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高橋 晃 著

『キーワード心理学5 発達』
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A5判176頁

定価:本体1900円+税

発売日 10.06.01

ISBN 978-4-7885-1234-4

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◆楽しく学ぶ発達心理学のエッセンス!◆

基本的な知識と最新の知識をバランス良くおりまぜながら、心理学の各分野を キーワードで学ぶ「キーワード心理学シリーズ」の第5巻です。「発達」は心 理学でも中心的なテーマで類書もたくさんありますが、本書の特色は、テキス トにありがちな大勢による分担執筆ではなく、著者が、細部まで気を配りつつ 全体を書いていることです。そのため、記述が一貫していて、心理学の初心者 にも理解できるように書かれています。大学の「発達心理学」授業の参考書と してだけでなく、保育士試験、教員採用試験などの、学問的に確立された概念 を問う問題が多く出題される試験の勉強の副読本としても役立つでしょう。既 刊のシリーズと並べてご展示ください。

◆「キーワード心理学」シリーズ

キーワード心理学5 発達 目次

キーワード心理学5 発達 まえがき

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キーワード心理学5 発達―目次

 目 次

 「キーワード心理学」シリーズ刊行にあたって

 まえがき

パート1 発達の理論
 氏か育ちか 遺伝か環境か
 きょうだい・双生児研究 血縁の近さ
 家系研究・養子研究 家系図からわかること
 発達段階 ピアジェの発達段階とエリクソンの発達段階
 ひとり親家庭 非伝統的家族の影響
 育児文化 日米の比較から
 進化心理学 遺伝子と心



パート2 乳児期から幼児期へ
 選好注視法 好みから感覚能力を調べる
 対象概念 同じもの? 違うもの?
 愛着 心の中の「安全基地」
 表象 心的活動を支えるもの
 鏡映像認知 「自分」の発見
 初語 泣き声から言葉へ
 子どもの文法 ルールの発見過程
 自己中心性 「今、見えている世界」の制約
 アニミズム 万物に宿る生命
 内言と外言 発話された思考
 サイモン・セッズ 言語の行動調整機能
 読み書き能力 自然には身につかない言語能力
 遊び 行為そのものの喜び




パート3 児童期から青年期へ
 保存課題 みかけと同一性 
 ギャング集団 社会性を培う場所 
 性役割 男らしさ・女らしさ
 形式的操作 抽象的な思考能力
 道徳判断 善悪の理由づけの発達
 モラトリアム 自立の前の逡巡



パート4 成人期から老年期へ
 ペアレントフッド 親になること
 中年の危機 歳をとること
 サクセスフル・エイジングと老年的超越 老年期の幸福
 老人力 老いてこその優位性

 参考書
 引用文献
 人名索引
 事項索引


装幀―大塚千佳子
カバーイラスト―いとう 瞳



まえがき

 かつて「発達心理学」は「児童心理学」と同義でした。身体の成長が止まる段階で精神発達も完成すると考えられていたからです。確かに、論理的思考能力は青年期に完成します。しかし、人はその後もずっと、環境と自分自身への適応を続けなければなりません。人生のクライマックスを過ぎたと感じても、自分の知識や経験を次の世代に伝えるという仕事が残っています。超高齢期に身体機能の多くを失ったとしても、私たちはその中で幸福を追求することができます。そのような「発達」は、知識の増加や技能の向上を伴うことはありませんが、人間的な成長であることに違いありません。

 「発達」は心理学の一つの研究領域というよりも、一つの研究方法です。人の一生という時間軸の中で心の働きを説明しようという試みは、認知の領域でもっとも成功を収めてきました。幼児はおとなの質問に対して、一貫して、自信を持って、誤った答えをすることがあります。この時の誤りのパターンを分析し、その誤りから脱却していく過程を調べれば、おとなの理解や判断がどのような要因によって構成されているのかがわかります。言語の領域でも同じことがいえます。乳児は、ものの名前を最初は一つ一つゆっくり覚えていたのに、ある時「コツ」を覚えて、爆発的に語彙を増やし始めます。また、幼児は、それまで正しい文法で話していたのに、突然、自分から間違った言い回しに変えてしまうことがあります。「発達」という方法を使うことによって、おとなの言語行動を調べるだけではわからない、言語というものの本質が明らかになります。

 しかし、幼児期、青年期、老年期でまったく異なる心の働きが存在し、発達段階が断絶しているわけではありません。おとなにも子どもの痕跡がたくさん残っています。おとなが難しい問題を考えるとき思わず唇が動いてしまうのは、幼児期の「自己中心語」の名残です。まわりの環境を自分が望む方向に変えようとする意思は、幼児期から徐々に強くなりますが、成人に達してしばらくするとピークを打ち、老年期に向けて徐々に減退していきます。発達には質的な転換と同時に、量的な連続性も存在します。

 本書の各項目はそれ自体が完結した読み物になっていますから、最初から順に読んでいかなくても、目次をみて興味を持った項目を選んで読んでいくことが可能です。また、各項目の解説では、別の項目のページを参照していることも多いので、芋づる式に読んでいくこともできるでしょう。点を線で結び、「発達」を有機的に理解するためには、むしろそのような読み方のほうが適しているかもしれません。

 本書は、読み物として面白く、心理学の初心者にも理解できるように書きましたが、大学の「発達心理学」授業の参考書としても大いに役立つだろうと思います。発達心理学の基本的な概念を取り上げて解説しているので、保育士試験、教員採用試験などの、学問的に確立された概念を問う問題が多く出題される試験の勉強の副読本としても役立つでしょう。

 一方で、古典的なテーマを扱う場合でも、それに関連する最新の研究成果を紹介するように努めました。この点で、現職の教員や保育士の方が、昔学校で習ったことを思い出し、内容をアップデートする助けになるだろうと思います。

 本書の完成に当たり、誰よりもまず、新曜社の塩浦さんに感謝の言葉を述べたいと思います。監修者の一人に名を連ねながらなかなか原稿を書き上げられない私を、辛抱強く、暖かく見守ってくださいました。もちろん、内容に関して読みやすくするための適切な助言とサポートをいただいたことは言うまでもありません。本シリーズの企画の段階でお世話になった松田昌代さんにも感謝いたします。私が、松田さんの大胆な提案を安請け合いしてしまったことは、本書の完成が大幅に遅れたことの言い訳の一つですが、そのおかげで本書が発達の全領域をカバーする興味深い内容の本になったと思います。

2011年4月
高橋 晃