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山口裕之 著

コピペと言われないレポートの書き方教室
――3つのステップ


四六判100頁

定価:本体1200円+税

発売日 13.7.26

ISBN 978-4-7885-1345-7

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◆コピペ力を引用力へ◆

多くの大学で盗作問題、とくにコピー&ペースト操作で継ぎはぎされたレポートの問題が、学期末の風物詩になっています。「コピペ」をやめさせ自分の力でレポートを完成するようにさせる教育は全大学必須と言えるでしょう。しかし電話帳のような分厚い家電の取扱説明書を読む人が少ないように、細かな文章作法まで伝えるマニュアルは分厚すぎて使いづらいものです。大学新入生がやる気を失わずに書き始められるためには、まず最低限のポイント、「コピペ」と引用の区別を知り、調べたことを引用・要約しつつ自分の意見を述べる 方法に絞ったマニュアルが必要ではないでしょうか。初めて読む教科書としてプレゼミにも最適な一冊です。著者は徳島大学総合科学部准教授。

コピペと言われないレポートの書き方教室 目次

コピペと言われないレポートの書き方教室 はじめに

ためし読み

◆書評
2014年5月25日、読売新聞

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コピペと言われないレポートの書き方教室 目次

はじめに――「コピペ」の蔓延とその原因

この本の特徴とねらい
    レポートと就職

コピペとは何か
    「ホームページ」か「ウェブページ」か?

コピペ判定ソフト

盗作(ないし剽窃)と引用の違い
    コピペと著作権法

学生は、なぜコピペしてしまうのか
    ウィキペディアは使ってはいけない?

「コピペ!」と言われないための基本ルール

コピペ以前の基本

 「はじめに」のまとめ


ステップ1  「コピペ」と言われない書き方・基礎編1
ポイント@:情報源は引用と出典で明示する

基本中の基本
    引用が長くなる場合

文献を要約するには

「」と()と。の関係
    ウィキペディアについて

情報源(出典)の書き方について:ウェブページの場合
    ウェブページにタイトルがない場合

「注」によって出典を示す場合
    Wordの「脚注機能」を活用しよう

「参考文献一覧」によって出典を示す場合

なぜ出典を書くことが必要なのか

「いわれている」は魔法の言葉
    「いわれている」と書いてもよい場合

「コピペ」と言われない書き方・基礎編のまとめ



ステップ2  「コピペ」をしようと思わなくなるための方法25
ポイントA:複数の情報源を確認する

情報源の信頼性の判定

ネット情報は「きっかけ」として利用する

    情報のありそうな場所

情報源(出典)の書き方について:文献の場合

    ハイブリッドカーの虚実

    本は買った方がよい

二重カギかっことイタリック体

    Wordの「引用文献機能」を活用しよう

論文を検索しよう

引用する理由

    「トンデモ論文」の判定法


ポイントB:反対意見・反対の事例を常に探す

ポイントC:「論じるべきこと」を見つける

タイトルを付ける

「コピペ」をしようと思わなくなるための方法・まとめ

ステップ3  「引用」を活用した文章の構成61

ポイントD:「思う」は禁句

    「思い」と「意見」の違い

ポイントE:接続詞を入れる

「だから」に気をつけろ!

