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園田雅代・無藤清子 編

臨床心理学とは何だろうか
――基本を学び、考える


A5判288頁

定価:本体2600円+税

発売日 11.03.15

ISBN 978-4-7885-1226-9

◆実践的なテキスト!◆

いまほど「心の問題」がクローズアップされた時代はないでしょう。大学や大学院で臨床心理学を学ぶ人々もますます増えています。しかし、臨床心理学はなによりも実践的な学問です。たんに知識を学んでも、あまり役に立ちません。本書は、臨床心理学を教える著者たちの経験の中から生まれました。あらゆる臨床心理学の立場に共通するものは何か、考え方の違いのもとにある理念はどのようなものなのか、カウンセリングの実際はどのように始まり、終わるのか、カウンセラーにとって大変なこととはどんなことなのかなど、好奇心をかき立て、内発的に学べるよう工夫された、新しいテキストの誕生です。

臨床心理学とは何だろうか 目次

臨床心理学とは何だろうか まえがき

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目次
まえがき  i

第 1 章 臨床心理学とは何だろうか
1 臨床心理学はいつごろ,なぜ現れたのか
2 対人援助の学としての臨床心理学
3 臨床心理学の役割をめぐって
4 臨床心理学とは
【読書案内】

第 2 章 臨床心理学から見て,「健康な心」とは何だろうか
1 健康な心とは
2 ストレスとは
3 対人援助要請力とは
4 自尊感情(セルフ・エスティーム)とは
5 リジリアンスとは
6 先人は「健康なパーソナリティ」像をどのように 描いているか
7 健康な心と不健康な心とは絶対的に異なり, 明快に区分けできるものなのか
8 健康な心についての逆説的な見方
9 まとめ
【読書案内】

第 3 章 心理療法はどのように始まるのだろうか
1 クライエントから見て,心理療法はどのように始まるか
2 セラピストから見て,心理療法はどのように始まるか
3 心理療法の開始について,どのように話し合い, 相互了解するか
4 まとめ
【読書案内】

第 4 章 心理療法では何が起こっているのだろうか
1 心理療法で人はどう変化するのか
2 どのようなクライエント‐セラピスト関係から変化が生まれるのか
3 クライエントとセラピストの役割・責任とはどういうことか
4 心理療法とクライエントの「現実」の人生はどういう関係なのだろうか
5 心理療法における変化は,どれも望ましいのだろうか
6 まとめ
【読書案内】

第 5 章 心理療法はどのように終わるのだろうか
1 心理療法はどのように終結するのか
2 中断とはどういうことか    終結ではない終わり
3 クライエント・来談家族は心理療法の終結から何を得るのか
4 まとめ
【読書案内】

第 6 章 人間関係のなかで豊かに生きるために,臨床心理学は役立つのだろうか
1 「人間関係のなかで豊かに生きる」とはどういうことか
2 「人間関係のなかで豊かに生きる」ことに寄与する方法論には,どのようなものがあるか
3 まとめ
【読書案内】

第 7 章 特別なニーズをもつ子ども・人とその家族や所属集団に,臨床心理学は何を提供できるだろうか
1 特別なニーズをもつ子どもとはどのような子どもか
2 支援する人は障害をどのようにとらえればよいか
3 特別なニーズをもつ子どもの生活の場はどのようなものか
4 障害のある子どもへの臨床心理学的援助とは
5 障害のある子どもの家族への援助とは
6 学校・教師への援助とは
7 地域での援助とは
8 障害のある大人への援助とは
9 まとめ
【読書案内】

第 8 章 いろいろな心理療法があるが, 人間観,目標,視点はどのように異なるのだろうか
1 なぜ多様な心理療法があるのか
2 フロイト理論の視点はどのような特徴があるか
3 ユング理論の視点はどのような特徴があるか
4 ロジャーズ理論の視点はどのような特徴があるか
5 行動・認知・システムの視点はどのような特徴があるか
6 まとめ
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第 9 章 臨床心理学は,社会・文化とどのように関わっているのだろうか
1 対人援助職としての臨床心理学専門家とは
2 コミュニティ心理学的アプローチとは
3 ジェンダー心理学的アプローチとは
4 フェミニスト・セラピー的アプローチとは
5 社会構成主義的アプローチとは
6 社会・文化的な常識や思い込みが, 臨床心理学にどう影響しているか
7 まとめ
【読書案内】

第 10 章 臨床心理学における倫理・研究・専門性はどのようなものだろうか
1 専門職とは
2 心理療法に必要な「倫理」とは
3 臨床心理学の専門性の向上
4 まとめ
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第 11 章 心理臨床家はどこで,どのような仕事を しているのだろうか
1 心理臨床家はどのような場所で,どのような仕事を しているのか
2 他の専門職と心理臨床家の相違点とは
3 まとめ
【読書案内】

