不妊治療者の人生選択

ライフストーリーを捉えるナラティヴ・アプローチ

著者 安田 裕子
ジャンル 社会学 > ナラティヴ
出版年月日 2012/09/20
ISBN 9784788513044
判型・ページ数 A5・304ページ
定価 4,180円(本体3,800円+税)
在庫 在庫あり
子どもを産めないこととは? 家族を築くこととは? 不妊治療をやめ養子縁組を選んだ女性たち,中絶した未婚女性たちへのインタビューから浮かび上がる子どもをもつことをめぐる葛藤と人生選択。秘められがちな経験にアプローチした貴重な記録。
不妊治療者の人生選択─目次

 はじめに

 第1章 生殖補助医療技術の発展とその問題点
 第1節 受胎が目指される不妊とその治療
 1 不妊を捉える社会的なまなざし
 2 生殖補助医療技術の発展と不妊治療の動向
 3 不妊治療に関する心理社会的支援
 第2節 不妊治療をする選択、不妊治療をやめる選択
 1 不妊治療をする選択へと駆り立てられる女性たち
 2 受胎が目指される不妊治療現場
 3 不妊治療をやめる選択 ― その後の人生を展望する転換点として
 第3節 支援を目的とした生涯発達心理学的研究へ
 1 先行の研究を捉える枠組み
 2 不妊治療中の人を対象に支援の有用性や効果を検討した研究
 3 不妊治療中の人を対象に感情・認知や経験を検討した研究
 4 不妊治療後の人を対象に感情・認知や経験を検討した研究
 5 本書の位置づけ

 第2章 理論的・方法論的な基盤
 第1節 不妊治療でも受胎しなかった成人期女性の生涯発達
 1 生涯発達心理学とはどのような学問か ― 生涯発達を捉えるモデルから
 2 子どもを産み育てることを超えた女性の生涯発達
 第2節 ライフストーリーを捉えるナラティヴ・アプローチ
 1 ナラティヴとは
 2 ナラティヴ・アプローチの特徴と機能
 3 対話的ナラティヴとしてのインタビュー法 ― ライフストーリーの産出
 4 ライフストーリーを通してみる生涯発達
 第3節 人生径路と選択を捉えるアプローチ
     ― 多様性と複線性を描く複線径路・等至性モデル(TEM)

 第3章 不妊治療で受胎しなかった女性へのインタビュー ― 協力者と方法
 第1節 受胎しなかった当事者女性のライフストーリーへの着目
 第2節 インタビュー協力者
 1 インタビュー協力者のエントリー
 2 語りデータの収集
 3 インタビュー協力者の概要と各章へのデータの適用

 第4章 子どもをもつ意味の問い直し ―「産み」「育てる」選択の中で
 第1節 不妊経験の多様性をプロセスとして捉える
 1 当事者の不妊経験への接近
 2 複線径路・等至性モデル(TEM)
 3 語りデータの分析
 4 不妊経験の時間軸に沿ったプロセス
 第2節 不妊経験のライフストーリー
 1 ・型:養子縁組切替型 ― Bさんの場合
 2 ・型:子どもなし選択型 ― Eさんの場合
 3 ・型:養子縁組浮上/子どもなし選択型 ― Jさんの場合
 第3節 不妊経験のもつ意味
 1 4つの類型に示される子どもを望む思いのプロセス
 2 3事例における個別の経験が示す意味
 3 不妊経験の意味の問い直し ― TEMの意義と関連させて
 第4節 まとめ ― 類型化と事例提示による不妊経験の理解
 第5章 不妊治療経験の語り方にみる発達― 不妊治療を始め、葛藤し、やめる選択に至るまで

 第1節 不妊治療への期待から治療をやめる選択へ
 1 生殖補助医療技術への価値づけからの移行
 2 ライフストーリーの語り方にみる成人期女性の発達
 3 語りデータの分析
 第2節 不妊治療経験の語り方
 1 〈行為主体の語り〉の型 ― Cさんの場合
 2 〈共同の語り〉の型 ― Hさんの場合
 3 〈逡巡の語り〉の型 ― Iさん、Jさんの場合
 第3節 3つの型の差異と共通性
 1 医療従事者との関わりの違いによる発達的変容
   ― 立て直していく力、育んでいくつながり
 2 不妊治療経験での葛藤や困難を通じた発達的変容
   ― 広がりゆく生活設計と人生展望、見えてくる方向性
 3 〈逡巡の語り〉の型の特徴と潜在する発達的変容の可能性
 第4節 まとめ ― ライフストーリーの力動的な組織化と意味の付与

