戻る

村尾泰弘 編著

人間関係の心理と支援
――グループ・アプローチのすすめ


A5判232頁

定価:本体2200円+税

発売日 11.12.25

ISBN 978-4-7885-1265-8

◆amazon.co.jpへ
cover

◆紀伊國屋書店Books Web へ

◆7ネットショッピングへ



◆看護・介護・保育の心理学シリーズ 第3巻◆

第三回配本の本書は、看護師や介護福祉士、保育士など、現場で実践に携わる 方々や、資格取得をめざす学生さんを対象に、グループ・アプローチを紹介す る入門テキストとして編集されました。グループ・アプローチとは、人間関係 を取り巻く諸問題に際して、集団の持つ力を活用して関係の様相を変容させ、 解決をめざすアプローチの総称です。当アプローチを理解するための臨床心理 学や社会心理学の基礎知識をひととおり網羅し、看護・介護・保育の各職域で 生じる今日的な問題や普遍的な問題を扱う数々の事例を取り上げ、アプローチ を活かした実践をイメージしながら学べるところが大きな特徴です。


看護・介護・保育の心理学シリーズ

人間関係の心理と支援 目次

人間関係の心理と支援 まえがき

Loading

人間関係の心理と支援―目次

[看護・介護・保育の心理学シリーズ]刊行にあたって
まえがき

第1章 看護に求められる人間関係の理解と対応
    ― 看護の最前線から
1 はじめに
2 看護の現場における現状
(1)医療の複雑化と急速な変化
(2)医療における倫理的問題
(3)患者の意識の変化(権利意識、情報通)
(4)患者をはじめとする一般人のイメージする看護師と実際のズレ
(5)患者を取り巻く人間関係の変化
(6)看護師の仕事内容の増加、質的変化
(7)看護師に求められる資質、能力への期待
3 看護をめぐるさまざまな人間関係
(1)看護スタッフ間の人間関係 ― 協力関係をいかにつくるか
(2)上司(師長、看護部長)との人間関係 ― 報告、相談
(3)医師、コ・メディカルスタッフとの人間関係
  ― 協働関係、他者理解がベースとなった関係づくり
(4)患者との人間関係
4 看護師に求められる人間関係力 ― 対人関係力、介入力
(1)関係をつくる対人関係力
(2)関係を継続し、状況に働きかける介入力
(3)さまざまな対人関係力
5 看護師に求められる自己コントロール力
(1)ストレスへの対処力
(2)自分と対峙しつづける力
【レポート課題】
【参考書】

第2章 介護に求められる人間関係の理解と対応
   ― 介護の最前線から
1 はじめに
2 「介護」の現状
3 介護における専門技術とは
4 利用者と向き合うこととは
5 介護現場の専門職
6 介護に求められる人間関係とは
【レポート課題】
【参考書】

第3章 保育に求められる人間関係の理解と対応
   ― 保育の最前線から
1 はじめに
2 保育所保育における人間関係の位置づけ
(1)保育所の役割
(2)保育所保育指針における人間関係
3 子どもの発達と人間関係
(1)二者関係のなかで育つ
(2)豊かな人間関係を育む経験としての遊び
(3)特別なニーズをもつ子どもの育ちと人間関係
4 おわりに
(1)「関係に生きる存在」として
(2)「関係に働きかける存在」として
【レポート課題】
【参考書】