ポイントF:具体的な結論を出す

「引用」を活用した文章の構成・まとめ

◆“コピペと言われない書き方”の総まとめ

◆電子メールでレポートを提出する

◆チェック項目一覧

書き方チェックリスト
できばえチェックリスト

◆付録:この本で紹介したお役立ちサイト一覧

おわりに――民主主義とレポート


装幀――はんペンデザイン 吉名 昌


コピペと言われないレポートの書き方教室 はじめに

はじめに
 ――「コピペ」の蔓延とその原因


この本の特徴とねらい
―――――――――――――――――――
 この本を手に取ったみなさんは、大学の授業の課題で生まれて初めて「レポート」なるものを書くように言われて戸惑っている大学1年生の方でしょうか。あるいは、大学1年生に「コピペ・レポート」をやめるように指導したい大学教員かもしれません。最近は、中学校や高校でも総合学習の時間などにインターネットを使った調べ学習が行われていて、あるテーマについて自分で調べたことを発表する機会があるようです。そのためにネット情報の活用法を知りたい中高生も多いに違いありません。この本では、そうしたみなさんすべてに、「コピペと言われないレポート」を書くためにはどうすればよいかを説明したいと思います。もちろん、最終的な目標は優れたレポートを書けるようになることですが、それ以前に、コピペをしていたのでは「レポート」の範疇にさえ入りません。

 これまでにも「レポートの書き方」と銘打った本がたくさん出版されています。しかし、それらの本の多くは、ネット時代以前に書かれたもので、「コピペ問題」に対応しようという問題意識が希薄なようです。また、レポートのみならず論文の書き方についても指南しようとしているために、少々高度なことまで盛り込まれており、かえって一番重要なポイントが何なのか、分かりにくくなっている本も多いのです。

 そこでこの本では、「コピペ」と言われないためには具体的にどうすればよいのかを、最重要ポイントのみに絞って、大学生のみならず中学生、高校生にも読めるように、できるだけ簡単に説明します。「最重要ポイント」というのは要するに、大学教員がレポートを採点するときに、最低限度ここだけはちゃんとしてほしいと考える点です。

 そして、レポートの書き方について、実際に何をどうすればよいのかが分かるように具体的に説明していきます。

 たとえば、「レポートは感想文ではありません! 論理的に書きなさい」などと言われても、具体的にどういうふうに書けばよいのか分かりませんよね。この本では、「あなたのレポートには〈カギかっこ〉がありますか?」とか、「〈思う〉と書いてしまったら消して理由や根拠を考えましょう」など、多くの学生がレポートを書くときにやってしまいがちなことを具体的にどのように修正したらよいのか、注意点を挙げていきます。これなら、自分の書いたレポートの修正すべき個所がどこなのか、誰でもすぐに分かるはずです。

 そうした基本的なレポートの書き方を練習することで、自分の意見を説得的に表現する方法という、学校で学ぶときにも、会社で仕事をするときにも、あるいは民主主義社会を生きていくうえでも、もっとも重要で貴重なスキルを身に付けていってもらうことが、この本のねらいです(「民主主義とレポート」については、この本の最後でまとめて説明します)。

 この本の使い方としては、レポートを書く前に、まずざーっと全体を読んでください。読書力のある人なら1時間ちょっと、あまり本は読まないという人でも2,3時間もあれば読み終わるはずです。この本は3つのステップで構成されています。ステップごとに内容のまとめページを作り、さらに最後にレポートの書き方チェックリストとできばえチェックリストを付けてあります。全体を読んだらまとめのページに戻って、内容を覚えているか一度確認してみましょう。

 実際にレポートを書くときには、「書き方チェックリスト」の流れに従って書き、できあがったら「できばえチェックリスト」で形式や内容が妥当かどうかチェックしてください。リストは要点だけですから、細かい点を確認したいときには本文の該当箇所に戻って読み直して確認してください。このようにすれば、誰でも無理なく「コピペと言われないレポート」が書けるはずです。


―――――レポートと就職―――――――――――――
 「自分の意見を説得的に表現する方法」は会社で仕事をするうえでも重要、と書きました。経済同友会が2010年に行った「企業の採用と教育に関するアンケート」では、「新卒の採用選考の際、ビジネスの基本能力等として、特にどのような能力を重視していますか」という設問に対して、「論理的思考力」という回答が4位となっています(http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/pdf/101222a.pdf, 2012年9月25日アクセス)。

