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鈴木光太郎 著

『オオカミ少女はいなかった』
――心理学の神話をめぐる冒険


08.9.29

978-4-7885-1124-8

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46

264頁

定価2730円

◆心理学の神話解体◆

オオカミに育てられた少女たちの話を聞いたことがあるでしょうか。ヒトにと って教育環境がいかに大切かを伝える、この有名なエピソードは、実はほとん どウソだったのです。ところがそれは専門家以外に知られることなく、事実と して教えられ続けているのが現状です。心理学には、ウソや誇張が明らかでも、 既成事実として生き残っている「神話」がいくつも存在するのです。あの有名 な話は神話なのか、なぜ神話はなくならないのか? サブリミナル効果、言語 相対仮説など9つの神話をめぐり、その真偽から神話を生み出してきた心理学 の舞台裏のドラマまでを明るみに出す知的冒険の書です。


目次*
はじめに
第1章 オオカミ少女はいなかった
――アマラとカマラの物語
第2章 まぼろしのサブリミナル
――マスメディアが作りだした神話
第3章 3色の虹?
――言語・文化相対仮説をめぐる問題
第4章 バートのデータ捏造事件
――そしてふたごをめぐるミステリー
第5章 なぜ母親は赤ちゃんを左胸で抱くか
――ソークの説をめぐる問題
第6章 実験者が結果を作りだす?
――クレヴァー・ハンスとニム・チンプスキー
第7章 プラナリアの学習実験
――記憶物質とマコーネルをめぐる事件
第8章 ワトソンとアルバート坊や
――恐怖条件付けとワトソンの育児書
終章 心理学の歴史は短いか
――心理学のウサン臭さを消すために

まえがき
心理学という部屋の掃除をしたくなった。とにかくガラクタが多すぎる。これらをまずは処分することにしよう。そうすれば、なにやらウサン臭さのある学問という心理学のイメージを多少は払拭できるかもしれない。
ターゲットにするのは、現代心理学に亡霊のようにつきまとういくつかの神話である。文化人類学者のドナルド・ブラウンは、否定されているのに既成事実として何度もよみがえる人類学の話や考え方を、比喩的に「神話」と呼んでいる。ここでは、心理学のなかのそうした神話のいくつかを叩き割ってみる。もしあなたがそれらの神話をこれまで疑いもせずに真実だと信じてきたとしたら、あなたのなかの常識は音を立てて崩れるかもしれない(私としてはそうなってほしいが)。加えて、神話とまではいかないが、心理学におけるいくつかの準神話的な話も紹介し、それらの検証も試みてみよう。
本書では、どの章にも、スキャンダラスな事件や出来事が登場する。教科書に載っている理論や実験や知見はすまし顔で鎮座しているが、実はその陰では、さまざまなドラマが繰り広げられている。心理学という科学も人間のなす営為である。だから、おもしろいし、スリリングでもある。ここでは、心理学のいわば舞台裏も見ていただこうと思う。
それでは、心理学のなかの迷信や誤信がいくらかでも減ることを願いつつ、オオカミ少女の神話から始めることにしよう。