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永井 撤 著

心理面接の方法
――見立てと心理支援のすすめ方


四六判並製224頁

定価:本体2000円+税

発売日 13.4.8

978-4-7885-1332-7

cover

◆心理面接の基本的視点と実際を学ぶ◆

 心理臨床において、面接は、来談者の人柄や問題を見立てて、支援のための手がかりを得るうえで不可欠の方法です。しかしその実践は、面接の基礎的枠組みの知識、および継続的支援を見据えた臨床経験に基づく視座がなければ、容易ならざる営みです。本書はこれらを実践家に伝えるものとして、初回面接における見立ての視点、面接の過程で生じる「困った出来事」への対応、どのように面接を終結できるか、などといった実践に馴染み深い話題を扱い、心理面接の進行過程に沿った19の項目に分けて要点を簡潔にまとめました。実践現場に携帯して参照できる、あるいは電車の中などで気軽に読める体裁の一冊です。

心理面接の方法 目次

心理面接の方法 はじめに

ためし読み

◆書評
2015年11月6日、遊戯療法学研究 2015年 第14巻、田畑洋子氏評

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心理面接の方法─目次

第T部 心理面接の基礎的枠組み
@心理面接とは
面接による「人柄」の理解 
心理面接における基本的な姿勢について 
見立てること
心理面接の方向性 

Aどのように人の悩みや問題を理解するのか(部分的理解)
問題の原因を見究めようとすること 
病因論的視点の実際 
DSMを中心とした問題理解 
これからの問題のとらえ方 

B人の性格や人格を理解することはどういうことか(全体的な理解)
「全体をみる」こととは「長所をみる」こと 
人格を押さえる考え方 
さらに、たましいという見方について 

Cどんな育ちをしてきたか、現在の課題、将来への展望をいかに描くか
(時間軸の理解)
生育歴について聞く 
各発達段階(現在の時点)からみた課題について
未来への志向
◎コラム@ ライフサイクルの文化比較

D家族関係の影響をどう考えるか
母親の影響の大きさ 
家系図を描く 
家族関係への直面化
家族の神話 
家族力動 
家族形態の変化について 
◎コラムA Aちゃんの話 ― 家族との「きずな」の確かめ

E社会変化や時代推移はどう影響するか
日本の文化的特徴と対人恐怖 
モラトリアムの時代と不登校の増加 
バブルの時代と境界例について 
災害・人災によるトラウマと解離について 
社会システムの変化と発達障害について 
社会的なネットワークの活用とシステム作り 
◎コラムB 心理の流行語からみた社会的な問題の変遷

F心理面接と心理療法はどう違うか
心理療法とは
心理療法の技法的な分類 
心理療法によって何が変わるのか
心理相談とカウンセリングについて 

G心理面接における支援のための関係とはどのようなものなのか
継続的な面接への契約あるいは治療同盟について 
転移と逆転移の関係 
補償的あるいは発達的に充足を求める関係 
人と人との実存的な出会いの関係 
トランスパーソナルな関係 

H心理面接の関係において、支援者の役割にはどのような特徴があるのか
母性的な関係―受容的な傾聴を重視した関係 
父性的な関係―現実に対する直面化を重視する関わり 
横の関係―親密な自己と対等な関係 
斜めの関係―導き手としての自己を確認する対象 

I心理面接における見立てと継続的な支援についてのまとめ
「見立て」について 
「見立て」のまとめ 
継続的な心理支援について 
継続的な心理支援の中で起きてくる面接者側の否定的な見方 

第U部 心理面接の実際
J心理面接への動機づけとは
面接を受けに来るまで 
本人に動機づけのない場合 
悩んでいる人から支援の手がかりを広げる 
どのような期待を面接に持っているかを理解すること 

K初回面接と見立てについて
最初の出会いの場所 
第一印象は関係作りの手がかり 
面接を始める前の情報について 
話を聞く手順について 
初回面接で伝える見立てについて 

L他機関との連携や他の担当者に紹介する場合にはどのようにすべきか
医療関係の機関との連携
教育関係の機関との連携
福祉関係の機関との連携
司法関係の機関との連携
◎コラムC 若者支援のための社会制度の整備

M心理面接の基本的な約束事を来談者が守れないことについて
どう考えるか
継続的な心理面接の取り決めは面接者を守ることでもある 
時間の問題 
面接の場所について 
お金の問題は