 第6章 非血縁の家族の築きと「普通」という認識― AIDをする選択、養子縁組をする選択の中で
 第1節 非血縁の家族をめぐる問題
 1 非配偶者間人工授精(AID)という不妊治療 ― 忌避と需要の狭間で
 2 AIDの秘密保持の原則とその弊害 ― 子どもの権利保護との相克
 3 非血縁の家族への留意 ― 子どもの視点を組み込んで
 4 インタビューと語りデータの分析
 第2節 非血縁の家族を築く女性のストーリー
 1 非血縁の家族を築く経験の時間軸に沿ったプロセス
   ― AIDをする選択から養子縁組をする選択を通して
 2 非血縁の家族を築く経験のライフストーリー
 第3節 社会の家族認識と告知
 1 社会に流布する「普通」の家族という認識 ― AIDと養子縁組の対比から
 2 多様性としての非血縁の家族と子どもへの告知― 養子縁組からAIDへの示唆
 第4節 まとめ ― 変容するライフストーリー

 第7章 養子縁組で子どもを育てる経験と課題― 不妊治療者のその次の選択からの提言
 第1節 養子縁組という選択
 1 養子縁組という制度
 2 インタビューと語りデータの分析
 第2節 非血縁の親子関係を築く養親子におけるストーリー
 第3節 非血縁の子どもを育てる選択と意思確認
 1 養子縁組に伴う葛藤と親の態度
 2 子どもを望む気持ち
 第4節 まとめ ― 非血縁の親子関係を築く経験のむすび方

 第8章 未婚の若年女性の中絶経験 ― 受胎をめぐる選択
 第1節 人工妊娠中絶
 1 人工妊娠中絶への社会的評価 ― 未婚の若年女性に対する否定的なまなざし
 2 語られない喪失経験としての中絶
 3 時間経過と社会文化的制約の観点から中絶経験を捉えるために
   ― 複線径路・等至性モデル(TEM)
 4 インタビューと語りデータの分析
 第2節 時間軸に沿って捉えた中絶経験のプロセス
 1 気持ちや認識、行動や選択の径路
 2 時期に区分した中絶経験 ― 個別の語りから
 3 パートナーとの関係性
 第3節 中絶経験の理解に向けて
 1 中絶経験を語ることができない辛さ
 2 教育と心理社会的支援への示唆
 3 必須通過点による行動や選択の焦点化の意義
 4 個別多様な中絶経験の可視化の意義― 行動や選択の共通性と個別性、可能な径路から
 第4節 まとめ ― 中絶経験を生涯発達につなげる視点

 第9章 不妊当事者への生涯発達的支援
 第1節 情報提供と心理教育による選択支援 ― 不妊治療を始める段階での支援
 1 子どもをもつことをめぐる選択の代替性の保障 ― 養子縁組という選択肢
 2 選択支援の環境設定 ― 不妊相談の専門家の養成とともに
 3 当事者の生活設計や人生展望に位置づけた選択支援
 第2節 不妊の喪失への支援 ― 不妊治療中における支援
 1 喪失をもたらす不妊のスティグマ ― 自ら支援を断つ心理機序
 2 スティグマへの対処 ― 当事者グループの効用
 3 あいまいな喪失への対処 ― 個人カウンセリングの効用
 4 男女それぞれの喪失への対処の展望 ― カップル関係を視野に入れて
 第3節 不妊経験の社会的共有 ― 時空を超えた支援
 1 当事者経験の社会的共有の意義
 2 当事者経験に研究者の視点が介在することの意義
 3 複線径路・等至性モデル(TEM)を用いることの意義
   ― 社会啓発と教育への示唆
 4 社会的共有を媒介にした語り手の発達的変容
 第4節 新たな生殖補助医療技術を受ける人々への支援― 多様な立場の当事者の視点
 第5節 今後の課題
 1 不妊に悩む当事者への支援に関する課題― カップルカウンセリングに資する知見に向けて
 2 語りを聴き取る行為に関する課題― ナラティヴを媒介にした生涯発達に資する知見に向けて

 おわりに ― 当事者から捉えられる受胎をめぐる選択肢  259
 注     263
 引用文献  (7)
 事項索引  (3)
 人名索引  (1)
 装幀=難波園子

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