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ポール・リクール 著
ジョージ・テイラー 編 川ア惣一 訳

イデオロギーとユートピア
――社会的想像力をめぐる講義 


A5判504頁

定価:本体5600円+税

発売日 11.06.10

ISBN 978-4-7885-1235-1

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◆リクール、マルクスを読む!◆

いずれも浩瀚な『フロイトを読む』時間と物語記憶・歴史・忘却(小社刊)などで知られる、現代フランスの哲学者リクール(2005年に死去)が、社会思想に挑戦しためずらしい書です。講義をもとにしているため、哲学的な著書にくらべるとだいぶ平易な語り口です。内容は、既に終焉を宣告されながらますます影響力を強めるイデオロギーについて、「テキストに暴力をふるった」と自ら認めるマルクスへの意想外の読み解きからはじめて、ウェーバー、マンハイム、アルチュセール、ハーバーマス、ギアーツなどの思想にイデオロギーの変容をたどり、ユートピア思想と対比しつつ、社会的想像力、社会的夢のゆくえを探ったものです。かつて今村仁司氏は本書を「彼の基本的テーゼよりも、彼の先行思想家の読みとり方が実に刺激的であった」と絶賛されましたが、「偉大な読み手」リクールの面目躍如たる書といえましょう。

イデオロギーとユートピア 目次

イデオロギーとユートピア 編集者の序論

ためし読み

◆書評

2011年8月26日、週刊読書人、的場昭弘氏評

2011年8月27日、図書新聞人、柳内隆氏評


新曜社 リクールの本

フロイトを読む

時間と物語 I巻

時間と物語 II巻

時間と物語 III巻

記憶・歴史・忘却 上

記憶・歴史・忘却 下

ポール・リクール論、O・モンジャン著
ポール・リクールの哲学

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イデオロギーとユートピア―目次

編集者の謝辞
編集者の序論

第一回 はじめに

第一部 イデオロギー
第二回 マルクス 『ヘーゲル法哲学批判』および『経済学・哲学草稿』
第三回 マルクス 『経済学・哲学草稿』「第一草稿」
第四回 マルクス 『経済学・哲学草稿』「第三草稿」
第五回 マルクス 『ドイツ・イデオロギー』(1)
第六回 マルクス 『ドイツ・イデオロギー』(2)
第七回 アルチュセール(1)
第八回 アルチュセール(2)
第九回 アルチュセール(3)
第十回 マンハイム
第十一回 ウェーバー(1)
第十二回 ウェーバー(2)
第十三回 ハーバーマス(1)
第十四回 ハーバーマス(2)
第十五回 ギアーツ

第二部 ユートピア
第十六回 マンハイム
第十七回 サン=シモン
第十八回 フーリエ


訳者あとがき
参考文献
人名・著作索引   事項索引 
    装幀―難波園子



●編集者の序論

 

 編集者の序論

おそらく現代の思想家で、ポール・リクールほど幅広い分野で仕事をした者はいないだろう。彼は、宗教の象徴表現についての書物(『悪のシンボリズム』)と精神分析についての書物(『フロイトを読む』)によって非常によく知られているが、彼の仕事は、実際には言説の―しばしば、互いに共通点を持たないように見える―多様な領域からなる広い範囲を含んでいる。すなわち、歴史の理論、言語についての分析哲学、倫理学、行為論、構造主義、批評理論、神学、記号論、心理学、聖書学、文学理論、現象学そして解釈学である。読者はリクールについていくことで、リクールが果敢に多種さまざまな領域に取り組んでいるのが、困難な課題であるのを理解することができる。しかし、リクールの幅広さは非常に並外れたものであるが、その一方で、われわれはおそらく、彼の主題のリストから抜け落ちているものによっていっそう驚かされるだろう。リクールは同時代の社会的、文化的、政治的な生活に―個人的にも職業的にも―深く関わっているのだが、それにもかかわらず、彼の仕事のなかに、その主題に関する持続的な検討は見いだされないのである。『歴史と真理』および『政治的・社会的試論』という二冊の論文集は、多くの社会的および政治的主題についてのリクールの見解を提示しているが、これらの試論は、個別の時期、状況、出来事に対す明確な応答である。われわれはリクールから、社会的および政治的理論に対する彼の解釈学的アプローチのさまざまな含意についての広範な分析をまだ受け取っていない。本書、つまり、イデオロギーとユートピアについてのリクールの講義の出版は、こうした欲求に応えるうえで大いに役に立つことだろう。


この講義が最初に行なわれたのは一九七五年の秋学期、シカゴ大学においてであるが、時間が経ったことで講義の重要性が減少したということはほとんどない。この講義は、一連の講義が議論の対象としている人物たちや講義が扱っている主題、そしてリクールのいっそう広範なテキストのすべてを理解する際の手助けとなってくれるという点で、非常に興味深いものである。リクールはこれらの講義のなかで初めて、カール・マンハイム、マックス・ウェーバー、クリフォード・ギアーツについての詳細な分析を行なっており、また、彼のすでに公刊されたルイ・アルチュセールとユルゲン・ハーバーマスについての議論を発展させている。とりわけ興味深いのは、リクールによるマルクスの扱いである。マルクスは、十八回の講義のうち五回の主題になっている。リクールは長い間、マルクス、フロイト、ニーチェを三人の偉大な「疑いの師」(masters of suspicion)と呼んできた。とはいえ、リクールはフロイトの解釈によってよく知られているのに対して、この講義はマルクスについてのリクールの最初の体系的な分析となっているのである。

一連の講義の主題―イデオロギーとユートピア―に関していえば、リクールはマンハイム以来、はじめて、それらを一つの概念枠のなかで議論しようと試みている。概して、イデオロギーはこれまで社会学あるいは政治学のための主題であったし、ユートピアは歴史あるいは文学のための主題であった。リクールはイデオロギーとユートピアを並置することで、これら二つをよりよく定義し、またそれらの境界をより明確に定め、さらに、それらの概念を、以前の概念上の定式化とは著しく異なるものにしているのである。以前の定式化では、イデオロギーは現実と科学の両方と対置されてきたのであり、またユートピアは単なる夢、願望を満たす空想と見なされてきたのであった。

この講義はまたリクールの著作全体との関連でも、興味深いものである。リクールは講義のなかで直接、この関連について語っている。私は以下で、まずリクールのより広範な仕事について論じることによって、イデオロギーとユートピアという主題にアプローチするつもりである。そのあとで、それぞれの講義固有の主題について論じながら、部分から全体へと立ち戻り、イデオロギーとユートピアについてのリクールの分析を、とりわけ想像力とメタファーについての彼の著作との関連において位置づけてみたいと思う。・・・・・・