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小谷野 敦 著


なぜ悪人を殺してはいけないのか
――反時代的考察


四六判280頁

定価:本体2400円+税

発売日 06.3.24

ISBN 4-7885-0985-7

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◆私は大勢に迎合するのが好きではない。◆

死刑は野蛮だ、未だ死刑を残しているような国は文明国とは言えない、というような風潮があります。しかし、世の中には凶悪な犯罪人がいるのも事実で、その被害者、家族にとって、極刑以外に救われない。問題は文明か野蛮ではなく、単に文化の違いにすぎないのかもしれません。また、天皇制的民主主義国家・日本において「共和制への夢」は生き延びうるかを、思想・文学・サブカルチャーのなかに探ります。死刑存置論と天皇制批判、この一見相反する考えが共存するところに著者の「反時代性」があるといえましょう。著者はじめての硬派のものを集めた「取扱い注意」の論文集です。

◆書評

2006年、日本経済新聞

2006年、文春図書館

2006年4月11日、東京新聞

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◆目 次◆
第一部 なぜ悪人を殺してはいけないのか
なぜ悪人を殺してはいけないのか--復習論
第二部 共和制への意思
戦後転向論
ファンタジーは君主制の夢を見るか?
マッカーサーの後継者たち
付論 キャロル・グラックに答える
「今上天皇」という語
夏目漱石の保身--『こころ』の「殉死」をめぐって
諡号「光」の謎
第三部 反時代的考察
「レザノフ復権」への疑問
忌まわしい古典『葉隠』
「オリエンタリズム」概念の功過--『トゥーランドット』と『逝きし世の面影』
田中勝彦『チョムスキー』批判
カナダ留学実記
あとがき
索引


◆本文紹介◆
私は何も怖ろしいことを言っているのではない。廃止論者がしばしば哀れみを誘おうとして持ち出す、改悛の情が明らかな死刑囚に対して、恩赦、特赦を下す制度を整えるというのなら理解する。しかしそういう死刑囚がいるから死刑を廃止しろというのは、論理の飛躍である。世に、まったく改悛の情を見せない凶悪犯罪者がいる以上、死刑制度は残すべきである。死刑廃止論者がいくら同情に値する死刑囚の例をあげても、それは死刑にするほかない者たちの存在を抹消することにはならないのである。おもしろいことに、死刑廃止論者が描いたノンフィクションや小説の中には、まるでその犯罪者に対して同情心の起こらないものがある。佐木隆三 の『復讐するは我にあり』や、丸山有岐子の『逆恨みの人生』で、それはそれで、あとで触れるユゴーのように読者をごまかそうとするよりは立派な態度である。加賀乙彦の『宣告』は名作とされているが、見沢知廉のように自ら殺人を犯しておいて、刑務所内での待遇に不満を並べて文学作品として通用させているのは、図々しいとしか思えない。見沢が二〇〇五年に自殺したのを、私は悔い改めない殺人者に相応しい最期だと思った。(「なぜ悪人を殺してはいけないのか」より)