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志賀令明 著

人間理解の心理学
――


A5判並製208頁

定価:本体2100円+税

発売日 12.12.19

978-4-7885-1316-7

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◆看護・介護・保育の心理学シリーズ 第1巻◆

ケアする側がケアされる側をいかに理解するかは、自分の属する世代の文化のみならず、ケアされる側が体験 してきた文化あるいは社会での出来事を幅広く知ることにかかっています。本書はこうしたコンセプトから、看護・介護・保育の現場に働く若 い援助者を読者対象に、幼児から高齢者までの各世代の人々が生きてきた時代や今生きている時代の物語を話題の中心とし、各世代のこころの 特徴および「少子化」「晩婚化」「若者の過剰な自己規定」「嗜癖・依存」「地域社会の崩壊」など、現代社会にみられるさまざまな問題の背 景を考えています。編者は福島県立医科大学看護学部教授。


看護・介護・保育の心理学シリーズ

人間理解の心理学 目次

人間理解の心理学 まえがき

ためし読み
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人間理解の心理学─目次

はじめに 
[看護・介護・保育の心理学シリーズ]刊行にあたって
まえがき
 
第1章 少子高齢時代の心理学
1 はじめに
2 少子高齢社会の諸問題
(1)高齢社会が抱える諸問題
(2)少子化の進展が抱える諸問題
3 「希望がもてない社会」の心理学
4 ポストモダンとはなにか
5 競争社会と職場ストレスだけが問題なのか
【レポート課題】
【参考書】

第2章 情報化の時代と欲求充足メカニズム
1 はじめに
2 インターネットの普及は世界をどう変えたか
3 飽食の時代の欲望と「退屈さ」
4 「退屈さ」と空虚感
5 なぜ「肉食系・草食系」なのか
【レポート課題】
【参考書】
 
第3章 自己愛損傷と人格障害および解離のメカニズム
1 はじめに
2 孤独さの由来
3 境界型人格障害とアイデンティティ
4 ケータイの時代と、境界型人格障害の軽症化
5 自己愛損傷と「解離」の時代
【レポート課題】
【参考書】
 
第4章 現代日本は格差社会なのか?
    ― 晩婚化と少子化の心理学
1 はじめに
2 「格差社会」とはどのような社会なのか
(1)格差とは
(2)経済成長がもたらすもの
(3)文化変容のもたらすリスク
3 豊かな社会と晩婚化
4 少子化社会をもたらすものとは
(1)GDPと少子化
(2)豊かさと少子化
(3)格差社会と少子化
【レポート課題】
【参考書】

第5章 嗜癖・依存で示す生きづらさ
    ― 時代と家族の変貌
1 はじめに
2 地域社会の崩壊と家族の崩壊
3 行動への依存
(1)嗜癖となりやすい行動
(2)不安という時代の空気
(3)子ども時代の不安の蓄積と低い自己評価
4 おわりに ― どう対応すべきか
【レポート課題】
【参考書】
 
第6章 高齢者の過ごしてきた時代背景
1 はじめに
2 大正の終わりから終戦に至るまでの日本
3 当時の農村女性のおかれた境遇
4 団塊の世代の親としての高齢者
5 高齢者と先祖供養
【レポート課題】
【参考書】
 
第7章 現代の高齢者のこころのはたらきとその特徴
1 はじめに
2 単身高齢者が増えている
3 高齢者の抱えるさまざまな身体的・精神的症状
(1)高齢者と認知症
(2)高齢者とせん妄
(3)高齢者とうつ
(4)高齢者とがん
4 高齢者と死
【レポート課題】
【参考書】

第8章 進化心理学からみた大人になるということ
1 はじめに
2 社会的存在としての人間
(1)大人になる過程
(2)社会的存在の芽生え
(3)社会的存在としての関係性の習得
(4)社会的関係の表現としての物理的距離
(5)社会的関係と自律
3 進化史からみた繁殖戦略
(1)生物の繁殖戦略
(2)男女の繁殖戦略の違い
(3)繁殖戦略からみた家族
(4)親密さと攻撃性
【レポート課題】
【参考書】
 
第9章 成人期のこころのはたらきとその特徴
1 はじめに
2 「物語」が機能していた時代
(1)戦後〜昭和30年代まで
(2)昭和40年代〜60年代(高度成長期〜バブル期)
(3)経済の高度成長と「食習慣の変化」
3 消失した「物語」
(1)バブルの崩壊と不景気
(2)2000年代と成人後期
【レポート課題】
【参考書】
 
第10章 親子関係の意味は変わったのか
1 はじめに
2 恋愛と結婚はどう違うのか
3 純粋な関係としての家族像
4 高齢者たちはなぜ消えたか
5 児童虐待と親子関係
6 看取り看取られる関係としての親子関係は可能か
【レポート課題】
【参考書】
 
