戻る

大貫 徹 著

「外部」遭遇文学論
――ハーン、ロティ、猿


四六判232頁

定価:本体2400円+税

発売日 11.6.30

ISBN 978-4-7885-1241-2

◆amazon.co.jpへ
cover

◆紀伊國屋書店Books Web へ

◆7ネットショッピングへ



◆ハーンは、まだまだ新しい!◆

「外部」から戻ってきた人間のお話はいつでも魅力的ですが、「外部」と 遭遇し戻ってこれなかった人の話はどうなるのでしょうか? ハーンの 「怪談」もまた、異なる世界との往還・出会いを描いて、いまなお新鮮な 驚きを与えてくれます。本書は、ハーンを補助線・通奏低音に、外部と遭 遇した作家、ベケット、イェイツ、コンラッド、ゴッホなどを取り上げて 論じます。また『お菊さん』などで維新期日本人を「猿」として表象した ピエール・ロティ、「踊り子」を猿のような醜さで描いたドガ(日本では 大人気ですが)などにも、異なるものと遭遇した作家・画家の無意識の視 線を暴き出します。「外部との遭遇」というユニークな視点から、我々の 文学的常識を問い直し覆してくれる痛快文学論です。


「外部」遭遇文学論 目次

「外部」遭遇文学論 まえがき

ためし読み
Loading

「外部」遭遇文学論―目次

はじめに

第一部 異界との遭遇

第一章 死者の霊に向き合う作家たち――ハーン、ベケット、イェイツ
一 「松山鏡」と「茶碗の中」 
二 ハーン的霊魂の世界――「伊藤則資の話」と「宿世の恋」
三 ベケット的霊魂の世界――ゴドーを待ちながら』
四 イエイツ的霊魂の世界――『煉獄』 38

第二章 「耳なし芳一」の物語をめぐって――ハーン、アルトー、ゴッホ
一 ハーンの描いた「耳なし芳一」
二 アルトーの描いた「耳なし芳一」
三 アルトーからゴッホへ

第二部 「異国」との遭遇

第三章 「帰還しない旅」の行方――「夏の日の夢」を読みながら
一 帰還する旅と帰還しない旅
二 「夏の日の夢」の真のテーマとは何か
三 もうひとつの浦島物語――「リス」 
四 ハーンはどこに行くのか――「夏の日の夢」の終わりから

第四章 ピエール・ロティ、あるいは未だ発見されざる作家
一 『アジヤデ』――「東洋」との出会い
二 『アジヤデ』――ヴィヨーとロティ=アリフ
三 『アフリカ騎兵』――「アフリカ」の発見

第三部 奇異なる存在との遭遇

第五章 「猿」をめぐる物語――ピエール・ロティの場合
一 『お菊さん』に描かれたロティの日本体験
二 『お菊さん』における「猿」のイメージ
三 十九世紀ヨーロッパの「他者」表象
四 十九世紀ヨーロッパの「科学的」武器――「顔面角」と進化論 

第六章 「猿」をめぐる物語――エドガー・ドガの場合
一 ドガにおける猿のイメージ
二 ドガにおける階級性
三 「十四歳の小さな踊り子」をめぐって
四 悪徳が「刻印」された顔
五 「小さなナナ」と呼ばれる踊り子

おわりに 
注 
あとがき
索引
装幀――虎尾 隆


「外部」遭遇文学論 まえがき

・・・・・・
本書は、こうした観点から、ラフカディオ・ハーン(一八五〇―一九〇四)やピエール・ロティ(一八五〇―一九二三)、あるいはサミュエル・ベケット(一九〇六―一九八九)やアントナン・アルトー(一八九六―一九四八)など、幾人かの作家、さらにはヴィンセント・ファン・ゴッホ(一八五三―一八九〇)やエドガー・ドガ(一八三四―一九一七)という画家を取り上げ、あくまでも異質な存在との遭遇という主題に限定して論じたものである。とはいえ、これは作家や画家の逸話的な遭遇体験をいかにも大仰に取り上げたというつもりはない。「怪談の作家」と言われているハーンや、「異国情緒の作家」と言われているロティはともかく、二十世紀を代表する劇作家ベケットもアルトーも、あるいは印象派を代表する画家ゴッホやドガも、こうした主題がその作家活動の本質的な要素を構成していると考えている。その意味では、正面から論じた作家論、画家論と言いたい。

 そのため、本書では、全体を三部構成とし、第一部は「異界との遭遇」として、いわゆる亡霊との遭遇をその本質的な主題とする作家を中心に論じた。その際、内容により、二つの章に分け、その第一章は「死者の霊に向き合う作家たち――ハーン、ベケット、イェイツ」、第二章は「「耳なし芳一」をめぐって――ハーン、アルトー、ゴッホ」とした。第二部は「「異国」との遭遇」として、広い意味での異文化体験、異国体験をその中心テーマとした。ここでも二つの章に分け、その最初の章に当たる第三章は「「帰還しない旅」の行方――「夏の日の夢」を読みながら」、次の第四章は「ピエール・ロティ、あるいは未だ発見されざる作家」とした。第三部は「奇異なる存在との遭遇」として、いわゆる階層構造を支える表象の問題を取りあげた。ここでは「猿」という表象をめぐって、劣等民族への視線や底辺層への視線のあり方を論じた。その最初の章である第五章は「「猿」をめぐる物語――ピエール・ロティの場合」、次の第六章は「「猿」をめぐる物語――エドガー・ドガの場合」とした。このため、全体的な大枠として、異界も異国も奇異なる存在もすべて含むものとして「「外部」遭遇文学論――ハーン・ロティ・猿」とし、それを本書の標題とした。