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ユーリア・エンゲストローム 著
山住勝広・山住勝利・蓮見二郎訳

ノットワークする活動理論
――チームから結び目へ


四六判上製440頁

定価:本体4700円+税

発売日 13.6.15

978-4-7885-1347-1

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◆活動理論の新しい展開!◆

活動理論で知られるエンゲストローム待望の新刊です。現在、各分野でチームワークや協働が注目され、さまざまなネットワークやソーシャルメディアに関わることが流行ですが、はたして、承認され繋がったという小さなエピソードを除いて、本当に参加者や社会にとっての新たな価値が生まれているでしょうか? 職場、医療、教育、法廷、生産現場等々で差し迫って求められているのは、すばやく変化する予測不能な現場のニーズに応える、俊敏で柔軟な協働なのです。それを可能にするのが、本書の提唱する、創発的な交渉によるノットワーキング(結び目づくりによる協働)です。多様な協働の現場の貴重な参与観察から、協働が生まれる、あるいは阻害される状況をつぶさに報告した本書は、革新が同一性の中からではなく、それぞれが異なる個性の結び目から生まれることを検証しています。


ノットワークする活動理論 目次

ノットワークする活動理論 はじめに

ためし読み
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ノットワークする活動理論─目次
日本語版へのまえがき―変わりゆく協働と学びの風景へ
はじめに

1章 チームと仕事の変容
チームという難問
研究の新しい波
文脈も歴史も欠いたチーム
社会技術的概念
社会技術型チーム 対 リーン生産型チーム
対象としての、自律性 対 品質
リーン生産を超えて─多様性、イノベーション、知識
変容する領域
チームの歴史的な位置づけ
本書の構成

2章 テレビ制作チームにおける障害への対処と隠蔽
言説的な障害とそれらへの対処
解釈枠組みとしての活動理論
場  面
番組制作過程のナラティブ
データ収集
3タイプの障害
障害対処の様態
完全性か、それとも隠蔽か?
活動システムとしてのPBTの内的矛盾
PBTについての歴史的観点
結  論

3章 敵対する者の間でのチームワーク
       ―法廷審理における調整、協力、コミュニケーション

拡張的移行を理論化する
法廷における障害と拡張―データの問題
制限による調整への回帰
協力への移行
省察的コミュニケーションにおける試み
見えない戦場

4章 一次医療チームにおける置き換わりとイノベーション
概念的枠組みを洗練する
事例1―高齢女性と介護医療従事者、あるいはツールが対象と置き換わる様子
事例2―チームとヒエラルキー
チームの歴史における二つの層
固定と流動

5章 教師チームにおける境界横断
学校における仕事の対象と動機
グローバル教育チーム
計画会議における話し合いの特徴
異年齢混合のグループ分けによる分業の再定義
空間の境界を横断する
時間の交渉によるルールの再定義
カリキュラムの中にある諸教科の境界を横断する
矛盾と討論
活動システムとその矛盾
二つの教師チーム間で境界を横断する
チームにおける境界横断の力と限界

6章 工場作業チームにおける知識創造
知識創造を詳細に調べる
二つの事例
説明枠組みとして野中・竹内のサイクルを用いる
説明枠組みとして活動理論と拡張的学習を用いる
拡張的学習における質問
拡張的学習における分析
拡張的学習における新しい解決策のモデル化
拡張的学習における新しいモデルの検証
拡張的学習における新しいモデルの実行
結  論

7章 チーム、インフラストラクチャー、社会関係資本
社会関係資本の媒介物としての人間活動システム
分配のインフラ―サービスのネットワーク
交換のインフラ―ルールの集積
生産のインフラ―ツールの布置
物質性の影響―社会関係資本の時間的力学

8章 鉄の鳥かごから風に舞う織物へ
作業チームの矛盾する性質
第一のテーゼ―チームは、複合的に媒介された、
    対象志向の活動システムとして分析されるべきである
第二のテーゼ―チームの性質は実行する生産の歴史的様式によって決まる
第三のテーゼ―ノットワーキングの流動的形態は、堅固に見える
    チームのような組織作業の形態よりも興味深くなってきている
仕事におけるチームと拡張的学習

