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日本発達心理学会 編
岩立志津夫・西野泰広 責任編集

研究法と尺度
──発達科学ハンドブック2


A5判344頁

定価:本体3600円+税

発売日 11.11.25

ISBN 978-4-7885-1257-3

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◆日本発の発達研究、発達理論をめざして◆

日本の発達研究は、新しい理論の提案力、大会発表や研究論文の量、多様性な どにおいて、残念ながらいまだに世界的レベルにあるとはいえません。研究観、 研究文化、研究の歴史、研究環境の違いなど、克服すべきさまざまな要因があ りますが、本書では、日本の発達科学ワールドの研究力を高めるため、斬新で 創意に満ちた研究法を模索します。各研究法の項では、心理学の類書にある共 通点を羅列するのではなく、現在そして未来の発達研究の指針となる事柄を厳 選し、プラス面のみならず、今後の克服すべき課題についても触れています。 研究倫理、論文の書き方、発達指標など充実の資料編もつき、研究者必携です。


発達科学ハンドブック シリーズの紹介

研究法と尺度 目次

研究法と尺度 まえがき

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研究法と尺度―目次

『発達科学ハンドブック』発刊にあたって
はじめに
序 章 導入:発達心理学の研究法を求めて岩立志津夫
第1節 はじめに
第2節 発達研究法の原理
第3節 この巻の各章の記述から見えてくるもの

第1章 乳児の実験心理学的研究法 金沢 創
第1節 モデルの重要性 
第2節 選好注視法と強制選択選好注視法 
第3節 馴化法 
第4節 その他の実験方法 

第2章 発達の観察研究法と実例 麻生 武
第1節 経験世界から科学的観察へ 
第2節 科学的観察から体験世界の記述へ 

第3章 質問紙調査法の基礎  岡田 努
第1節 質問紙の形式 
第2節 質問紙調査の問題点 
第3節 信頼性と妥当性 
第4節 新しいテスト理論――項目応答理論(項目反応理論) 
第5節 インターネット調査の可能性 

第4章 発達のテスト法 松田浩平
第1節 心理テストにおける測定誤差 
第2節 発達テストの妥当性と信頼性 
第3節 心理テストとバイアス 
第4節 発達テストの特性 
第5節 おわりに 

第5章 発達の面接法と実例 塩崎尚美
第1節 面接法の歴史 
第2節 発達研究における面接法の特徴 
第3節 面接法の実際 
第4節 発達心理学における面接法の課題と発展の可能性 

第6章 発達の質的研究法と実例 能智正博
第1節 「質的な構え」とはどういうことか 
第2節 発達心理学における視点の転換の方向 
第3節 おわりに――冒険することと冒険を伝えること 

第7章 発達の統計法と実例 村井潤一郎
第1節 量的データ 
第2節 量的データに適用される統計法 
第3節 まとめ 

第8章 発達の多変量分析研究法と実例 小塩真司
第1節 構成概念を表現する 
第2節 変化の個人差を表現する 
第3節 複数の結果を統合する 

第9章 認知発達の研究課題と研究法 林 創
第1節 認知発達の研究法の進展と変遷 
第2節 研究課題と研究法の探索――「心の理論」研究を手がかりに 
第3節 認知発達研究を発展させるために 

第10章 言語発達研究の課題と方法 針生悦子
第1章 言語音声知覚の発達 
第2節 語彙の獲得 
第3節 文を作り理解する能力の発達 
第4節 まとめ 

第11章 社会・情動発達の研究課題と研究法 須田 治
第1節 生態理解の大切さ――観察などの復権 
第2節 生きている存在における発達の2側面 
第3節 社会・情動的発達をとらえる理論の必要性 
第4節 見落とされてきた課題と新たな研究 

第12章 生涯発達の研究課題と研究法 小田切紀子
第1節 生涯発達心理学の成立過程 
第2節 生涯発達研究の実際 
第3節 生涯発達研究の課題 

第13章 研究パラダイムとの関係でみた研究法 尾見康博
第1節 「パラダイム」は研究法を拘束するか 
第2節 機械論的人間観のもとにある仮説検証モデル 
第3節 発達心理学における質的研究と実践研究の広がり 
第4節 倫理のダイナミズム 
第5節 発達を記述する方法に向けて 

第14章 量的研究と質的研究の長短所と補完的折衷
:体系的折衷調査法の提案 
大野 久
第1節 体系的折衷主義について 
第2節 わが国における体系的折衷主義による方法論の展開 
第3節 体系的折衷調査法(systematic eclectic research method)の提案 
第4節 体系的折衷調査法の長所と新たな仮説の生成 