第4章 グループ・アプローチのエッセンス
1 はじめに
2 集団のなかで自己と他者の理解を深める
  ― エンカウンター・グループ
(1)エンカウンター・グループとは
(2)エンカウンター・グループの特徴
(3)望ましいファシリテーターのあり方とは
(4)グループの展開
(5)近年のエンカウンター・グループの動向
3 「いま、ここ」でのかかわり ―Tグループ
(1)Tグループの特徴
(2)Tグループとエンカウンター・グループとの比較
(3)Tグループがもたらす学び
4 社会性を身につける ―ソーシャル・スキル・トレーニング
(1)SSTの実際
(2)SSTの大事な四つの基軸と、真のねらい
5 演じることで自分を変える ― 心理劇とロールプレイ
(1)心理劇とは
(2)サイコドラマの技法と治療的な要素
(3)ロールプレイ
(4)演じることの自発性と創造性
6 人の心理や行動の背景には家族がある ― 家族療法
(1)家族療法の萌芽と発展
(2)家族療法の基本的概念
(3)多様な学派と介入方法・心理教育
7 体を使って心を癒やす ― 動作法
(1)心理臨床家が「動作法」を考案
(2)動作法によって、主体的で適切な努力のしかたが身につく
(3)動作法の実際
8 親子の関係を変える ― ペアレント・トレーニング
(1)子どもの行動を三つに分けて記録する
(2)好ましい行動をほめる
(3)好ましくない行動に対応する
(4)子どもの協力を引き出す
(5)許しがたい行動に対応する
9 当事者が集まって生きる知恵を得る
  ― セルフヘルプ・グループとサポート・グループ
(1)セルフヘルプ・グループと集団心理療法の違い
(2)セルフヘルプ・グループとサポート・グループ
(3)レイ・エキスパートという考え方
【レポート課題】
【参考書】

第5章 グループ・アプローチに役立つ社会心理学の基礎知識
1 はじめに
2 態度はどう決まる、どう変わる ― 態度形成と態度変容
(1)態度とは ― 定義、態度成分、態度の機能
(2)態度形成
(3)態度変容
(4)説得(他人の態度を変える試み)
3 他者との距離のとり方は人によって違う ― 対人距離
(1)密接距離
(2)個体距離
(3)社会的距離
(4)公衆距離
4 友達の友達は友達? ― バランス理論
5 原因をどう考えるかで次の行動は変わる ― 原因帰属
(1)成功と失敗の原因帰属
(2)人の性質の推定
6 人は集団のなかで孤立したくない ― 同調と服従
7 第一印象は当たる? ― 予言の自己実現
8 教師の期待は子どもを伸ばす ― ピグマリオン効果
9 集団場面に働く力学とは ― グループ・ダイナミックス
(1)他者存在の影響 ― 社会的促進と社会的怠慢
(2)集団の意思決定
【レポート課題】
【参考書】

第6章 対人援助職のメンタルヘルス
1 はじめに
2 ストレスとバーンアウト
(1)ストレスとは何か
(2)ストレス過程
(3)バーンアウト
(4)ストレスとうつ状態
3 トラウマとPTSD
(1)PTSD(心的外傷後ストレス障害)
(2)トラウマと自責感
4 二次受傷
5 転移と逆転移
6 スーパービジョンとケースカンファレンス
(1)スーパービジョンとケースカンファレンスの必要性
(2)スーパービジョンとケースカンファレンスの意義
(3)スーパービジョンの機能
(4)スーパービジョンの形態と方法
【レポート課題】
【参考書】

第7章 看護の現場に活かすグループ・アプローチ
1 はじめに
2 精神科医療におけるグループ・アプローチ
(1)運営の実際
(2)リワーク・グループの実施例
(3)ファシリテーターの介入のポイント
(4)グループでの話し合いの効用
3 セルフヘルプ・グループ
(1)未熟児(低出生体重児)を持つ親の会
(2)セルフヘルプ・グループを継続する
4 看護師を対象とするグループ・アプローチ
(1)病院とのかかわり
(2)副師長を対象とする研修の例
【レポート課題】
【参考書】

第8章 介護の現場に活かすグループ・アプローチ
1 はじめに
2 肢体不自由児施設
(1)肢体不自由児施設とは
(2)チームアプローチの事例
(3)肢体不自由児施設の生活
3 重症心身障害児施設
(1)重症心身障害児施設とは
(2)チームアプローチの事例
(3)重症心身障害児施設の生活
4 特別養護老人ホーム
(1)高齢者福祉サービスにおけるグループとは
(2)通所サービスにおけるグループ・アプローチ
(3)特別養護老人ホームにおけるグループ・アプローチ
(4)「ユニット型」におけるグループ・アプローチ
(5)高齢者の求めるグループの役割
【レポート課題】
【参考書】