9章 流動的な組織の場におけるノットワーキングと行為主体性
創発的相互作用の志向性と分散型行為主体性
活動理論の貢献
ヒエラルキー、市場、ネットワークにおける行為主体性、そしてそれを超えて
小説の例――ヒラーマン『邪悪なブタ』
経験的事例――ヘルシンキでの慢性疾患患者の治療におけるノットワーキング
ノットワーキングと社会的生産の環境下における学びの行為主体性

訳者あとがき  
文  献  (15)
事項索引  (8)
人名索引  (1)
装幀=虎尾隆





ノットワークする活動理論―はじめに

社会科学では、私たちが現象を研究している間にも、その現象は変化してゆく。私たち研究者も研究対象の現象の一部であるから、研究者自身も研究対象の変化とともに変わってゆく。

 私が仕事チームの研究を始めたのは1990年代の初めだった。その試みは約15年続いている。本書は、その旅をふり返るべく構成された。「よきチーム」とは何かを普遍的に規定しようとする代わりに、私は、仕事チームというものがその組織的・文化的な文脈の中で歴史的にどう変容してゆくかを追跡し分析する。同時に、私自身の理解が変容してゆくさまも記録する。本書の終盤にかけて、チームという考え方は背景に退き、ノットワーキング(knotworking)、すなわち結び目を結うという新しい考え方が中心に躍り出てくる。

 本書に収められた研究の旅路は、読者を、フィンランド、そしてアメリカ合衆国におけるバラエティーに富んだ仕事場のチームへと連れてゆく。またそれは、学問分野の間、とくに教育、コミュニケーション、組織の研究の間にある境界を超えてゆくものでもある。

 文化・歴史的活動理論(cultural-historical activity theory)は、本書を束ねるより糸である。これは一般的な枠組みであるため、それを特定の実際のケースに当てはめるとき、常に文脈にあわせた仲介的な概念や方法を創出して使わねばならない。こうした仲介的な理論的概念と方法は、それ自体が重要な研究の成果なのである。

 本書で実証研究を扱っている各章は、それ自身が協働の歴史をもっている。2章の初出は、デニス・マッツォッコ(Dennis Mazzocco)との共著で、国際コミュニケーション学会において1995年に発表された。3章は、Quarterly Newsletter of the Laboratory of Comparative Human Cognition(1991, Vol. 13, pp.88-97)に掲載された、キャサリン・ブラウン(Katherine Brown)、キャロル・クリストファー(Carol Christopher)、ジューディス・グレゴリー(Judith Gregory)との共著論文が初出である。6章の初出は、Perspectives on Activity Theory(edited by Yrj Engestrm, Reijo Miettinen, & Raija-Leena Punamki, Cambridge: Cambridge University Press, 1999)の中に執筆した一章である。7章は、Information Systems and Activity Theory, Volume 2: Theory and Practice(edited by Helen Hasan, Edward Gould, Peter Larkin, & Lejla Vrazalic, Wollongong: Wollongong University Press, 2001)に所収されている、ヘリ・アホネン(Heli Ahonen)と共同執筆した一章が初出である。8章の初出は、Lifelong Learning in Europe(Vol. 4, 1999, pp.101-110)の掲載論文である。そして9章は、Collaborative Capital: Creating Intangible Value(edited by Michael M. Beyerlein, Susan T. Beyerlein, & Frances A. Kennedy, Amsterdam: Elsevier, 2005)の中の一章として最初出版された。

 チームに関する私の研究は、その初期に、フィンランド・アカデミーから資金の提供を受けて行われた。2004年、2005年には、本書の原稿を書くための私の研究休暇に対して、再度、フィンランド・アカデミーから資金が与えられた。本書にあるような研究の旅の間中、ヘルシンキ大学活動理論・発達的ワークリサーチセンター(Center for Activity Theory and Developmental Work Research, University of Helsinki)とカリフォルニア大学サンディエゴ校比較人間認知実験室(Laboratory of Comparative Human Cognition, University of California, San Diego)というコミュニティが、私の研究にとって変わらぬ知的かつ社会的な家のようなものであり続けた。

 6章のイラストは、ゲオルグ・エンゲストローム(Georg Engestrm)によって描かれた。終生変わらぬ支援に感謝したい。

 アナリサ・サニーノ(Annalisa Sannino)と私たちの息子であるユリィ・エンツォ(Jurij Enzo)との愛と協働が、私にこの旅を完成することを可能にしてくれた。>