N心理面接における困った出来事について
面接者を最も困らせること
面接を継続する中で問題が悪化すること
面接者への攻撃性が表出された場合
面接者自身のことをどこまで来談者に開示するか

O心理面接による問題解決はどのような形で起きてくるのか
教育的な指導による変化
内省的な関わりによる変化
自己表現による成熟の「時」を見守ることによる変化
◎コラムD B君の話 ― 困った状況で支えになった夢

P心理面接の終結、あるいは中断をどのように考えるか
終結の目標について
中断か終結か
面接者側の都合で終結になる場合
具体的な別れについて
◎コラムE C君の話 ― 最終回のプレゼント

Q心理面接のポジショナリィ(立ち位置)について
心理面接の基本的なポジショナリィとは
人との関わりが大きく変わってきている現状について
心理面接を実践する専門家の立場
面接者の規定されている条件が生み出す可能性

R心理面接の体験的な学び方について
ロールプレイによる学習
スーパーヴィジョンについて
グループでの事例検討会
教育分析について

■装幀=銀山宏子





心理面接の方法―はじめに

 ここ数年、仕事をしていない無業のあるいはひきこもりの若者の問題が大きく取り上げられています。私がこの問題に関心を持ったのは、横浜市の青少年相談センターという、不登校やひきこもりの生徒や若者の支援をしている公的機関に関わったことがきっかけでした。そこでは、ケースワーカーの専門職の方が中心となり、不登校やひきこもりの若者たちへの支援として、家庭訪問やグループ活動、さらには親の会などを通して支援している、全国的にも珍しい公的な相談機関です。

 そこに関わっている若者たちへの支援について、ワーカーや心理の方々と二〇年近く一緒に研究会で考えてきていますが、やはり社会の変化とともに若者たちの問題も変わってきているように感じています。そこでの関わりが縁で、六年ほど前から若者たちへの支援を行政的に検討する協議会などに参加する機会があり、さまざまな立場からのこの問題への対応を知るにつけ、自分が臨床心理学の立場で実践している領域がどのような立ち位置にあるのかを改めて考える機会になりました。

 行政の立場からはもちろんのこと、社会学や福祉学あるいは教育学の立場からの専門家の方もこの問題について積極的かつ活発に発言しているのに対し、本来きわめて臨床心理学的な問題を内包しているのに積極的な提言のできない自分自身を感じることが時々ありました。一人ひとりとの関わりを重視する心理療法やカウンセリングは、あくまで面接室という守られた空間の活動を重んじ、待ちの立場を重視するあまり、大きく全体を見渡した形での支援体制の構築まで、なかなか目が向かないでいたことに気づかされました。さらに、困っている切実な問題が現実に目の前にあるのに、本人に相談の動機づけがないからといって関わりや支援をあきらめていたのではないかと、自分自身のこれまでの対応を改めて問い返したりしていました。そして、この体験は私が日ごろしている心理臨床の実践を、今少し幅広く考え直して整理する機会にもなりました。

 この本は、そのような視点から、ここ四、五年ほど考えていた内容をまとめたものです。児童・生徒も含めた子どもから若者、そしてその親御さんに幅広い形で支援活動をしている人にとって、心理臨床の立場から、心理面接という枠組みの中で、理解や支援に役立つどのような視点があるのかを示そうとするものです。ここでは実際に問題を抱える人への理解のポイントや、支援をしていくうえで幅広い立場で共有可能な視点を、なるべく誰にでもわかる言葉で整理し、まとめてみることを考えました。その中で最も強調したい点は、やはり人への支援は人と人との関わりであり、それは心理面接の中で最もはっきりとらえられる現象でもあります。そしてまたこの本は、これから心理面接を学ぼうとする人にとっても、これからの心理臨床の実践に取り組むうえで、どのような見方が必要なのか、何を学んだらよいのかの一つの道筋を示している、入門書的な手引きになっているのではないかと思っています。

 最後に、本書を出版するにあたりお世話いただいた、私の院生時代から心理学について幅広い見識をもった編集者としていつも鋭いコメントをくださっていた新曜社社長の塩浦ワさんと、若さと情熱をもって編集に取り組んで本書をまとめてくださった森光佑有さんに深く感謝します。

   二〇一三年 三月

永井 撤