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小山田隆明 著

詩歌療法
――詩・連詩・俳句・連句による心理療法


四六判290頁

定価:本体2900円+税

発売日 12.05.25

ISBN 978-4-7885-1293-1

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◆詩の新しい可能性◆

詩は私たちの心を奮い立たせ、傷ついた心を癒す力をもっています。「千の風になって」に悲しみを癒し、「上を向いて歩こう」で心を奮い立たせた人たちも多いでしょう。また若い頃、詩を読み、書いていた経験をもっている人もいるでしょう。しかし、これまで詩が心理療法として体系的に考察されることはありませんでした。本書は、詩歌療法の基礎となる概念から詩歌療法の理論と臨床への適用、これまで精神医学領域で行われてきた詩による心理療法の実践まで、広く紹介して考察したはじめての本と言えます。心理療法における詩の大きな可能性に気づかせてくれるというだけでなく、詩の愛好家にとっても、新しい角度から詩をとらえるよい機会となる本です。


詩歌療法 目次

詩歌療法 まえがき

ためし読み

◆書評

2012年7月11日、聖教新聞

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詩歌療法─目次
目次
はじめに

第一章 詩の特徴
1 詩とは何か
2 文体論からみた詩
3 詩作の動機づけ
4 詩作過程の事例―大岡信「わが夜のいきものたち」
5 詩を読むとは
6 詩の了解心理学

第二章 詩の心理学
1 最初の詩の理論―アリストテレス
2 詩の動機づけ―フロイト
3 詩を生み出すもの――ユング

第三章 詩歌療法の理論
1 リーディの詩歌療法
2 ヘニンガーの詩歌療法
3 マッツアの詩歌療法

第四章 詩歌療法の適用
1 詩歌療法とブリーフ・セラピー
2 詩歌療法の適用例
3 詩歌療法の技法

第五章 連詩療法
1 連詩療法とは何か
2 コラボレイティブ・ポエム 

第六章 俳句療法
1 俳句の心理的過程
2 俳句療法
3 ハイク療法

第七章 連句療法 
1 連句療法の心理的過程
2 連句療法の適用

あとがき
註 
引用文献(12)
事項索引( 5 )
人名索引( 1 )

装幀=難波園子 




詩歌療法 はじめに


 古くはハイネやダンテの詩に心を奮い立たせ、白秋や藤村の詩に傷ついた心を癒してきた人々がおり、近くは「千の風になって」に悲しみを癒し、「旅立ちの日に」で心を奮い立たせる人たちがいるのに、詩の心理治療的効果についてはエピソード的な報告があるだけで、これまで心理療法として体系的に考察されることはありませんでした。

 若い頃、詩を読み、書いていた経験が多くの人にあるはずです。詩を読み書くことは、そのときの自分を知る最も確実な方法であったからです。また、ある詩に出会い、強く心を動かされた経験もあったはずです。それは、現代詩の一行あるいは一節であったり、俳句や短歌の一句であったかもしれません。その詩句が強い影響力をもっていたのはなぜでしょうか。私たち心理療法家は、この問いに真正面から取り組んで来なかったように思います。

 詩人は、詩は感じられる思想であり、感覚による認識であり、詩を書くことは曖昧模糊としたものをはっきりと気づかせ、日常的な世界を新しく作り変えることであり、読む者に真理を生きたまま送り込むと言い続けてきたように思います。しかし、心の問題に取り組む心理療法家が、「詩を読み、書くことはそれまでの認知的世界を変容させる」という詩人の言葉に、なぜ気づかなかったのでしょうか。

 本書は、七つの章から構成されています。第一章と第二章は、詩歌療法の基礎となるものについての考察です。第一章では、詩とは何かを作者と読者の両方の視点から考察し、第二章では、アリストテレス、フロイト、ユングの詩の心理学をとりあげます。第三章と第四章は、詩(現代詩)による詩歌療法の理論と臨床への適用、一九八〇年代以降の詩歌療法の紹介と集団詩歌療法を取り上げています。第五章〜第七章では、連詩療法という新しい技法を、さらにこれまで精神医学と心理療法の領域で行われてきた俳句(ハイク)、連句による心理療法の研究を、広く詩の心理学に基づいて考察しております。

 詩の心理療法に、少しでも理論的根拠を与えることができればと願っています。さらには、学校で施設で病院で、詩歌療法を用いることで悩み苦しんでいる人たちの心を少しでも軽くするのに本書が役立つならば、望外の幸せです。

     二〇一二年 春