第9章 保育の現場に活かすグループ・アプローチ
1 はじめに
2 保育所
(1)同じ職場の保育士が行うグループ・アプローチ
(2)異なる職場どうしの保育士が行うグループ・アプローチ
3 児童養護施設(1)― ペアレント・トレーニングの適用
(1)準備段階
(2)ペアレント・トレーニングの手続き
(3)グループ・セッションによる効果
4 児童養護施設(2)― 性教育のグループワークについて
(1)児童養護施設におけるグループ・アプローチによる支援
(2)児童養護施設におけるグループ・アプローチを用いた性教育
(3)性被害予防のためのグループワークについて
(4)グループワークを実施する際に配慮する点
(5)グループワークの実際
【レポート課題】
【参考書】
文  献
人名索引
事項索引


人間関係の心理と支援 まえがき


 わが国では心理的なアプローチというと、一対一のかかわり、すなわち個人へのアプローチがまず想定される場合が多いのではないでしょうか。これに比べると、集団を対象とするグループ・アプローチは、一般に取り上げられる機会も多くはなく、個人へのアプローチを補うものといった扱いを受けているようにも思えます。しかし実際には、グループ・アプローチは個人へのアプローチと同様に、多くの対人援助場面で実施され、有効な効果をもたらしています。

 本書は看護・介護・保育を学ぶ学生さんや、看護師や介護福祉士、保育士など、現場で活躍される実践家の方々を読者対象として念頭に置き、このグループ・アプローチをご紹介する入門テキストとして編集されました。グループ・アプローチとは、複数の対象者に対し、集団のもつ力を活用して心理的な支援を行う手法の総称です。看護・介護・保育の領域では、とりわけこのアプローチが有効性を発揮するものと、編者は確信しています。

 さて、本書の構成ですが、まず第1章~第3章では、看護・介護・保育の現場の人間関係に注目し、その理解と対応において、現在生じている課題、また普遍的に生じている課題を取り上げて論じました。看護・介護・保育の領域は、人との直接的なかかわりを仕事にしています。つまり、人間関係そのものが仕事の本質にかかわっています。したがって、グループ・アプローチの諸技法のご紹介に先がけて、まずは現場の実情や問題をご紹介しています。

 続く第4章は、「グループ・アプローチのエッセンス」です。この章では、臨床心理学や社会福祉学の視点から、グループ・アプローチの諸技法の理論的枠組みについて、わかりやすく、しかもコンパクトに解説するように努めました。さらに第5章の「グループ・アプローチに役立つ社会心理学の基礎知識」では、実務にすぐにでも役立つ社会心理学の知見を満載しました。

 また、第6章では看護・介護・保育などの対人援助職のメンタルヘルスに焦点を当てました。対人援助職はとりわけストレスを抱えやすい領域です。実際、これらの現場では、メンタルヘルスの問題やストレスが原因で退職される方々が少なくありません。したがって、人間関係を取り巻く諸問題への支援に正面から向きあうならば、支援者の側に必須の知識であるといえましょう。

 そして、第7章~第9章では、これまでご紹介した「学び」の応用として、数々の事例を取り上げて、グループ・アプローチの実践を解説しました。看護・介護・保育の各現場で、グループ・アプローチを実際どのように導入したらよいのか、どのように展開していけばよいのか、初歩から具体的に解説しています。ぜひ、各現場でこれらの実践を試していただけましたら望外です。

 本書はこれまでご紹介しましたとおり、看護・介護・保育を学ぶ学生さんや、その仕事に就いている実践家の方々のために書かれたものです。しかし、それらの読者にとどまらず、心理学を学ぶ学生さん全般、心理職に就く方々全般にとっても、グループ・アプローチを知るための恰好の入門書になったと自負しています。本書が対人援助の一助になることを切に祈っています。

 最後になりましたが、このたび、このような意義深い編集の機会を与えてくださいました本シリーズの企画者である岡堂哲雄先生と、本書の刊行まで暖かく編者を励まし、細やかな編集作業に取り組んでいただいた新曜社社長・塩浦ム氏と編集部の森光佑有氏に心から感謝申し上げます。

2011年11月 遠く色づき始めた山並みを眺めながら
編者・村尾泰弘