戻る

外山美樹 著

行動を起こし、持続する力
――モチベーションの心理学


四六判240頁

定価:本体2300円+税

発売日 11.12.15

ISBN 978-4-7885-1264-1






◆ほめれば、やる気が起こる?◆

「褒美をもらうとモチベーションが高まる」「子どもはたくさん褒めて伸ばせ」「レベルの高い学校に行ったほうが学習意欲が高まる」「悲観的に考えると失敗する」「要は意識の持ち方次第だ」・・・ どれも、一般的に信じられている常識です。でも、心理学の世界では、このようなモチベーションの考え方を覆す知見が、次々と発見されています。その発見とは? モチベーションを高めるとうたう自己啓発本はたくさんありますが、心理学の知見をきちんと踏まえた一般書は、意外にもほとんどありません。新しい心理学の成果をわかりやすく理解できる待望の一冊です。ロングセラー『人を伸ばす力』と併せての展示をお願いいたします。著者は筑波大学准教授。


行動を起こし、持続する力 目次

行動を起こし、持続する力 まえがき

Loading

行動を起こし、持続する力―目次

第1章 モチベーションとは
時代によって異なるモチベーションの源泉
モチベーションを生み出す生理的動因 ─ ホメオスタシスの考え
感覚遮断の実験
パズルを楽しむサルたち
さまざまな内発的動機づけ
2つ目のモチベーション ─ アメとムチによるモチベーション

第2章 アメとムチの隠された代償
20年の時を経て
アメを与えるとモチベーションが下がる!?
思いがけず与えられる報酬ならば大丈夫
インドでの実験
報酬が創造力に与える影響
ムチを用いてもうまくいかない

第3章 ほめることは効果的?
ほめれば伸びる?
「ほめるとモチベーションが高まる」という考え方
「ほめるとモチベーションが下がる」という考え方
ほめることによってモチベーションやパフォーマンスが低下する理由
ほめ方次第でモチベーションが異なる
相手をコントロールするほめ方、自己コントロール感を高めるほめ方

第4章 自律性とモチベーション ─ 自己決定理論
「内発的動機づけ」概念の再発見
自己決定理論
内発的動機づけと外発的動機づけ
外発的動機づけのなかでの好ましい動機づけ
内在化を促進するために

第5章 小さな池の大きな魚効果
学校の学業レベルと有能感
「小さな池の大きな魚効果」に関する心理学の研究
「小さな池の大きな魚効果」の長期的影響
英雄の力をかりる栄光浴
自分の能力に見あった集団に所属することの効果
「小さな池の大きな魚効果」から言えること

第6章 人との比較の中で形成されるモチベーション ─ カギとなるのは有能感
まわりの中で育まれるモチベーション
スポーツ選手は「春生まれ(4~6月生まれ)」が有利?
期待するとその通りになる?
優れた他者や劣った他者がまわりにいると
意図的に行われる他者との比較
ポジティブな有能感を保つために

第7章 悲観的に考えると成功する? ─ ネガティブ思考のポジティブなパワー
楽観主義は成功のもと?
悲観的に考えてもその通りにならない?
悲観的に考えることで成功する防衛的悲観主義者
悲観的に考えるとなぜ成功するのか ─ 1つ目のポイント
防衛的悲観主義は「言い訳」とは違う
悲観的に考えるとなぜ成功するのか ─ 2つ目のポイント
悲観的なままだとうまくいく(楽観的になるとうまくいかない)
ポジティブだとうまくいかない
人それぞれの心理的戦略
さいごに ─ あなたは防衛的悲観主義者? それとも楽観主義者?

