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佐藤郁哉 著

実践 質的データ分析入門
――QDAソフトを活用する


A5判176頁

定価:本体1800円+税

発売日 08.11.03

ISBN 978-4-7885-1133-0




◆『定性データ分析入門』改訂新版!◆
 前著『定性データ分析入門』は、質的データ分析において必須となりつつあるQDAソフト三つの使用法を懇切に紹介した日本で初めての本として、好評を博しました。しかし、マニュアル的な部分は頻繁な改訂が必要になることから、本書では前著を全面的に見直して、ソフト使用法のマニュアル部分は新曜社のウェブサイトから自由にダウンロードできるようにし、QDAソフトを活用して文字データから「意味を取り出す」分析作業の原理とエッセンスを、より掘り下げて解説し、タイトルも一新しました。人文科学や文学、医学、看護学まで、幅広い分野の学生、研究者にとって非常に役立つ一冊です。

●QDAソフトウェア入門ダウンロード
本書姉妹編、MAXqdaの詳しい使用法


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目 次
はじめに
第1章 質的データとは何か?
第2章 質的データ分析の基本原理 紙媒体篇
第3章 質的データ分析の基本原理 電子媒体篇
第4章 質的データの特質とQDAソフト
第5賞 プロジェクトファイルの作成と文書のインポート(取り込み)
第6章 予備的分析
第7章 コーディングと概念モデルの構築
第8章 コード付セグメントの検索とさまざまなタイプの比較分析
第9章 分析メモの作成とストーリー化
第10章 「データ密着型理論」としてのグラウンデッド・セオリー
補 論 定性的コーディングと定量的コーディング


はじめに
この本は、質的データ分析のための入門的なガイドブックである。主たる読者としては、次のような疑問や悩みを抱えている人々を想定している。

――テープ起こしを済ませたインタビューの記録が山のようにあるのだが、これをどのようにして整理していけばよいのだろうか?
――アンケートをしてみたら、その自由記述欄には非常に興味深いコメントがかなり多く含められていることが分かった。しかし、それをどのような形で分析していけばよいのか、皆目見当がつかない。
――新聞や雑誌の記事をもとにしてレポートをまとめようとしている。それらのほとんどは電子化されているので一見かなり効率的な分析ができそうにも見えるのだが、そのような部分をどうやって切り取ってデータとして処理していけばいいのか、よく分からない。

本書では、以上のような問題に対する有力な解決法として、「QDA(Qualitative Data Analysis)ソフトウェア」の利用を提案する。QDAソフトウェアは、主として、インタビューの内容を書き起こした記録(「テープ起こし」)あるいは新聞や雑誌の記事のような文字テキスト情報を文書型データベースとして体系的に整理し、また分析していくために開発されたコンピュータ・プログラムである。
 QDAソフトウェアは、欧米ではすでに20年以上も前から社会調査の現場で広く使用されていたが、アルファベット系以外の文字テキストの分析には使いづらいものだったこともあって、日本ではこれまであまり知られていなかったものである。さいわいなことに最近になってQDAソフトの中にもマルチ言語対応のものが何種類か出てきて、日本語の文字データも扱えるようになっている。これは日本で行われる「質的研究」ないし定性的調査にとって画期的な意味を持つものであり、またそれが本書執筆の主な動機のひとつにもなっている。
 その意味では、本書はQDAソフトに関する入門的なマニュアルとしての性格を持っている。もっとも、本書の目的は、単にソフトウェアのマニュアルを提供することにとどまるものではない。その一方で、この本では、それらのソフトウェアの背景にある基本的な原理や、質的データが主な資料として用いられる社会調査の基本的な発想についても解説を加えている。それらの発想や原理は、まだ電子化されていない文字テキストを紙媒体の資料のままで体系的に整理し分析していく際にも応用できるものである。
 つまり、この本では、単に技術的な「ハウツー(How)」の部分について解説していくだけでなく、その一方では「なぜ質的調査や質的データが重要なのか」あるいはまた「なぜ質的データをそのような方法で分析していくべきなのか」という、「なぜ(Why)」の部分についての答えも提供していくのである。 全部で10章からなる本書では前半部分にあたる第1章から4章までで、その「なぜ」の問いに対する答えにあたる、質的データ分析の原理に関する解説をおこなう。後半部分の第5章から9章にかけては、QDAソフトを使って具体的なデータを処理していく際の手順について、「ステップ・バイ・ステップ」形式で紹介する。最後の第10章では、質的データ分析に関する最も有力な方法論的立場であり、多くのQDAソフトにその発想が取り入れられている「グラウンデッド・セオリー・アプローチ」について、特に1章を割いて紹介していく。

本書は、2年ほど前に刊行された『定性データ分析入門』の改訂版にあたる。同書では、QDAソフトが当時まだ日本ではそれほど普及していなかったこともあって、MAXqda、ATLAS.ti、NVivoという3つの代表的なソフトウェアの基本的な操作法について、それぞれ1章をあてて紹介した。
それに対して、本書では、特定のソフトの使用法に関するマニュアル的な解説はむしろ極力少なめにして、QDAソフトを用いた質的データ分析のエッセンス(特に、定性的コーディングおよび比較分析を通した概念モデルとストーリーの構築)についての解説に重点を置いた。これは一つには、QDAソフトに関しては、比較的頻繁にバージョンアップやマイナーチェンジが行われており、それらの変更内容についてその都度フォローアップを行うことは、紙媒体の書籍ではおのずから限界があるからである。
 なお、著者が最もユーザーフレンドリーなQDAソフトであると考えているMAXqdaの具体的な操作法については、本書の姉妹編である「QDAソフトウェア入門」をウェブ上から自由にダウンロードして利用できる資料として提供しておいた。

●QDAソフトウェア入門ダウンロード

同資料に関しては、MAXqdaのバージョンアップがなされたときに随時内容を更新していく予定である。
「QDAソフトウェア入門」を掲載したウェブサイトからは、MAXqdaを使って実際にデータを分析したサンプルをダウンロードすることもできる。この分析例については、本書の第6章と第9章で、いくつかの分析テクニックの適用例に示しておいた。
 本書には、ウェブ版の「QDAソフトウェア入門」の他にもう一冊『質的データ分析法』(新曜社2008)という、書籍版の姉妹編もある。こちらでは、質的研究にもとづく論文や報告書によく見られるいくつかの傾向や問題について明らかにした上で、質的データ分析の基本的な原理と発想法に関する解説をおこなった。同書では、本書の場合にはごく簡単な紹介にとどめたポイントについてもかなり詳しく論じてあるので、質的研究のあり方についてさらに掘り下げて考えてみたい場合には、それらを参照していただきたい。