第 12 章 心理臨床家の大変なこと・やり甲斐は何だろうか
1 心理臨床家の大変なこととは
2 バーンアウト(燃え尽き)とは
3 二次受傷とは
4 バーンアウトや二次受傷をどう予防したらよいか
5 心理臨床家のメンタルヘルスのために
心がけるべきこととは
6 心理臨床家のやり甲斐とは
7 まとめ
【読書案内】

文  献
用語解説
人名索引
事項索引
装丁=難波園子

まえがき
 ここ 20 年ほど,日本では“心の時代”と言われて,世の中で臨床心理職の仕事への関心が高まりました。この領域に関心を持つ人やこの道を志す人が増え,また臨床心理職として働く人たちの人数も飛躍的に増えてきています。では,大学や大学院で臨床心理学を学んでいくにあたって,どのようなことが必須なのでしょうか?
 臨床心理学に関心を持って学ぶ人たちにとっては,どのような臨床心理学的な考え方・とらえ方や,どのような心理療法の種類があるのかなどを,知識として身につけるだけでなく,実践的な学問として学ぶことが望まれます。つまり,そもそも臨床心理学とは何をめ ざして,どのようなことを見出し,どのようなことを行っている学問なのかを学ぶということです。
 そのような考えのもとに,本書は,臨床心理学を学ぶ大学生・大学院生のためのテキストとして企画しました。編者ふたりは,大学院の臨床心理士養成指定校で臨床心理職志望者の教育や修了生・現任者の研修などに携わっているため,その経験の中から考えたものです。臨床心理学を学ぶ人や臨床心理職志望者にはもちろん,さらには,現在既に臨床心理職として働いている人にとっても,基本から自分の臨床実践を見直すために役立つ書物をめざしました。
 わかりやすいと同時に,あくまでも,考える刺激としての質を高く保つことをめざしたため,本書は次のような 4 つの特徴を持っています。1.まず,どのトピックについても,臨床心理学の特定の立場・派に基づくのではなく,あらゆる派に共通する点を抽出することをめざしました。2.それと同時に,立場や考え方の違いについては,そのもととなる理念や技法の違いなどにもふれつつ,概観を得られるようにしました。3.本書の大きな特徴として,各章や節を,“問い”を立てることによって構成しています。知識を身につける受け身的な学習というよりは,好奇心をかき立てられながら内発的に学べるようにという意図からです。各章タイトルの問いに対して,正解を一つ示すというよりは,むしろ異なる複数の論点を示して,考え方の違いなどを解説しています。
 その際,できるだけ臨床心理学的・発達心理学的な理論や研究を展望するようにし,また,いろいろな心理療法の考え方とその発展をおさえています。なお,さらに発展的に探究できるよう,ブックガイドも充実しています。4.臨床心理学の道を志す人にとって役立つよう,この領域の特徴や実態や実践の様子がイメージしやすいようにしました。
 各章で取り上げた問い(トピック)は,次のようなものです(括弧内は執筆者)。


  第 1 章 臨床心理学とは何だろうか (1 ~ 3 節 無藤清子・4 節 園田雅代)
第 2 章 臨床心理学から見て,「健康な心」とは何だろうか (園田雅代)
第 3 章 心理療法はどのように始まるのだろうか (無藤清子)
第 4 章 心理療法では何が起こっているのだろうか (無藤清子)
第 5 章 心理療法はどのように終わるのだろうか (無藤清子)
第 6 章 人間関係のなかで豊かに生きるために,臨床心理学は役立つのだろうか (園田雅代)
第 7 章 特別なニーズをもつ子ども・人とその家族や所属集団に,臨床心理学は 何を提供できるだろうか (牟田悦子)
第 8 章 いろいろな心理療法があるが,人間観,目標,視点はどのように異なるのだろうか (岡昌之)
第 9 章 臨床心理学は,社会・文化とどのように関わっているのだろうか (高畠克子)
第10章 臨床心理学における倫理・研究・専門性はどのようなものだろうか  (津川律子)
第11章 心理臨床家はどこで,どのような仕事をしているのだろうか (高野久美子)
第12章 心理臨床家の大変なこと・やり甲斐は何だろうか (園田雅代)

 本書が,臨床心理学と臨床心理学的支援の実践に関心ある人たちにとって, 刺激を受けつつ,新しいことを知ったり,疑問を抱いてもっと知りたくなった り考えたくなったりする契機として,楽しんで頂けるものとなったら幸いです。

 本書は臨床現場でご活躍の,そのテーマにご造詣深い先生方にご参加いただいていますが,実は執筆依頼から非常に長い年数をかけてしまいました。ひとえに編者たちの不行き届きによるもので大変申し訳なく,ご執筆の先生方には心からお詫び申し上げます。なお,当初の予定通りの時期に脱稿して下さった先生方は,その後の新しい動向を踏まえて改稿して下さいました。本当にありがとうございました。
 最後に,新曜社の塩浦..さんには,本当に長きにわたって編者たちを激励しつつ,多大な編集作業をして下さったからこそ,刊行にたどりつくことができました。長期にわたるお力添えとご尽力に心から感謝申し上げます。

 2011年2月 編者 園田雅代・無藤清子