉におけるアクションリサーチ
4-3 アクションリサーチの過程における研究者とメンバーの関係性
4-4 研究者による介入としてのセンスメーキング
4-5 障害者施策の住民会議に関するアクションリサーチ
4-6 アクションリサーチの成果をどう検討するか
4-7 まとめ
【参考書】

5節 保育・教育の場におけるアクションリサーチと実践的知識
    秋田喜代美
5-1 教室におけるアクションリサーチの展開
5-2 専門家としての実践者の知と理論
5-3 実践の場と知を支える道具としてのビデオ
5-4 専門家の成長と共同的探求としての実践研究
【参考書】

6章 変革とともにある質的心理学
1節 生活と暮らしの変革  伊藤哲司
1-1 日常の生活世界に寄り添う
1-2 地域コミュニティに働きかける
1-3 対話による異文化への気づきを促す
1-4 現実を語りなおす
1-5 まとめ ―「渦中」の質的心理学へ
【参考書】

2節 共同知を創出するものづくりワークショップ  塩瀬隆之
2-1 社会と生活で求められる変革
2-2 共同知創出の技法としてのデザインワークショップ
2-3 個人の生活への注目から始まるイノベーション
2-4 小さな声を拾うための精緻な不完全さ
2-5 共同知創出の場が欠かせない企業内教育
2-6 「ために」から「ともに」へ
【参考書】

3節 質的アプローチの教育と学習  安田裕子
3-1 質的アプローチの学びによる世界観の変革
3-2 質的研究の教育カリキュラム・教育実践の方法
3-3 学びの環境づくり
3-4 質的研究を進めるための知恵・ヒント ― 複線・複眼的思考の習得
【参考書】

4節 社会実践のパラダイム  矢守克也
4-1 社会実践、そして研究という社会実践
4-2 社会実践を「見る」こと
4-3 質的なデータと量的なデータ
4-4 「見る」ことを見ること
4-5 協同当事者として「見る」こと
4-6 永続するプロセスとしての協同実践
【参考書】

文  献
人名索引
事項索引

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