 通常の企業が「論理学」を重視しているとはあまり考えられないので、ここでいう「論理的思考力」とは「自分の意見を説得的に表現する方法」に他ならないでしょう。

 「なんだ、4位か」と思われるかもしれません。しかし、1位は「熱意・意欲」、2位は「行動力・実行力」、3位が「協調性」で、これらは性格的なものですから、身に付けようとしてもなかなか身に付くものではありません。それに対して「自分の意見を説得的に表現する方法」は一つの技術であり、練習することでその能力を高めていくことができます。この本では、その技術の基本を伝授します。


コピペとは何か
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 この本を手に取ってみられたということは、「コピペ」とは何か、すでによくご存知の読者も多いとは思いますが、念のため、簡単に説明しておきます。そのうえで、なぜそれがいけないことなのか、なぜそうしたことが蔓延するのか、ということについても触れたいと思います。理由が分かれば、対策はおのずと明らかになってくるでしょう。

 まず、「コピペ」とは、「コピー&ペースト」の省略で、要するに「文章の切り貼り」ということです。具体的には、パソコンで電子ファイル(主にはインターネットのページ)の一部分をコピーして、自分の文書に貼り付ける行為を指しています。これがなぜレポートと関係あるのかというと、大学の授業などでレポートを宿題にすると、インターネットのページを切り貼りして作成したものを提出する学生が激増しているのです。

 当人は、ちゃんと調べて書いたつもりなのかもしれませんが、ひどいものになるとウェブページの丸写しということもあります。ふつう大学教員は「テーマに関連する情報を調べたうえで、自分の意見を説得的に表現する」というスキルを練習してもらうためにレポートを宿題にするのですが、ウェブページ丸写しではカンニングと言われても仕方ないでしょう。

 一つのウェブページを丸ごとコピペしてそのまま提出するような悪質なレポートはさすがにそれほど多くありません。大学や学部によってかなり違いはあるようですが、私の大学の場合では、100人のクラスで1人いるかどうかという程度です。しかし、いくつかのページの切り貼りのみで構成されたレポート、つまり「自分の意見」がほとんど書かれていないレポートはかなりたくさんあります。100人中で2〜30人はそういうパターンです。中には、段落ごとに、あるいは文の途中から活字のフォント(字体)やサイズが違っていたりするものもあります。コピペしたのが丸わかりのレポートを前に、「せめて隠蔽工作をしようという頭ぐらい働かせてくれよ」などと思ってしまったりします。


―――――「ホームページ」か「ウェブページ」か?―――――――――――――
 インターネット上に公開されているページのことをすべて「ホームページ」と呼ぶこともありますが、正確には「ホームページ」とは、複数のページで構成されているウェブサイトの表紙にあたるページのことです。スタートページやトップページと呼ばれることもあります。以下、この本ではインターネット上のページのことを「ウェブページ」(あるいは単に「ページ」)と呼びます。


コピペ判定ソフト
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 コピペ・レポートの蔓延という事態を受けて、主に大学教員向けに「コピペ判定ソフト」が実用化されています。そうしたソフトは、学生の提出したレポート本文のどの部分が「コピペ」なのか、色を変えて表示してくれたり、「コピペ率」を算定してくれたり、レポート同士の類似性(つまり友だちのレポートをコピペした学生がいないか)を示してくれたりします(コピペ判定ソフトの機能については、以下のサイトを参考にしました。株式会社アンク「コピペルナーV2」,http://www.ank.co.jp/works/products/copypelna/Client/index.html, 2012年9月24日アクセス)。

 はっきり言って、まともな大学教員であれば、コピペのレポートかどうかは読めば一目でわかります。コピペのレポートは、語り口や言葉づかいが、学生が書いたレポートにしては不自然なのです。そのため、単にコピペを見破るだけならばこうしたソフトは不要ともいえるのですが、いざ採点しようとするときには、証拠がないと0点は付けにくい、あるいは自分でネットを検索して証拠をつかむのは手間、ということで利用されているのかもしれません。


