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桂川 潤 著

本は物である
――装丁という仕事


A5判248頁

定価:本体2400円+税

発売日 10.10.28

ISBN 978-4-7885-1210-8

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◆「本」は生き残れるか?◆

紙やインキといった「身体性」を失った電子ブック=情報だけのテキストは、はたして本といえるのか? 活字や活版印刷が消滅したように、紙の本は消えてしまうのか? 出版や装丁の歴史からデザイン・製作の基礎知識、装丁の実際までを懇切丁寧に解説しながら、「電子時代だからこそ、リアルな生を取り戻すことが求められているのでは」と「物である本」の意味を問いかけます。専門的なデザイン教育なしにブックデザインの世界に飛び込み、いまや一人で年間二〇〇点もの装丁を手がける著者による初めての装丁論・仕事論にして出版文化論。装丁を志す人、編集・販売に携わる人、本を愛するすべての人に! カラー口絵8頁

本は物である 目次

本は物である まえがき

ためし読み

◆書評

2010年12月、出版ニュース

2010年12月10日、週刊読書人

2010年12月12日、信濃毎日新聞、臼田捷治氏評

2010年12月13日、AERA

2011年1月15日、図書新聞

2011年2月10日、新文化

2011年2月25日、朝日新聞

2011年3月4日、週刊金曜日

2011年4月4日、公明新聞

2011年5月、花の本束5月号

2011年『紙半減で製造業は壊滅』

2012年5月15日、聖教新聞

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◆本は物である――目次

まえがき

第一章 装丁あれこれ ──「物である本」を考える
装丁? 装幀? ブックデザイン?
戦後日本のブックデザイン
編集、デザイン、タイポグラフィ
電子ブックと「書物としての身体」
「物である本」は残るのか?

第二章 本づくりの現場から ──「吉村昭歴史小説集成」の製作過程
本づくりの基本
装丁・装画の作業
本文印刷 ── 理想社での作業
付物印刷 ── 半七写真印刷工業での作業
金版製作 ── 学術写真製版所での作業
表紙貼り・箔押し ── 堀江紙工所での作業
製函 ── 加藤製函所での作業
貼り ── 八光製函での作業
製本 ── 松岳社青木製本所での作業
見本納品、そして流通・販売へ 

第三章 わたしが装丁家になったわけ
期せずしてミッション系大学へ
キリスト教NGOで働く
思いがけない展開
精興社での修行
長尾 信(高麗隆彦)さんとの仕事
田村義也さんの思い出

第四章 装丁は協働作業 ── さまざまな仕事から
著者と装丁 ── 長谷川宏・摂子夫妻との仕事
画家と装丁 1 ── 金井田英津子さんとの仕事
画家と装丁 2 ── 奥山民枝さんとの仕事
写真家と装丁 ── 長倉洋海さんとの仕事
編集者と装丁 ── 坂口 顯さんとの仕事
訳者と装丁 ── さくまゆみこさんとの仕事
児童書と装丁 ── 山浦真一さんとの仕事
本の流通と装丁 ── 鈴木由起夫さんとの仕事

第五章 かけがえのない一冊
かけがえのない本をつくる
「地産地消」の本 ── 杉田 徹さんとの仕事
テクストとコンテクスト ──「物である本」と装丁の意味

エピローグ ── 金夏日さんの舌読

あとがき
参考文献
用語索引
人名索引
参考資料


◆本は物である――まえがき

まえがき  手近な辞書で「装丁」を引くと、「書物を綴じて、表紙・扉・カバー・外箱などをつけ、意匠を加えて本としての体裁を飾り整えること。また、その意匠。装本。」(大辞林)とある。
 「装丁」をなりわいとして十数年が経つが、この仕事が十分に理解されているようには思えない。装丁展を開くと、こんな質問をされることがある。

「たくさんの本がならんでいますね。この表紙をすべて描かれたんですか」
「いえ、絵を描くこともありますが、基本はイラストレーターにお願いしています」
「では本を書かれるんですか」
「いえ、本を書くのは著者で、それをまとめるのが編集者です」
「では表紙の字を書くんですか」
「いえ、表紙に使われている文字はコンピュータに入っているんです」
「では、いったいあなたは何をしているんですか」
「えーと、それはですね……」

 こうしたやりとりになるのも無理はない。テクストを三次元の「物」として立ち上げていくプロセスなんて、一般読者には、なかなかイメージしづらいだろうから。

 装丁を建築にたとえれば、話は多少わかりやすい。建築は住まう者を外界から守る「保護材」であるばかりでなく、住まう者の生き方を表出し、規定する。
 いうまでもなく、建築は建築家抜きに存在し得ないが、建築家が実際に大工や左官をするわけではない。居住性やデザイン、予算的な制約も勘案して建築全体のプランを組み上げるのが建築家の役目だ。だから、装丁家を「書物の建築家」になぞらえて誤りではないだろう。独創的なブックデザインを切り拓いた杉浦康平が建築科出身なのも、おそらく偶然ではない。
 建築と同様、装丁においても、デザインの独創性ばかりでなく、「住まう者(=テクスト)」を生かす機能性を両立させなければならないし、同時に、「保護材」としての確固とした構造(=造本)を考慮する必要もある。というわけで、一口に「装丁」といっても、実際の作業においては、さまざまな知識と配慮が必要となってくるわけだ。

 ところで、人間が建築を必要とするのは、人間が身体を持つからだ。身体がなければ、そもそも雨風をしのぐ必要などない。現在、書籍電子化に伴って起こっている事態はどうだろう。紙やインキといった物質性、いわば身体≠失ったテクストは、もはや装丁を必要としない。書籍電子化は、装丁家の存在理由を根本から揺るがす。だから本書でも、そこここで書籍電子化について触れている。「商売敵」という気持ちもないわけではないが、それ以上に、電子ブックが読書という行為に及ぼす影響について、できるだけ冷静に考えてみたつもりだ。

 本書は、装丁やブックデザインに関心のある方、書籍編集や販売に携わる方、さらに広く書物に関心のある方々を念頭において書かれている。
 第一章では、「装丁・ブックデザインとは何か」という根本的な問いを、メソポタミアの粘土板から電子ブックにいたるまでの書物の歴史をたどりつつ、考えてみた。
 第二章は、普段は目にすることのない本づくりの「現場」を通して、具体的に「装丁という仕事」を追ったレポートである。  第三章以降は、さまざまな本づくりの体験と、書物における装丁の立ち位置、わたしが装丁家になったいきさつなど、より多様な視点から「装丁という仕事」を考える。
 全体は五章からなるが、どこからでもお読みいただけるよう、用語・人名索引を付し、造本・装丁に関するリファレンスとして活用できるように配慮した。