第11章 老年看護・介護現場の心理学
1 はじめに
2 新しい老年期の意味
3 老年看護学の特徴
4 老年看護・介護と心理学
【レポート課題】
【参考書】
 
第12章 成人看護現場の心理学
1 はじめに
2 成人の看護の特徴
3 経過別成人看護学
4 成人看護と心理学
【レポート課題】
【参考書】
 
第13章 小児看護現場の心理学
1 はじめに
2 子どもにとっての入院という体験
3 入院する子どもへの援助
(1)環境づくり
(2)子どもへのプレパレーション
4 病気を抱える子どもと家族
(1)子どもや家族にとっての病気になることの意味
(2)子どもへの病気の説明
5 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第14章 災害と被災の心理学
1 はじめに
2 東日本大震災と原発事故
(1)巨大地震による恐怖
(2)巨大津波による恐怖
(3)原発事故による恐怖と不安
3 大震災発生時の病院の状況
4 大震災直後の避難所生活とこころのケア
(1)大震災直後の避難状況
(2)避難者のこころのケア
(3)避難所生活をする人への留意点
5 大震災発生後1年を経てからのこころのケア
【レポート課題】
【参考書】
 
第15章 被災地での支援からの学び
    ― 心のケアチームの活動を通して
1 はじめに
2 何が現実であるのかが捉えにくい状況での判断の難しさ
3 本人を取り巻く環境を考慮した治療 ― ケア計画の必要性
4 災害および原発事故がもたらした環境の変化と精神的影響
5 その土地に暮らす人々の文化とこころの健康
6 災害時の支援を行ううえで大切にしたいこと
【レポート課題】
【参考書】
 

文  献
人名索引
事項索引






まえがき

本書は『人間理解の心理学:こころの物語のよみ方』という書名で、看護・介護・保育の心理学シリーズの第 1巻として、ケアする側がいかにケアされる側を理解して、しかも一方的にケアギバーとして振る舞うのではなく、ケアする側・ケアされる側 双方にとって円滑な実りある関係をもたらすことを目的に書かれたものです。

 ケアの場面では傾聴ということばがよく聞かれます。傾聴とは、文字通り耳を傾けて相手の話を一生懸命聴くことです。しかし傾聴は、単に 耳を傾けるだけでは足りない仕事でもあります。というのは傾聴を通じて、私たちはその人の人生そのものに触れることになるかもしれないか らです。すなわちそれは当人のたどってきた歴史に触れるということであり、歴史に触れるということは自ずと当人が暮らしてきた社会や文化 に触れるということになります。

 つまり、ケアや傾聴をきちんと行うためには、私たちは自分の属する世代の文化のみを知っているだけでは足りず、幼児から高齢者世代まで が体験してきた(私の恩師である社会心理学者の安倍淳吉教授は「水路づけられた」ということばを使いました)文化あるいは社会での出来事 を知っておく必要があると思うのです。したがって本書は、読者のみなさんの世代、そのご両親の世代、さらには祖父母の世代までの三代にわ たって、それぞれの世代がどのような時代の物語の中に生き、また現在生きているのかを話題の中心にまとめています。

 まず第1章から第5章では、私たちが日常を過ごしている現在がどのような時代であるかということについて、「少子高齢社会」「競争社会」 「情報化社会」「格差社会」といった鍵となる理解をもとに、少子化、晩婚化、若者の過剰な自己規定、嗜癖・依存、地域社会の崩壊といった 現代社会のさまざまな問題の背景を考えました。

 第6章と第7章では、まず高齢者の育ってきた時代背景と文化を探り、次いで高齢者に現在多くみられるさまざまな身体的・精神的症状、避け ることができない死という問題について考えました。第8章から第10章では少し視点を変え、進化心理学からみた「成熟」について、団塊の世 代の過ごした時代とそのこころの特徴について、親子関係や家族像の変容について、それぞれ取り上げました。そして第11章から第13章では、 老人・成人・小児の看護・介護現場において、実際にどのような関係性が看護される側・する側で展開されやすいかを考えてみました。
< /br>  さらに、私たちの社会に最近重大なインパクトをもたらした出来事として、2011年3月11日に発生した東日本大震災が挙げられます。私のい る福島のその時の状況、震災直後ないし現在も継続するこころのケアを要する問題と支援の展開、震災による喪失体験がわれわれのこころに与 えた影響などについて、その記憶が風化しないうちにと思い、第14章と第15章にまとめました。

 このように本書では、人間理解という視点からかなり多くの情報を盛り込んでいます。読み返すほど味が出てくると思います。最低3回は読 んでみてください。

 最後になりますが、本書を編集する機会を与えていただいたわが国のヒューマン・ケア心理学の創始者岡堂哲雄先生と、新曜社の塩浦ム社長、 編集部の森光佑有氏にあつくお礼を申し上げます。

2012年10月 急な秋の訪れにとまどいながら  編者・志賀令明