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中山あおい・石川聡子・森実・森田英嗣・鈴木真由子・園田雅春 著

シティズンシップへの教育
――


A5判224頁

定価:本体1900円+税

発売日 10.10.20

ISBN 978-4-7885-1211-5

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◆シティズンシップ教育とは?◆

今、各地の大学、高校また小中学校でも、いかにして生徒・学生にシティズンシップを培うかが重要なテーマとなってきています。「シティズンシップ」とは何か、何を、どう教育していったらよいのか──従来のような知識伝達型の教育では、もはや不十分なことはあきらかです。本書は、大阪教育大学における「シティズンシップ教育」への研究と実践から生まれました。これから社会に出て行く人々、そして彼らの教育を担う人々への、よき指針となる本です。

シティズンシップへの教育 目次

シティズンシップへの教育 はじめに

ためし読み

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◆シティズンシップへの教育――目次
序章 民主主義の危機とシティズンシップ教育 森 実
(1)シティズンシップ教育への注目
(2) さまざまなシティズンシップ教育のとらえ方
(3)参加とは何か?
(4)批判的視点
(5)私たちのとらえるシティズンシップ教育

第1章 今、なぜシティズンシップ教育か 中山あおい
第1節 シティズンシップとは?
(1)はじめに
(2)シティズンシップとは?
(3)権利と義務から参加へ
第2節 グローバル時代に求められるシティズンシップ
第3節  EUの試み ―グローバル化に伴う「知識基盤型経済」社会への対応
(1)アクティブ・シティズンシップ
(2)市民コンピテンシー
第4節 欧州評議会のシティズンシップ教育
第5節 日本でのシティズンシップ教育の動向
(1)「シティズンシップ教育宣言」
(2)お茶の水女子大学附属小学校の活動
第6節 おわりに
【さらに学びたい人のための読書案内】

第2章 シティズンシップと環境教育 石川聡子 
第1節 環境教育とは
(1)はじめに
(2)環境とは
(3)国連による環境教育
(4)公害教育と自然保護教育
(5)学校における環境教育
(6)持続可能な開発のための教育
第2節 環境教育がめざすもの
(1)環境教育の 3つの原理
(2)環境教育の 3つの志向性
(3)強いシティズンシップと弱いシティズンシップ
(4)環境教育で育てたい資質 55第 3節 環境教育実践に見るシティズンシップ
(5)貧しい国の人を思い、残さず食べる
(6)みんなで環境に配慮した学校にするしくみ
【さらに学びたい人のための読書案内】

第3章 人権教育を核とするシティズンシップ教育 森 実 
第1節 日本における全国的な人権教育の特徴と課題
(1) 大阪教育大学での学生調査から
(2)文部科学省による「人権教育の推進に関する取組状況調査」
第2節 ヨーロッパと国連における人権教育とシティズンシップ教育
(1)ヨーロッパ
(2)国際連合
(3)日本にとっての意味
第3節 人権教育をシティズンシップ教育に発展させるために
(1)まちづくり人権総合学習の展開
(2)人権起業家教育とシティズンシップ教育
第4節 同和教育の観点から見たシティズンシップ教育への提案
(1)差別の現実から深く学ぶ
(2)自己との関わりについて認識を深める
(3)排除されやすい不利な立場にある子どもを中心に据える
(4)教育と運動を結びつける
(5)現実認識を土台に、科学的・芸術的認識を育む
第5節 人権教育とシティズンシップ教育が手を携えて
【さらに学びたい人のための読書案内】

第4章 民主主義を支えるしくみとしての〈メディア〉とその理解 森田英嗣 
第1節 私たちにとって〈メディア〉とは何か?
(1)〈メディア〉とは
(2)〈メディア〉と私たちの社会生活
(3)〈メディア〉の影響
第2節 シティズンシップ教育で〈メディア〉がテーマになる理由
(1)市民が持つべき力
(2)メディアリテラシーの必要
(3)情報リテラシーの必要
(4)民主的な〈情報〉空間とそのメンテナンス
第3節 〈メディア〉教育の編み直し
(1)教育課程への組み込み
(2)中善則氏の実践に学ぶ
(3)中実践の意味
第4節 おわりに
【さらに学びたい人のための読書案内】