盗作(ないし剽窃)と引用の違い
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 「完全コピペ」や「コピペのパッチワーク」であれば大幅減点はやむを得ないし、その証拠をつかむためにはコピペ判定ソフトも役に立つのでしょう。しかし実は、一番多いのは、どこかで得た情報の単なる要約に過ぎないレポートです。これが大変に多い、というより、提出されるレポートのほとんどはこれ、といっても過言ではありません。

 たとえば、以前に「常識を疑え!」というテーマの講義で課した「ハイブリッドカーは環境に良いか」という課題に対する、ある学生さんのレポートの書き出しは、以下のようなものでした。

*ハイブリッド車とは、異なる二つ以上の動力源・エネルギー源を持つ自動車のことで、 通常のエンジン車よりも燃費がいいといわれている。

 種を明かせば、この文章はウィキペディアの項目「ハイブリッドカー」の要約です。

 巧みになされた要約は、それ自身、創造的な思考活動ではないのか、というふうに考える方もおられるかもしれません。また、完全なコピペではないので、単純に「0点」を付けることには抵抗を覚える大学教員もおられるかもしれません。

 というわけで、実際に大学でレポートの採点をするときには、「単なる要約レポート」については「まあ60点(通常、大学で「単位」が認められる最低得点)を付けておこうか」ということになることが多いかと思います。

 「完全コピペ」はともかく、なぜ単なる要約でもいけない(合格スレスレの点数しかもらえない)のでしょうか。一言で言うと、情報源を明記せずに要約したり、そのまま写したりするのは「盗作」(より正確だが難しい言葉でいうと「剽窃」)になるのです。

 ところが、先ほどの例文に、

*ウィキペディアによると、ハイブリッド車とは、異なる二つ以上の動力源・エネルギー源を持つ自動車のことで、通常のエンジン車よりも燃費がいいといわれている。

というふうに、冒頭に「ウィキペディアによると」という一文を付けただけで、「盗作」が「引用」に変わるのです(もちろん、さすがにこれだけでは不十分なので、具体的にどういうふうにすればよいかは後で説明します)。

 専門の学者が他人の論文を盗作したり、作家が他人の作品を盗作したりしたことが発覚すれば、彼らの社会的地位が失われるほどの重大問題になります。学者や作家の仕事は、オリジナリティのある作品(論文や小説など)を制作することです。優れた作品を制作する能力のある学者や作家は高い評価を得ます。他人の作品を盗作することは、単なる「盗み」ではありません。自分の価値を本来の価値以上に見せかけて人をだまし、それによって不当な利益を得るという詐欺行為なのです。

 専門の学者や作家でない学生の場合でも、コピペでレポートを作るということは、もともと自分が書いたのではない文章を、あたかも自分が書いたかのように装って教員に提出し、よい成績をもらおうとする行為ですから、同様の詐欺行為になります。要するに、カンニングだということです。

 他方、「引用」は、合法的に他人の論文や作品を参照する行為で、学者も作家も日常的に行っていることです。とくに学者の場合、引用することは非常に重要です。多くの学生さんは学問研究について、「白衣を着たちょっと変わった人が研究室にこもって一人でやっているもの」といったイメージを持っているかもしれませんが、実は学問研究とは集団的な作業です。ある学者の学説を、他の学者が批判的に検討し、より優れた学説に鍛え上げていくことによって科学は進歩します。ですので、自分の論文に、他の学者の研究成果を引用し、それを検討することは、論文作成において必要不可欠です。ふつうの学会では、引用文献のない論文は、「論文」として認めてもらえません。

 レポートの場合も同様です。レポートでは、テーマに関連する情報を調べ、それを批判的に検討することで、自分の意見を主張することが求められています。引用文献がなく、「自分の思い」だけを書いたものは感想文であって「レポート」ではありません。

 このように、盗作と引用には大きな違いがあります。そしてこの大きな違いは、たった一つ、情報源を明記するか否かにあるのです。