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重野 純 編

言語とこころ
――心理言語学の世界を探検する


A5判280頁

定価:本体2800円+税

発売日 10.04.05

ISBN 978-4-7885-1196-5

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◆ことばの不思議に迫る!◆

ことばは「こころの窓」。不注意な一言が、人間関係を壊してしまうことすら あります。言語は他者とのコミュニケーションだけでなく、考えるときにも欠 かせません。そして非常に高度な能力でありながら、学校で教わらずとも、誰 もが母語を聞いたり話したりできるようになります。それなのに、外国語とな ると、なんで習得が難しいのでしょうか!? 本書は、言語とこころとの関係に ついて、動物のコミュニケーションやジェスチャー、思考や子どもの言語獲得、 外国語、認知モデル、失語症など、心理言語学のさまざまな領域を読者と共に 探検しながら学ぶ、入門テキストです。編者は、「世界一受けたい授業」の講 師も務めた、音声心理学研究の第一人者です。

言語とこころ 目次

言語とこころ 序

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◆目次

まえがき
  
第1章 心理言語学へのアプローチ
1−1 心理言語学の誕生
1−2 心理言語学の発展
1−3 心理言語学と言語心理学
1−4 主要な研究テーマ
1−5 心理言語学の未来
【さらに読み進めたい人へ】
 
第2章 動物のコミュニケーション
2−1 動物は「ことば」をもつのか その研究史と研究意義
2−2 原始動物の生得的コミュニケーション
2−2−1 魚類
2−2−2 昆虫
2−3 哺乳類の音声
2−3−1 哺乳類の音声にみる信号発信の意図性
2−3−2 ジリスの警戒音
2−3−3 霊長類の警戒音―意味の起源
2−3−4 霊長類以外の哺乳類がもつ警戒音の意味
2−3−5 言語的性質と非言語的性質をあわせもつ動物の音声
2−3−6 警戒音の発達的側面
2−4 動物のカテゴリー知覚
2−4−1 言語音
2−4−2 カテゴリカルな霊長類の音声レパートリー
2−4−3 動物の音声
2−5 大型類人猿の視覚言語習得
2−5−1 手話を用いた初期の研究
2−5−2 幾何図形を使ったプロジェクト
2−6 動物のコミュニケーションとその基盤となる能力に関する近年の研究動向
2−7 動物の「ことば」の研究の今後
【さらに読み進めたい人へ】

第3章 言語と思考
3−1 言語と思考に関する研究の流れ
3−2 対人的思考
3−2−1 敬語使用の戦略
3−2−2 説明の進行パターン
3−2−3 具体の科学
3−3 帰納的思考
3−3−1 カテゴリー判断
3−3−2 類似性判断
3−3−3 確率判断
3−4 演繹的思考
3−4−1 言語心像バイアス
3−4−2 注意の方向付け
3−5 おわりに,そして今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】
 
第4章 子どもの言語獲得
4−1 言語獲得研究の歴史
4−2 音声知覚の発達
4−2−1 言語のリズムをつかむ
4−2−2 単語を聴き取る
4−3 単語の学習
4−3−1 最初の試行錯誤と語彙爆発
4−3−2 さまざまな種類の単語の学習
4−4 文法の獲得
4−4−1 子どもの発話の発達的変化
4−4−2 文法的はたらきに応じた単語の分類
4−4−3 文を構成するルールの理解
4−5 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】

第5章 第二言語習得
5−1 第二言語習得研究の流れ
5−1−1 第二言語とは
5−1−2 獲得・習得・学習
5−1−3 研究の誕生と発展
5−2 第二言語習得の理論モデル
5−2−1 生成文法にもとづくモデル
5−2−2 第二言語におけるUGの利用可能性
5−2−3 初期状態についての仮説
5−2−4 認知的アプローチ
5−2−5 第二言語習得の年齢要因
5−2−6 バイリンガリズム
5−3 日英の疑問文と第二言語習得
5−3−1 疑問文
5−3−2 直接疑問文
5−3−3 間接疑問文の統語と意味
5−4 句語彙項目(PLI)の考察
5−4−1 慣用表現
5−4−2 句語彙項目(PLI)
5−5 「ここまで」と「これから」
【さらに読み進めたい人へ】
 
第6章 音声知覚
6−1 パターン・プレイバック装置から音声自動翻訳機まで
6−2 音声知覚の基礎
6−2−1 音韻,音素,形態素,弁別的特徴
6−2−2 フォルマント周波数と発声開始時間(VOT)
6−2−3 構音結合
6−2−4 音声的普遍性と母音の正規化
6−3 音声知覚実験と音声情報処理モデル
6−3−1 カテゴリー知覚と運動指令説
6−3−2 選択的順応効果と特徴検出モデル
6−3−3 音韻の知覚に生じる文脈効果
6−3−4 知覚的統合
6−4 パラ言語情報についての実験研究
6−5 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】