第5章 消費者教育をとおして育てるシティズンシップ 鈴木真由子 
第1節 消費者教育が求められる背景
(1)はじめに
(2)消費者教育とは
(3)生活を取り巻く環境の変化
(4)消費者政策の転換 ―保護から自立へ
第2節 消費者市民の育成と消費者教育
(1)欧米の消費者運動・消費者教育を振り返る
(2)欧米の消費者教育の特徴
第3節 消費者市民社会の実現へ向けて
(1)消費者市民社会とは
(2)消費者市民になるために
第4節 消費者教育の実践例に見るシティズンシップ


シティズンシップへの教育――はじめに

 本書は、大学教育、とりわけ教員養成教育の中で「シティズンシップ」を培うことの意義を感じ、日々の実践を紡いでいる 6人の教員によって執筆されました。 その意図は、ユネスコの「高等教育世界宣言」として知られる「21世紀の高等教育 ―展望と行動」(1998年)[1]でイメージされている高等教育像に符合します。すなわち、「高等教育世界宣言」において、「教育は、人権、民主主義、持続可能な開発及び平和のための基本的な柱」であると位置づけられ、格差社会の中で大衆化しつつある高等教育は、市民を育成する上で大きな役割を果たすべきだと述べられています。

 そこでは、たとえば、「人間の活動のあらゆる分野でのニーズを満たすことができるように、高い能力を持つ卒業生および信頼し得る市民を教育により生み出す」ことや、「民主的市民という基礎を形成する価値について青年を教育することにより、…社会的価値の保護と強化を支援する」(…部は引用者により省略)ことが使命の一つとして謳われています。また、「高等教育機関は、学生に、社会的責任意識とともに、自己の能力を十分に開発する機会を与え、民主主義社会に完全に参加し、平等と正義を育成する変革の推進者となるように教育しなければならない」との記述もみられ、社会の持続的な発展のために高等教育機関が貢献するべき役割の一つに、シティズンシップ(市民性)の育成があることが明示されています。

こうした高等教育一般の使命に加えて、私たちはまた、将来の学校教員を育てる教員養成大学の教員として、より強くその使命を認識すべきだとも感じてきました。 とりわけ最近の日本では、このところの新自由主義的な教育改革の影響下で、教育システムを狭い意味での“学力”を手に入れ、“良い就職”や“よい収入”を得る手段、すなわち個人的な利益追求の手段と見なす傾向が強まってきました。本来教育には、こうした「私事性」だけでなく、健全かつ持続的に社会を展開させるに有為な人材を育成するという使命、すなわち「公事性」があるのですが、「勝ち組」になるための「競争」に駆り立てる社会的雰囲気のなかで、私たちも、学生たちも、ついついそのことを忘れがちになっています。 

そこで、私たちは、まずは私たちの勤務する大学で新しくシティズンシップ教育に関する講義を立ち上げ、教育の「公事性」についてともに考え、議論する機会を作りたいと考えました。 本書は、そのテキストとして執筆されたものです。本書がこうした意図に相応しく構成され得たかどうかは読者の皆さんの評価に待ちたいと思います。本書には、まだ考えの至らないところや論じたりないところ、資料が足りず独断的になってしまっているところがたくさんあると思われます。読者の皆さんの叱正を待つとともに、本書の意図や企画、論述がきっかけとなって高等教育段階、とりわけ教員養成教育においてシティズンシップ教育の研究や実践がより広く、そして深く展開していくことを期待したいと思います。 最後に、私たちのこの企てを見守り、遅筆な私たちを辛抱強く励まし、原稿の不整合を正して下さった新曜社編集部の塩浦ワさんに心から感謝いたします。