戻る


小林秀樹 著

居場所としての住まい
――ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層


A5判上製216頁

定価:本体2300円+税

発売日 13.7.26

ISBN 978-4-7885-1348-8




◆住まいは家族のあり方を映し出す!◆

子ども部屋は引き籠もりを招く? 夫婦は同室寝? 別室寝? 三世代同居で円満に暮らすには? 話題のルームシェアの実態は? これからの高齢化社会、夫婦、親子、三世代がうまく暮らしていくための知恵と住まいのあり方とは?──住まいは、単なる建物ではありません。家族の一人ひとりの居場所です。そして、家族や家がどうありたいかという人々の理想と現実とが重なり合いながら、生活が営まれている場所です。本書は、「ナワバリ学」という視点から、私たちが常識と思っている現代の家族と住まいの意外な真実を明らかにしてゆきます。これからの暮らし方や間取りづくりについて、たくさんのヒントを示してくれる本です。著者は、千葉大学教授。

居場所としての住まい 目次

居場所としての住まい はじめに

ためし読み
Loading

居場所としての住まい 目次
はじめに  
家族と住まいのナワバリ学
  1 住まいのナワバリ学への誘い             
  2 ナワバリを守る仕組み表示物と作法

夫婦と親子の深層心理
  1 夫婦のナワバリを調べる―夫婦平等の夢のゆくえ       
  2 夫婦寝室の謎―夫婦は同じ部屋で寝るのか          
  3 親子のナワバリを調べる順調に自立している子どもたち  
  4 子ども部屋のうまい使いこなし方        
  5 閉じこもりと母子密着への対応               

床上文化と家族温情主義
  1 集団主義を特徴とする日本の住まい             
  2 ナワバリ学からみた集団主義論            
  3 床上文化がもたらす家族温情主義      
  4 家族温情主義のゆくえ

理想の間取りとは
  1 個室とLDKを見直す様々な主張             
  2 言論と現実にズレが生じる理由nLDKも悪くない     
  3 家族生活からみた間取り中廊下型から居間中心型へ     
  4 接客からみた間取り部屋をつなげて使う        
  5 ナワバリ学からみた理想の住まい          

三世代同居の深層心理
  1 三世代同居におけるナワバリ争い 
  2 三世代同居はなぜ減るのか別居と二世帯住宅の増加  
  3 三世代同居のナワバリを調べる娘夫婦同居に多い役割分担型
  4 親の加齢による変化と住まい              

ルームシェアのナワバリ学
  1 シェア居住という新しい暮らし方 
  2 シェア居住の深層心理を調べる   
  3 ルームシェアをうまく暮らす行動様式 

新説・日本の住まいの近代史
  1 住まいの歴史を読み解くために
  2 伝統的な住まいの空間構成   
  3 住まいの近代化の始まり  
  4 戦後におけるダイニングキッチンの登場 
  5 リビングルームと個室の普及     
  6 近代化の見直しの動きとnLDKの定着

あとがき

                             装釘=臼井新太郎
                             装画=小川メイ


居場所としての住まい はじめに

 子ども部屋は引き籠もりを招くのだろうか。夫婦が別室で寝るのは多いのだろうか。ルームシェアや三世代同居を円満に暮らすにはどうしたらよいのだろうか。さらに、日本の家族と住まいは、今後どうなっていくのだろうか。本書は、このような問いにナワバリ学を通して答えるものである。

 今日、私たちは住まいを語るときに、「居間」「おばあちゃんの部屋」「秀樹ちゃんの部屋」のように、その部屋を誰が使っているかに着目する。さらに、3LDK、4LDKという表現が一般化しており、その記号から、おおよその間取りを想像している。

 しかし、実は、このように住まいを語るようになったのは、ごく最近のことだ。ひと昔前は、子ども部屋のような個室はなかったし、もちろんリビングルームやダイニングキッチンもなかった。その代わりに、来客をもてなす座敷や、仏壇があるホトケの間があり、しかも、部屋と部屋の仕切りは薄い襖ふすまであった。それが、戦後の高度成長期を通じて大きく変化し、今日のような住まいが一般化したのである。

 では、これらの変化は、私たちの生活や意識に何をもたらしたのだろうか。たとえば、マスコミでは、住まいの個室化が、親子関係の希薄化や子どもの閉じこもりを招いたのではないかという指摘もみられる。しかし、実際はどうなのだろうか。

 このような疑問に答えるためには、間取りだけではなく、家族の深層心理に近づく必要がある。というのは、昔の家父長を中心とした封建的な家族のあり方と、今日の民主化したといわれる家族のあり方の違いが、間取りの変化と密接に関わっているからだ。さらに、ルームシェアの暮らしでは、それまでの家庭生活の経験がルームメイトとの関係を左右しているかもしれない。

 「ナワバリ学」とは、人々が空間をどのように領有しているかを解き明かす学問だ。住まいにおいては、家族の一人ひとりが、どのように自分の居場所を確保しているかを解き明かす。これを通して、家族の深層心理がみえてくる。さらに地域に眼を転じれば、一軒一軒が専有する場と、地域のみんなが共有する場の関係に着目する。これにより、地域社会のあり方に切り込むことができる。

 本書は、このような「ナワバリ学」を駆使して、家族と住まいの深層に迫ろうとする。私たちが常識と思っている現代の家族と住まいの意外な真実を明らかにし、これからの暮らし方や間取りづくりについて、たくさんのヒントを示してくれるだろう。

 以下では、夫婦関係、親子関係、三世代同居、そして若者のルームシェアに焦点をあて、うまく暮らしていくための知恵と住まいのあり方を明らかにする。そして、より詳しい知識を得たい方のために、家族温情主義と呼ぶ日本の家族の特徴を明らかにし、それを踏まえて、これからの理想の住まいについて考える。さらに、日本の住まいの近代史を新しい視点で描き直してみたい。

 最後に、この場をお借りして様々な調査を進めた丁志映さんはじめ研究室メンバーに感謝を表したい。また、出版にあたっては、新曜社の塩浦暲氏に大変お世話になった。本書を広く読んでいただくことで、ご協力頂いた多くの方々に報いることができればと思う次第である。