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デイヴィッド・コーエン著
子安増生 監訳・三宅真季子 訳


心理学者、心理学を語る
――時代を築いた13人の偉才との対話


四六判512頁

定価:本体4080円+税

発売日 08.11.25

ISBN 978-4-7885-1137-8

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◆偉大な心理学者の肉声に迫る!◆
その研究成果が心理学を超えてひろく一般の人びとの考え方にまで影響を及ぼ した、ノーベル賞受賞者を含む著名な心理学者13人に、ジャーナリストで映 画監督でもあるコーエンがインタビューして、彼らの生の声を引き出したすば らしい記録です。通常テキストには彼らの理論や発見しか書かれていませんが、 それらを生み出した背景には、それぞれの人生と、心理学への思いがあります。 コーエンの巧みな問いに答えて自らの研究について赤裸々に語った本書は、そ れぞれの碩学の人間性にあふれ、一読思わず引き込まれて本書の厚さを忘れて しまうこと必定です。監訳者は京都大学教授。

David Cohen,Psychologists on Psychology.Hodder & Stoughton,2004.

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◆目次
はじめに
第1章 サンドラ・ベム
第2章 ノーム・チョムスキー
第3章 アントニオ・ダマシオ
第4章 ハンス・アイゼンク
第5章 ジョン・フレイヴル
第6章 ヴィクトール・フランクル
第7章 ダニエル・カーネマン
第8章 R.D.レイン
第9章 ハーバート・サイモン
第10章 バラス・スキナー
第11章 デボラ・タネン
第12章 ニコ・ティンバーゲン
第13章 フィリップ・ジンバルド
第14章 未刊の結論
監訳者あとがき
文献
事項索引
人名索引

はじめに
 心理学者の心理など部外者にはわけがわからないし、取るに足らないテーマだとさえ思われるかもしれない。しかしそんなことはない。今や心理学は、非常に影響力のある分野になっている。イギリスのオリバー・ジェームズやアメリカのフィリップ・ジンバルドのような心理学者は、メディアにもしばしば登場する。世間は新しい風潮について、彼らの洞察を求める。実のところ、それは今に始まったことではない。1927年、行動主義の祖ジョン・B・ワトソンは、セックスや赤ん坊や自動車のトレンドについてのコメント求める新聞記者たちにいつも悩まされていると、抗議している。当時でさえ、心理学の専門家が世の中を判定していたのだ。
 今では、圧力はもっと強い。西洋文明では神が死んだにひとしいから、人々は人生の真の意味を心理学者(あるいは精神分析学者)から聞き出そうとする。導師よ、我を導きたまえ。そして、その導師に「――学」という名がつけば、ますます信頼するに値するというわけである。
 本書の初版が世に出てから、25年以上が過ぎた。そして、その間に心理学は大きく変化した。心理学は順調に発展し、かつてなく多数の心理学者を生み出すに至っている。1977年にイギリス心理学会の会員は6000人ちょっとだった。現在では3万5000人を超えている。アメリカ心理学会はあまりにも規模が大きくなったので、会員のなかには学会が何か意味ある行動をするには巨大すぎるのではないかと考える人もいる。学会の大会を開くには、近くに大空港がある街を選ばなければならない。オーストリア、南アフリカ、日本でも、何万人もの心理学者が分析をし、仮説を立てている。ルーマニアのような辺鄙な小国でさえ――私にはルーマニア人の血が流れているから、こんな表現も許されるだろう――正式な資格をもつ心理学者が何千人もいる。
 数だけでは、洞察の深さと進歩を保障することはできない。過去30年、ますます多くの人々が心理学に携わることによってビールと寿司にずかっているが、まことに残念なことに何が人間を動かしているのか、もっとも理解が進んでいないと多数の批判の矢が放たれてきた。
 人々がどのように――そしてなぜ――行動するかについて、本当のところどれだけわかっているのかと心理学者に尋ねたならば、多くの心理学者は、不満を言ってはならないと諭すだろう。心理学は何といっても非常に若い学問なのだから、物理学や化学や天文学のような進歩を期待してはいけない、と。これは真実であり――そしてそれほど真実でもない。心理学のデビューを1879年という栄えある年、つまり最初の心理学実験室ができたときとみなすなら、心理学は科学より若い。この年、ヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒに、ウィリアム・ジェームズがハーバードい研究室を開設した。そのときから数えると、心理学の歴史は2004年現在でわずか125年にすぎない。そんなに歴史の浅い学問に、どれだけのことが期待できるだろうか。天文学はプトレマイオスとコペルニクスにさかのぼる。アイザック・ニュートンが活躍したのは17世紀ではなかったか。リンゴが落ちて、腑にも落ちて、重力が発見されたときから、まもなく4世紀になるのだ。
 しかし1879年を心理学の始まりとすれば、デカルト、バークリー、ヒューム、J・S・ミルなどの、心理学的な問題に関心を寄せてきた17世紀以後の思想家たちを無視することになる。アリストテレスのようなギリシア人も、「精神」について語った。1600年にはすでにメランコリーについて多くが知られており、バートンが今日の抑鬱によく似たテーマについて長大な論文を書いている。ドイツの偉大な生理学者ヘルムホルツは、19世紀の半ばから感覚心理学者についての実験を行っていたし、催眠法に関する重要な実験が1830年代にフランスのピュイセギュールによって行われていた。・・・・・・

