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P・バーガー、A・ザイデルフェルト 著
森下伸也 訳

懐疑を讃えて
――節度の政治学のために


四六判上製216頁

定価:本体2300円+税

発売日 12.03.09

ISBN 978-4-7885-1279-5

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◆もっと懐疑を!◆

近代は、世俗化(脱宗教化)はもたらさなかったが、多元化、相対化をもたら した。そのため、たえず選択に迫られ、「人は自由であるべく呪われている」。 それを逃れるために、人は「確信」さらには「狂信」に走る。ファンダメンタ リズムです。その陥穽にはまらないためには「懐疑」が必要だ、とバーガーた ちは主張します。全体主義が恐れるのは懐疑なのです。近代の相対主義が狂信 主義、全体主義、シニシズムなどを生み出していく構造を、「懐疑」をキイワ ードに、喫煙、死刑、移民などの具体的問題を例に解き明かします。最後に、 懐疑が具現した自由民主主義の維持、そして「懐疑を懐疑する」ことも必要だ として、懐疑と確信のバランスがとれた「節度の政治」を、あくまでもユーモ アをもって訴えます。楽しみながら深く考えさせられる一冊です。


懐疑を讃えて 目次

懐疑を讃えて まえがき

P・バーガー、T・ルックマン 著 現実の社会的構成

ためし読み
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懐疑を讃えて―目次

Peter Berger, Anton Zijderveld
IN PRAISE OF DOUBT
How to Have Convictions Without Becoming a Fanatic
Copyright c 2009 by Peter Berger and Anton Zijderveld
Japanese translation rights arranged with
HarperCollins Publishers
through Japan UNI Agency, Inc.,Tokyo.

目次――懐疑を讃えて

第一章 近代の神々
世界における世俗化の現状やいかに?
多元性とは何か。それは個人と社会にとって何を意味するか?
運命から選択へ近代はどう転換するのか?
多元性は宗教に対して個人的・集合的にどう影響するのか?

第二章 相対化のダイナミズム
相対化とは何か?
認知的防衛とは何か? そしてそれはなぜ必要なのか?
相対化は宗教に何をもたらすか?
「相対化の弁証法」の意味は? 

第三章 相対主義 
宗教・道徳上の「他者」を見る目に相対化はどう影響するか? 
ポストモダニズムとは何か? そしてそれは西洋的世界観にどう調和するのか?
相対主義者はいかにして自己の相対化を回避しうるか?
相対主義の何がまずいのか?

第四章 ファンダメンタリズム 
「ファンダメンタリズム」という言葉はどのように生まれたか? 
現代のファンダメンタリズムの特徴とは? 
ファンダメンタリズムと相対主義はどうかかわるか? 
小規模なファンダメンタリズムと全体社会のファンダメンタリズムはどう見えるか?
ファンダメンタリスト集団は一般にどんな要件を課すのか?
ファンダメンタリストの究極のコストとは?

第五章 確信と懐疑
絶対的な真理もいくらかはあるのではないか?
〈狂信家〉は懐疑にどう対処するのであろうか? 
そして、懐疑とは何か?
懐疑は「全か無か」的命題か? 
真摯な懐疑を単なるシニシズムから分かつものは? 
相対主義に陥ることなく懐疑は存続しうるか? 

第六章 懐疑の限界
どんな点で、どのくらい、懐疑そのものが懐疑されるべきか? 
われわれはどのようにして道徳的確信にたどりつくのか? 
哲学的人間学はこの議論に何をもたらすか?
道徳は「人間性」の一部か?
道徳は原則遵守だけの問題か?
健全な懐疑という風土を社会全体としてどう維持していくか? 

第七章 節度の政治学 
「節度の政治学」は何をめざすか?
全人類にその資格がある自由とは何か?
人間の自由と尊厳は制度化できるか? 
節度の倫理はどう働くか? 

訳者あとがき 
索引 
装幀――虎尾 隆


懐疑を讃えて 謝辞


謝辞  本書の構想は、現在はそこの上級研究員となっているピーター・バーガーが以前所長をつとめていたボストン大学文化・宗教・国際問題研究所のプロジェクトから生まれた。プロジェクトの名称は「相対主義とファンダメンタリズムのはざまで」。欧米の宗教研究者たちでひとつの国際的な作業グループをつくり、キリスト教またユダヤ教のさまざまな伝統的視点をふまえながら、そのような「中道的立場」の輪郭線を描こうとするものであった。このプロジェクトから生まれた幾多の論文は個々別々に刊行されることになっている。プロジェクトは〈相対主義/ファンダメンタリズム〉という二項対立をめぐる宗教的諸側面だけをあつかおうとするものであったが、それは道徳的にも政治的にも非常に重要な意味合いがあることを参加者たちはすぐに認識することになった。とりわけ、宗教的信仰には懐疑がともなう場合がある――つまりひとは確信を欠いたまま信仰をいだきうる――とする点で、プロジェクトの参加者はおおよそ一致していたが、一方で彼らは、たとえそうであっても人々は高度な確信をもって道徳的な判断をなしうるばかりか、現にそうしており、またそうした判断がしばしば政治的な結果をもたらしてきたということを認めざるをえなかった。だがいったい、宗教的な不確実感と道徳的確信とはどう共存しうるのだろう? これは前述のプロジェクトの議題を超えた問題であり、それこそバーガーが「中道的立場」の宗教的側面と道徳的/政治的側面の両方に焦点を当てた本を書こうと決意した理由にほかならない。彼が作業グループのメンバーではなかったアントン・ザイデルフェルトに共著者となってくれるよう要請したのは、この問題についてだれか自分よりも豊富な哲学的知識を有する人間と一緒に仕事がしたかったからである(ザイデルフェルトは社会学と哲学の両方の博士号をもっている)。いずれの章も二人が協力して書いたものであるが、この共同作業は生産的であると同時に愉快なものであった。

 著者としてはデーヴィッド・キエルスノフスキー氏に心から御礼申し上げたい。氏は本書のもとになったプロジェクトに惜しみなく資金を提供されたばかりでなく、二人の著者が本書のために、一度はアムステルダム、もう一度はボストンに集まって共同作業することを可能にして下さった。

P・バーガー