第15章 生物・進化理論との関係でみた研究法 平石 界
第1節 個人差の発達 
第2節 生活史の進化 
第3節 配偶戦略の発達 

第16章 脳との関係でみた研究法 榊原洋一
第1節 神経−脳−心理 
第2節 欠損モデルによる脳機能研究 
第3節 脳機能画像の登場 
第4節 脳機能画像研究法の限界 
第5節 脳機能局在論の問題 
第6節 構成概念と神経機能のマッチング 
第7節 発達と障害の脳内過程――拡散テンソル画像など 

第17章 発達精神病理学との関係でみた研究法 菅原ますみ
第1節 発達精神病理学の特徴 
第2節 発達精神病理学研究の方法論 

第18章 発達研究における倫理 斉藤こずゑ
第1節 研究倫理規程とは 
第2節 倫理規程のはらむ問題 

第19章 論文投稿への道:
とりあえず一歩を踏み出したい大学院生のために
郷式 徹
第1節 数値目標を掲げる――「1年に3本の論文を投稿する」 
第2節 新鮮な「ネタ」=専門家の興味を引く最新のテーマの仕入れ方 
第3節 投稿論文の審査結果が返ってきた際の対処法 
第4節 最後に 

第20章 心理学英語論文とアブストラクトの書き方・投稿の仕方
D. W. シュワーブ・B. J. シュワーブ(中澤 潤 訳)
第1節 英語で心理学論文を書くために 
第2節 アブストラクトの書き方 
第3節 アブストラクトに関するAPA Publication Manualの詳細 
第4節 検索されやすいアブストラクトのために 
第5節 雑誌掲載論文のアブストラクトの修正例 
第6節 研究論文の主要なセクション執筆のための示唆 
第7節 他の情報源 

第21章 発達研究の指標:心理尺度を中心に 西野泰広・雨森雅哉


人名索引 
事項索引 
編者・執筆者紹介 

装丁 桂川 潤


研究法と尺度 まえがき


 6巻からなる『発達科学ハンドブック』の第1冊目として『時間と人間』が今年の4月に発行されました。それに続く第2冊目として『研究法と尺度』を読者の皆さんにお渡しします。このハンドブック6巻は,最初の2巻(『1 発達心理学と隣接領域の理論・方法論』と本書)は総論としての位置づけになっています。したがって,基本書,導入本のように思われるかもしれません。たしかにそのような意図は存在します。しかし,類書にあるような単なる導入本ではなく,ハンドブックが目指している今後10年スパンの日本の発達研究の「飛躍的な発展を可能にする起点,あるいは大げさかもしれないが起爆剤」としての内容を包含するよう努力しました。

 起爆剤となるために,どのような努力がなされているかについては,編者の一人岩立が序章「導入:発達心理学の研究法を求めて」に書きました。とくに結論としてまとめた5つの方向性(@研究法を選択する以前に重要な視点:良質なデータ,A質的研究と量的研究の併用,少数例と多数事例の長短を理解すること,B実践研究(観察研究)と実験的研究の併用,C疑いをもつこと,裏を読むこと,D複数の研究手法を学び,理解し,利用し,寛容であることの意義)については,今後いろいろな形で批判を含めて議論され,この方向性の指摘が発達研究での論文や学会発表の隆盛のきっかけになればと祈っています。

 岩立は30年近く,言語発達を中心にして研究を進めてきました。また最近は大学院生の論文指導を通して,多様な研究に協力してきました。その中で知ったことを述べたいと思います。それは,「世の中には,いろいろな意味で人を感動させる発達研究がある」という確信です。そしてこのような研究は,短期,長期にわたって多くの研究で引用され,支持され,批判されながら大きな役割を果たします。そしてそのような研究の基礎には研究方法上の魅力が存在することが多いのです。この本が,そのような感動を与える研究が続出する契機になればと祈っています。

 最後にこのような本の編集の機会を与えていただいた,日本発達心理学会出版企画委員会のメンバーの皆様,そしてお忙しい中で内容の豊かな原稿を執筆していただいた執筆者の皆様,そして出版を引き受けていただいた新曜社の塩浦ワ社長,編集担当の田中由美子様に感謝したいと思います。とくに,今回の編集作業では,読者の理解に寄与するために,執筆者に多大の書き換えや加筆をお願いしました。不本意なお願いもあったことと思いますが,誠実にご対応くださったことに心より感謝申しあげます。最後に,編集作業の責任は編者にあるとしても,本の質が高まったのは田中さんの献身的な努力もあってのことと思います。重ねてお礼を述べたいと思います。

2011年9月吉日
責任編集 岩立志津夫・西野泰広