監訳者あとがき
本書は、David Cohen,Psychologists on Psychology.Hodder & Stoughton,2004.の全訳である。本書は、ジャーナリストで映画監督もつとめる才人、デイヴィッド・コーエンが13人の心理学者にその生い立ちや経歴、人間に対する見方や心理学に対する考え方をインタヴューして聞き出したものである。インタヴューメソッド(面接法)、心理学の重要な方法ではあるが、実のところ、それによって人間の真実に近づくことはかなり難しい。本書の価値は、コーエンが著名な心理学者たちの生の声を引き出し、その内面心理を明るみに出す素晴らしいインタヴューを行った点にある。13人の心理学者の簡単なプロフィールは次の通りである

第1章 サンドラ・ベム(1944−):米、心理学
第2章 ノーム・チョムスキー(1928−):米、言語学
第3章 アントニオ・ダマシオ(1944−):ポルトガル→米、医学・脳科学
第4章 ハンス・アイゼンク(1916−97):独→米、心理学
第5章 ジョン・フレイヴル(1928−):米、発達心理学心理学
第6章 ヴィクトール・フランクル(1905−97):墺、精神医学
第7章 ダニエル・カーネマン(1934−)イスラエル→米、心理学
第8章 R.D.レイン(1927−89):英(スコットランド)、精神医学
第9章 ハーバート・サイモン(1916−2001):米、心理学・人工知能論
第10章 バラス・スキナー(1904−90):米、心理学
第11章 デボラ・タネン(1945−):米、心理学
第12章 ニコ・ティンバーゲン(1907−88):蘭→英、生物学・比較行動学
第13章 フィリップ・ジンバルド(1933−):米、社会心理学

 本書を読むと、心理学という学問の特徴がよく示されている。心理学は、もちろん心の諸問題を取り扱うものであるが、心の問題とは一筋縄でいかない実に大きなものであり、さまざまな分野から多角的にアプローチする必要がある。心理学が専門分野(ディシプリン)として確立したのは、たかだか130年ほど前、ドイツのヴィルヘルム・ヴントが1879年にライプツィヒ大学に心理学実験室を開設したときのこととされる。歴史が短く多様性の大きい分野であるから、他の研究領域からの参入や他分野からの影響関係も大きい。心理学史上の三人の偉人をあげるとすれば、ロシアのイヴァン・パヴロフ、オーストリアのジグムント・フロイト、スイスのジャン・ピアジェになるだろうが、いずれも本来心理学者ではない。すなわち、パヴロフは医学(生理学)、フロイトも医学(精神医学)、ピアジェは生物学の出身である。
 本書に登場する13人の研究者を出身分野で色分けすると、次のようになる。
 A(最初から心理学者):ベム、アイゼンク、フレイヴル、カーネマン、タネン、ジンバルド
 B(他領域から心理学に参入):サイモン(政治学・経済学)
 c(心理学者ではないが心理学に影響力):チョムスキー(言語学)、ダマシオ(医学)、フランクル(医学)、レイン(医学)、ティンバーゲン(生物学)

 この中でノーベル賞受賞者はティンバーゲン(生物学医学賞)、サイモン(経済学賞)、カーネマン(経済学賞)の3人である。サイモンは、政治学・経済学から心理学に参入してきたが、カーネマンは逆に心理学から経済学に参入した。このように、本書を読むと、心理学者が多様なバックグラウンドを有すること、心理学が非常に幅広い分野であることがよくわかる。
 本書のインタヴューは、個人のものも含まれ、全体がかなり以前のものであるが、その内容は決して古くなることはない。なぜなら、インタヴューを受けた心理学者の「生の声」が聞こえてくるからである。そのことは、本書の第1版が1977年に刊行され、1995年に第2版、2004年にこの第3版が刊行されたという事実からもうかがえる。日本の出版界から考えるととてつもなく息の長い本である。なお、アイゼンク、スキナー、レイン、ティンバーゲンの5人は第1版からの「生き残り」であり、30年の歳月を越えて評価されている。・・・・・・


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