第7章 単語の認知
7−1 今日までの研究の流れ
7−2 音声単語認知モデル
7−2−1 ロゴジェン・モデル
7−2−2 トレース・モデル
7−2−3 コホート・モデル
7−2−4 ネイバーフッド・アクティベーション・モデル
7−3 音声単語認知過程
7−3−1 単語候補の活性化
7−3−2 単語候補間の競合
7−4 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】
 
第8章 文の構造と理解
8−1 文の理解と言語学的概念
8−2 文の構造
8−2−1 生成文法
8−2−2 変形規則
8−2−3 統語解析のモデル
8−3 文理解の個人差とワーキングメモリ
8−3−1 ワーキングメモリ容量による文理解の個人差
8−3−2 統語的複雑さの処理
8−3−3 言語的曖昧文の処理
8−3−4 語用論的処理と統語的処理の相互過程
8−4 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】
 
第9章 言語とジェスチャー
9−1 ジェスチャー研究の歴史
9−2 ジェスチャーの分類
9−3 表象的ジェスチャーの産出要因
9−3−1 聞き手要因
9−3−2 話し手要因
9−3−3 課題内容
9−4 こころ,ことば,表象的ジェスチャー
9−5 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】

第10章 失語症
10−1 失語症研究の流れ
10−1−1 神経心理学の誕生
10−1−2 古典論の成立
10−1−3 全体論の台頭
10−2 失語症のタイプと症状
10−3 失語症患者における文発話の障害
10−3−1 語彙範疇の障害 新造語ジャーゴン
10−3−2 日本語話者における語彙範疇の障害
10−3−3 日本語話者における機能範疇の障害
10−3−4 文の生成プロセス
10−4 脳イメージング研究と失語症
10−5 まとめと今後の展望
【さらに読み進めたい人へ】
 
 文  献
 人名索引
 事項索引
 編者・執筆者紹介
装幀=虎尾 隆


◆言語とこころ はじめに


 自分の考えや思いを相手に伝える……。毎日当たり前のように行われている行動も,言語という道具を使用しなくては容易ではない。外国を訪れたとき,言葉が通じないために不自由な思いをしたり,こちらの意図を誤解されたりした,という経験をした人も多いであろう。日本人同士でも,コミュニケーションを上手くとれない相手とは人間関係も悪くなりがちである。これが国どうしともなれば,情報発信した側の意図が誤解されたり曲解されて戦争になった例すらある。各国・各地域の言語と思考やコミュニケーションスタイルとは深く結びついており,それらを十分に理解していなくては多方面にわたる国際化についていけなくなる。言語のもつ力はきわめて大きいといえるだろう。

 本書は,言語とこころの関係についての多様な研究を網羅するように構成されている。すなわち心理言語学の特定の分野のみを取り上げるのではなく,なるべく多くの分野を取り上げ,まだ歴史の浅い心理言語学をできるだけその全体像が見えやすい形で紹介することを目指した。そのため執筆者の専門も多彩である。心理言語学に関しては言語学の立場あるいは心理学の立場から書かれている場合が多いようであるが,同じテーマについての実験でも,言語学からと心理学からでは実験目的も方法も異なることが多い。さまざまな分野の専門家が執筆したことにより,本書では考え方やアプローチの違いを比較できるようになっている。同じ問題に対して専門の違いによりどのような差異があるのかを考えながら読み比べてみることも面白いだろう。読者の方々には,ぜひ複数の章の間でこのような比較をしていただきたい。もしどこかに関心を持っていただいたら,次にどこへ進めばよいのか,その道標を「さらに読み進めたい人へ」として載せた。

 本書の執筆者はそれぞれの専門分野において研究・教育経験の豊富な研究者たちである。対象としている読者は,言語とこころの関係に関心のあるすべての人々である。言語とこころの間にある不思議の数々についてこれから探検旅行に出かけようと思っている人も,すでに旅行中の人も,それぞれのニーズに合わせて活用していただければ幸いである。ただし初めて探検旅行に出かける人のために,執筆者全員が全体を通して平易な記述になるよう心がけた。その際,青山学院大学大学院教育人間科学研究科心理学専攻博士前期課程の池上真平氏に全体を通読してもらい,難しいと感じたところを指摘してもらった。

 最後に,本書の企画を快く承諾し,完成するまで励ましとアドバイスを下さった新曜社の塩浦ワ氏に厚く感謝申し上げる。

2010年3月1日 重野 純