戻る

金子 勇 著

コミュニティの創造的探求
――公共社会学の視点から


A5判224頁

定価:本体3200円+税

発売日 11.03.15

ISBN 978-4-7885-1216-0

◆amazon.co.jpへ
cover

◆紀伊國屋書店Books Web へ

◆7ネットショッピングへ

◆サクセスフル・コミュニティの探求◆

百歳以上の行方不明者が次々に発覚したり、児童虐待の犠牲が相次ぐなど、地 域社会の解体が進んでいます。著者は『少子化する高齢社会』(NHKブック ス)をはじめ少子高齢化研究の第一人者として、こうした事態に警鐘を鳴らし てきました。実効性を伴ったコミュニティ構築をめざす著者の理論と実践を集 大成したものが本書です。理論を歴史的に基礎づけ、ソーシャル・キャピタル 概念を検証し、コミュニティ理論を高齢者ケアや児童虐待防止等、地域福祉の 具体的施策に活かす方途を論じています。「サクセスフル・コミュニティの探 求こそ困難な時代を生き抜く鍵を握っている」という本書の力強いメッセージ こそ、いまの時代を照らす希望の光ではないでしょうか。著者は北海道大学大 学院教授。


コミュニティの創造的探求 目次

コミュニティの創造的探求 まえがき

ためし読み
Loading

目次
   はじめに

第1章 コミュニティ社会学の探求
   第1節 コミュニティの多義性
   第2節 コミュニティ理解の時代差
   第3節 コミュニティの活性化論
   第4節 都市のコミュニティ活動空間
   第5節 福祉コミュニティ論 

第2章 コミュニティの社会学史
   第1節 多用されるコミュニティ
   第2節 コミュニティの理論的探求 
   第3節 都市社会学におけるコミュニティ 

第3章 コミュニティの応用社会学
   第1節 フランスに見る個人主義社会
   第2節 コミュニティの有効性 
   第3節 集合共生するコミュニティ 
   第4節 戦略的概念としてのコミュニティ 
   第5節 コミュニティの「公私問題」 

第4章 コミュニティ研究の成果と継承
   第1節 社会分析としての事例研究
   第2節 『ミドルタウン』――コミュニティ研究の古典探求1
   第3節 『ストリート・コーナー・ソサエティ』 ――コミュニティ研究の古典探求
   第4節 『心の習慣』――コミュニティ研究の古典探求3
   第5節 コミュニティ研究の応用に向けて 

第5章 コミュニティの福祉社会学
   第1節 少子化対策の見直し 
   第2節 少子化する都市・札幌 
   第3節 コミュニティ・ケア論と児童虐待 
   第4節 コミュニティ・ケア研究における児童虐待防止
   第5節 コミュニティ・ケア論の組み替え 
 
第6章 コミュニティとソーシャル・キャピタル
   第1節 ソーシャル・キャピタルの有効性 
   第2節 ソーシャル・キャピタルと健康 
   第3節 高齢化する過疎社会  
   第4節 高齢者のコミュニティ生活と意識  
   第5節 コミュニティ・アクション論  

第7章 サクセスフル・コミュニティの探求
   第1節 社会負担としてのコミュニティ税 
   第2節 コミュニティの成長と発展  
   第3節 少子化克服のための社会資源  
   第4節 相違の恐怖の克服  

   参考文献
   おわりに 
   人名索引・事項索引 
   装幀・図版制作 谷崎文子

まえがき
本書は,日本はもとより世界各国においても,枕詞として語られたり,ユートピアモデルとして使用される頻度が高いコミュニティ概念に,都市化,高齢化,少子化,国際化が同時進行する転換期にふさわしい解釈をほどこして,その効用を高めようとする試みである。全体を貫くテーマは,現代都市市民の離散した関心を,社会全体を基盤にした共同関心に向けて,どのような方法で収斂させるかにある。そのために,理論(theory)と現場(theater)は同根であるという前提から,私自身が35年間行ってきた15都市での社会調査の結果と経験を,既存の包括的なコミュニティ学説にさまざまなレベルで融合させた。

また,「少子化する高齢社会」に突入した現代日本では,多くの点でコミュニティ・ケアをもっと豊かにする必要があるという前提から,本書では枕詞としてのコミュニティを超えて,コミュニティの創造的側面を強調してみた。

私の実証的な研究課題は,「都市化とコミュニティ」,「高齢化と地域福祉」,「少子化と子育て支援」に三分されるが,その根底にコミュニティ社会システム論を置き,経験的に実証可能なコミュニティ理論の探求を心がけてきた。日常語を超えて学術用語と政策用語を兼ねるコミュニティに,実践的有効性が感じ取れる意味内容を補?して,実際の成果としてコミュニティづくりに応用できる具体的方法を明らかにするように努めた。総合的結論を先取りすると,コミュニティの創造には,個人間の互いの親しさだけではなく,集合的目標の共有と協働こそが肝要であるに尽きる。

本書のテーマの筆頭は,地域社会における相互性と互恵性の意識からなる集合的関係の有無である。一定の生活空間において,成員に共有される感情的結合と強い愛着が「心の習慣」になる。それは,集合的凝集性と永続性を生み出す互恵性,義務感,道徳的感情などを総合化した心の状態である。ここから成員間に潜在的・顕在的に認められる社会目標の形成,個人を超えた組織的な集合体活動や社会運動の存在,それらの総合作用として強弱に揺れる個人の帰属感などが論点として引き出された。

個別のテーマは,限られた空間・場所・地理的範域としてのコミュニティ,成員に共有された理想とそれが具体化された社会目標としてのコミュニティ,ソーシャル・キャピタルの内実としてのコミュニティ,成員の帰属対象としてのコミュニティ,集合体として活動するコミュニティなどであった。とりわけ集合体活動の分析に力点をおいたのは,そこに災害や非常時の合法的な支配,権威,リーダーシップが顕在化するからである。同時に集合性そのものもまた,連帯性と凝集性,結合と参加を維持する価値基盤になりうるかどうかを,多方面から論じた。

本書の企画は5年前に遡るが,それからは試行錯誤の連続であった。この期間,編集部の小田亜佐子氏からは,『マクロ社会学』(1993年)の時と同じように,細やかな注意点と適切なコメントをたくさん頂戴した。また出版に際しては塩浦ワ社長に格別のご配慮をいただいた。お二人に心より感謝を申しのべたい。それらに応えるべく,各章ごとの論点を積み上げ,コミュニティの全体像を描こうと努めた。

本書のコミュニティ研究は社会学分野に限定してはいるものの,内容としてはコミュニティづくりに関心をもつすべての市民,行政関係者,マスコミに開かれたものなので,今後の「少子化する高齢社会」と地域福祉の探求に参考にしていただければ幸いである。

2011年1月8日 金子 勇