第8章 無気力への分かれ道 ─ 原因帰属
無気力 ─ モチベーションがわかない状態
何もしなくなった犬たち
学習性無力感の実験
人間を対象にした実験
無気力状態におちいりやすい人とそうでない人
不幸な出来事をどう自分に説明するか─原因帰属
改訂版学習性無力感理論
あなたの説明スタイルは?
無気力にならないために

第9章 モチベーションも目標次第
目標とモチベーション
目標を設定する
効果的な目標設定
2つの異なる目標とモチベーション
知能に対する考え方と2つの目標
良い成績がとりたくて勉強するのがなぜ悪い?
接近─回避の次元

第10章 無意識とモチベーション
人間の行動は原則的に自動的に生じる
自動性研究の実験の手続き
無意識に生じる感情や行動
無意識的に目標を追求する!?
ついにはモチベーションやパフォーマンスまで
状況や個人によって異なる自動性の影響

まとめに代えて

文献  (5)
索引  (1)


装幀=難波園子


行動を起こし、持続する力 まえがき


 2003年に実施された国際学習到達度調査(PISA2003 や TIMSS2003)の結果が公表されるやいなや、わが国の子どもの学力低下やその原因と考えられるやる気=モチベーションの低下が大きな社会問題となりました。モチベーションの低下の問題は、何も子どもに限ったものではありません。無気力やうつといったモチベーションが低い状態におちいった人、あるいはおちいる可能性がある人が、世の中には非常に多くおられるように思われます。私たちはどのような時にモチベーションが高まったり、あるいは逆に無気力やうつにおちいったりするのでしょうか。またどうすれば、モチベーションを高めることができるのでしょうか。

 モチベーションは、目標に向かって行動を起こし、持続させる心の力です。モチベーションに関する自己啓発本は、ちまたに溢れかえっていますが、しかし心理学の知見をきちんと踏まえたモチベーションに関する一般書は、意外にもほとんどありません。「褒美を与えると相手のモチベーションが高まる」「子どもはたくさん褒めたほうが良い」「学業レベルの高い学校に行ったほうがモチベーションが高まる」「悲観的に考えるとモチベーションを失い失敗する」「私たちの行動はすべて、意識的に動機づけられている」…これらはすべて一般的に信じられている常識ですが、こうした常識は心理学の世界ではどのように考えられているのでしょうか。

 じつは心理学では、このような一般的に信じられているモチベーションの考え方を覆す知見が、次々と得られているのです。本書では、心理学の知見を踏まえてモチベーションに関する考え方を紹介していきますが、そこには驚きと意外な発見が満ちています。第1章から第10章まで全部読んでいただくに越したことはありませんが、多くの章が独立して書かれていますので、まずは関心のある章だけを読んでいただいても構いません。本書を読むことによって、人生をいきいきと生き抜くためのヒントを得られれば誠に幸いです。

謝辞
 早いもので、私が博士論文を提出してから8年が経過しました。実は、私の博士論文の研究テーマは、モチベーション(動機づけ)に直接的に関するものではありませんでした。そんな私がなぜ、モチベーションに興味を抱くことになったかの理由は、大学院の恩師である櫻井茂男先生(筑波大学教授)との出会いの他にありません。櫻井先生は、モチベーションの研究では非常に著名な方です。また、内発的動機づけ(内発的な意欲)についてのご自身の考えをそのまま実践されているような先生で、まわりのモチベーションを高めることに非常に長けていらっしゃいます。私も教育者となるからには、桜井先生のような、存在することそれだけでまわりのモチベーションを高めるような存在になりたいと思いたち、モチベーションの研究を始めたわけです。私にモチベーションの研究を始めるきっかけを与えてくださり、終始温かいご指導とご支援をいただきました櫻井茂男先生に心より感謝を申し上げます。

 そして2年ほど前に、一般の読者向けのモチベーションに関する本を書いてみないかとお誘いの声をかけていただきました新曜社の塩浦暲社長にお礼を申し上げます。塩浦社長もまた、まわりの(少なくとも私の)モチベーションを高めるのが上手な人です。塩浦社長の温かくそして適切な支援がなければ、スムーズにこの本を世に送り出すことはできなかったと思います。心より感謝のことばを申し上げます。

 なお、本書の執筆に当たっては多くの方々の研究や書物を参考にさせていただきました。ここに記して謝意を表します。ただ、著者の力不足のために不備な個所が多々あるかと存じます。忌憚のないご意見をいただけましたら、たいへんありがたく思います。

 最後になりましたが、私のモチベーションを高めてくれるすべての人に感謝を申し上げます。その中でも、私のモチベーションのもっとも大きな原動力となっている、もうすぐ3歳になる愛娘の楓花に本書を捧げます。

2011年10月
外山美樹